世界には、今もなお医療や薬にアクセスできず、非常に多くの人が苦しんでいます。日本財団はこのような現状を克服するために、どうすれば良いかを常に考え、行動してきました。そこで、長い歴史の中で人々の知恵と技術によって熟成された伝統医療の活用こそが重要な役割を果たすという考えに至りました。
伝統医療の活用促進を図る日本財団の主な活動として、2003年のWHOによる初の伝統医療ワールドサーベイへの協力、そして現在ではモンゴルでの置き薬プロジェクトなどの実践活動を通じて、伝統医療を活用したプライマリーヘルスケアへのアクセスシステムの構築に力を注いでいます。

2003年以来、WHOに対し加盟国の伝統医療の政策・法規制に関する実地調査への助成、中央アジア15カ国の薬用植物モノグラフ作成の支援、国際会議の共催などを実施してきました。
1.WHO加盟国伝統医療実地調査(2003~2005年)
2.中央アジア、黒海沿岸地域における薬用植物モノグラフの作成(2005~2007年)
3.伝統医療国際会議の開催(2007年)
4.WHO伝統医療国際会議実施に対する支援(2008年11月)

2004年から現在に渡り、モンゴルで医療サービスに充分なアクセスのできない地方住民5県17郡1万世帯(約50,000人)を対象に、同国政府保健省で認定されている伝統医療を活用した医療サービス向上のための活動を実施しています。
1.伝統医薬品の「置き薬」の配置
2.伝統医療に関する医師への研修
3.伝統医療の医師による巡回医療サービスの提供
1.伝統医薬品の「置き薬」の配置
胃腸薬や解熱剤など12種類のモンゴル伝統医薬品と体温計・包帯・脱脂綿等で合計12米ドル程度の販売価格の置き薬キットは、地方の医師によって住民世帯に配置され、使用した薬についてのみ代金を後で支払うというシステム(日本の置き薬がモデル)を採用しています。
このシステムは、収入が不安定な住民の経済的負担を軽減するだけでなく、代金回収及び医薬品補充のために医師が各世帯を訪問し、置き薬医薬品に関する相談や健康相談を受けることができるという利点があります。代金回収率は84.5%(2007年12月時点)
2.伝統医療に関する医師への研修
西洋医療を学んだ医師を対象に、モンゴル伝統医療の基礎知識及び置き薬キットを構成する医薬品について研修を行っています。4年間で延べ700人が6日間の研修を受講し、習得した技能と知識を日々の医療活動に活用しています。
3.伝統医療の医師による巡回医療サービスの提供
伝統医療医師5名が、置き薬配置地域の郡病院に年1回3日~4日(夏)訪問し、希望者に対して診療を行っています。4年間の受診者数は延べ8,000人になります。
現在タイでは無料で医療サービスをうけることができるため、医療費が増大しています。タイ保健省は医療支出を最小限に抑えることを目指し、置き薬システムを導入します。また、国立チュラロンコン大学、国立マヒドン大学の協力のもと、置き薬システムの有効性を検証し、伝統医療を活用した医療サービスモデルを構築することを目的としています。
2007年にモンゴルでの国際会議で紹介された伝統医療置き薬システムを参考に、ミャンマー保健省が「置き薬」を独自にアレンジし、テストを開始。この有効性が確認されたことから本格導入に向けて日本財団が協力し、3年間で全14州において1州あたり500村(1村に1箱)合計7,000個の配布を計画しています。
ASEAN加盟国間での継続的な情報共有や交流活動のための国際会議を5年間開催。1年づつ開催地を変え、開催国保健省の持ち回りで運営していく予定です。
※日本財団とASEANは業務提携を締結し、海洋安全保障、ハンセン病制圧、人材育成、障害者支援、伝統医療普及の5つのテーマにおいて、日本財団が5年間で500万米ドルの支援を行う計画です。
カンボジア保健省が国内の伝統医療システムを整備するため、国内初の伝統医療専門学校開校を予定しています。建物はカンボジア政府により建設中であり、来春の完成を予定しています。 カンボジアでは伝統医療に関する法律、制度が整備されておらず、国内の伝統医療従事者の正確な人数なども把握されていない現状です。日本財団はカリキュラムの構築や専門家の派遣を通じて、当学校の開校とカンボジアでの伝統医療の促進を支援する予定です。
ラオス保健省では品質管理された安全な伝統医薬品の製造、伝統医薬品キットの普及、プライマリーヘルスケアに係る薬用植物のブックレットの出版、伝統医療に関する教育を通じて国内の伝統医療普及事業を検討しており、日本財団はこれらに対する支援を検討中です。