なぎなたの世界


なぎなたは、槍(やり)や刀と同様、古くから発展してきた日本の伝統的な武器のひとつです。
先史時代の諸民族は、刀や斧などの「短兵器」とともに、それらを長い柄に着装した武器、すなわち「長兵器」を使用していました。すでに旧石器時代には槍の原型ともいわれるものが用いられ、青銅器時代にはなぎなたのような武器も発見されています。
なぎなたの前身となる武器は、平安時代の「長巻」「長柄」、足利時代の「長太刀」などさまざまな種類があり、これらが現在のなぎなたを形成したといわれています。古い文献では古事記(712年)に記述されており、その後の天慶の乱(936年)を描いた絵画にもなぎなた(長刀)が登場しています。もともとは長い柄の先に曲線のある鋭い刃をとりつけたもので、騎乗の兵士を歩兵が攻撃する際に用いらたとされています。
その後、鉄砲の伝来とともに、戦争時の武器としてのなぎなたは急速に衰退していきました。そして江戸時代には婦女子の護身用として用いられるようになり、武家の女子は必ず心得として練習し、また武家に嫁ぐ嫁入り道具のひとつでもありました。
明治以降なぎなたは女子の武道として発展し、稽古を通じて端正で気迫に満ちた体力・気力を育成する修練であるばかりでなく、神道や儒教を背景として、敬神、礼儀、和順、貞節などの特性を養成するものとして、学校教育の場でも実施されてきました。これにより「男子は剣道、女子はなぎなた」という観念が固定化し、そのため現在のなぎなたも女子が主流となっているのです。
昭和30年には全日本なぎなた連盟が発足しました。そして現在の「なぎなた」の競技方法の基礎が出来上がり今日に至っています。また、なぎなたは日本の伝統として世界的にも注目を集め、平成7年からは世界選手権も開催されています。さらにはこれを契機に、長年「女子の武道」として存続してきたなぎなたも男子に普及しはじめ、現在では全日本男子選手権大会や男子中央研修会などが行われています。

今日なぎなたの愛好者層は、幼稚園児・小学生から学生、社会人にいたるまで、まさに老若男女を問わず広まっています。また、アメリカ、フランス、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ニュージーランド、ブラジル、チェコ、オーストラリアなど、諸外国でも着実に愛好者が増え続けています。
現在のなぎなたは、刃部は竹、柄部は樫で作られており、長さも210〜225センチと定められています。
競技としてのなぎなたは、「試合競技」と「演技競技」の2種類があります。

試合競技は、2人の試合者が定められた部位、すなわち面、小手、胴、すね、咽喉を確実に早く打突(だとつ)して勝敗を競うものです。試合者は防具として面、胴、小手、すね当てを着けます。なぎなたは刃や柄で、攻撃にも防御にも用いられる応用範囲の広い武器で、振り上げ・持ち換え・振り返しなどの技で、左右上下からあらゆる方向へ打つことができます。
審判員3人のうち、2人以上が打突を有効と認めたときに1本となり、1試合3本勝負が原則で、試合時間内(3分)に2本を先取したものの勝ちとなります。

演技競技は、指定された“しかけ・応じわざ”の形や“全日本なぎなたの形”を、二人一組、赤白二組の演技者によって行い、その技の優劣を競い合います。演技者双方の姿勢、服装、態度、発生、打突部位を正確にとらえているかなどを5人の審判が見極めて判定し、勝敗を決定します。
全日本なぎなた連盟ではさまざまな試合や研修会を実施しているほか、各年代におけるなぎなたの全国的な普及、教育現場でのなぎなた指導者の強化に努めています。
7月25日に静岡県で行われた全日本中学生なぎなた大会は、全国の中学校または武道場、クラブ等に所属する中学生選手が出場する大会で、今年で第12回目をかぞえます。
また、9月4〜5日に行われた「第8回エンジョイなぎなた全国大会」では、生涯スポーツとしてなぎなたを愛好する全国の有志が一堂に会して楽しく競技するもので、年齢層別、段位別に分かれて個人試合競技(男女別)および演技競技(男女問わず)が行われます。
さらに12月には第4回全日本男子なぎなた選手権大会がおこなわれる予定で、男子の競技力の向上をめざすだけでなく、男子愛好者の拡大を目指しています。大会では、初段以上の男子で各都道府県または各大学を代表する選手がトーナメント戦でその技を競いあいます。
近年、なぎなたは日本の伝統として国際的に注目を集めています。今後も日本の学校教育や社会教育の場において、また海外においても幼少年から高齢者まで幅広く普及し、愛好者はさらに増加するとみられています。
文:菊地佐知子