
日本財団は、ろう・難聴学生のための視覚的なコミュニケーション環境が整った教養課程大学として知られる米国・ワシントンのギャローデット大学に「世界聴覚障害者リーダーシッププログラム基金」という奨学金制度を設けている。発展途上国からの学生が対象で、この制度で学んでいる奨学生3人がこのほど日本財団の招待で来日し、ろう学校などを訪問、聴覚障害者のための教育の実情を学んだ。奨学生の来日は2005年に続いて2回目。

来日したのは、同大学に在籍しているカネング・ロザ・クランディさん(ナイジェリア)、ライアン・アンソニー・ゲールさん(ジャマイカ)、フェルナンド・アヤラ・ルイズさん(チリ)の3人。3日に来日後、東京の中央ろう学校や手話教育を実践している龍の子学園を訪問し、現場の教育関係者と交流した。6日夕には日本財団ビル(東京・赤坂)で講演を行い、自国のろう者の実態や卒業後の目標についてパワーポイントと手話を使って説明。この後京都の聴覚言語障害センターなどを見学して11日に帰国した。以下は講演での3人の発言。
カネングさん ナイジェリアには120万人の難聴者がいるが、ろう者のための法律は十分でなく、就労の機会も不足している。卒業後はろう者のために職業開発情報センターを立ち上げる構想を持っている。日本は美しくて友好的だ。地下鉄の複雑さに驚いた。

ライアンさん ジャマイカには20万人のろう者がいるが、大学に進学する人はほとんどいない。職業訓練学校もあるが、木工と縫製の2つで、なかなか仕事に就けない。そのために「小さなことから始めよう」とろう者擁護団体を2002年に設立した。ろう者からは「早くジャマイカに帰国してほしい」と言われている。(NHKの手話ニュースの現場を見学した感想)こうした番組があることに感激した。ジャマイカでも放送したいと思った。
フェルナンドさん 家族の中で2人目のろう者として生まれた。チリには15万—20万人のろう者がいる。手話通訳はほとんどいない。帰国後はろう者のためのワークショップを開きたい。(教育方法が違う2つのろう学校を見学して)これらの学校がなければ両親は子どもをどこに入れればいいのだろうかと思った。どちらも必要だ。
ギャローデット大学は1864年に設立されたろう者のための「国立聾唖大学」が前身。のちに現在の名前になり、8代目の学長として初めてろう者のI・キング・ジョーダン博士が就任した。