伝統医薬品の置き薬制度に高い評価
13カ国参加しモンゴルで国際会議
[モンゴルレポート1]



日本財団とWHO(世界保健機関)の共催による「伝統医療国際会議」が8月23日から4日間、WHOをはじめUNICEF(国連児童基金)など4つの国際機関とアジア地域を中心にした13カ国の代表が出席してウランバートルで開催され、日本財団が中心になって2004年からモンゴルで進めている伝統医薬品の置き薬制度が遊牧民らの初期治療に大きな役割を果たしている点を高く評価。モンゴル政府も「伝統医療の活用を先駆的な成功例として海外に発信していきたい」(ブジン保健医療政策調整局長)と意欲を見せている。
富山の置き薬制度を活用した地域医療サービスの強化に関しては、1978年のアルマータ宣言で伝統医療・医薬品の活用を提唱したWHOもその成果に注目しており、宣言から30年、WHOの発足60周年に当たる来年には伝統医療の一層の活用に向けた国際会議の開催構想も浮上している。

ウランバートル市内のホテルで開かれた会議には、国際機関、各国代表約100人とモンゴル国内で伝統医療に携わる医師や伝統医薬品の製造業者ら約120人が参加。日常的な医療サービスが確保しにくい地方の遊牧民を対象に進められている伝統医薬品の置き薬制度の現地視察を含め幅広く意見交換した。
初日のオープニングセレモニーでは日本財団の笹川会長が「世界60億の人口のうち20億人は近代的な医薬品に接することなく死亡している。近代医薬品に比べれば安く手に入る伝統薬を、300年前に日本の富山地方で始まった置き薬制度を使って届けるのが有効と考え、この試みに着手した。世界に通用する制度に育てたい」と挨拶。
尾身茂WHO西太平洋地域事務局長は「日本財団の活動を見てWHOも伝統医療の重要さに気付いた。置き薬制度はプライマリーケアを進める上で大きな役割を果たすと確信する」と述べ、マーガレット・チャンWHO事務局長も伝統医療の有効活用に期待するメッセージを寄せた。
伝統医薬品の配置は2004年、モンゴル21県のうちウランバートルのあるツブ県など3県4郡約2千世帯(1万人)を対象に始まり、現在、5県15郡1万世帯(5万人)まで拡大している。モンゴル保健省が認可した胃腸薬や解熱剤など12種類の伝統医薬品と体温計や包帯をセットにした医薬品キット(13ドル相当)が各世帯に配備され、春と秋を中心に医師が訪問、使用した薬の代金を払う仕組みで、制度を運用する上でポイントとなる代金は90%以上回収されている。

現在、国営の2社と民営4社が伝統医薬品の製造を進めており、最大手はウランバートル市内の「モン・エム社」。製薬部門のほか治療部門も持っておりスタッフは医師も含め11人。原料となる薬草や鉱物の約半分を国内、残りを中国、インドから輸入し、270種類の伝統医薬品を年間約3トン製造している。
社長で薬剤師でもあるツェツェゲーさん(51)によると、社会主義体制下では伝統医薬品の使用が事実上、禁止されていたが、1990年の民主化以降、解禁され、ウランバートルなど都市部でも風邪や下痢にかかった時などに日常的に使われる。もともと「体質改善や健康維持などに効く」と信じられており、多種類の薬草や亜鉛や銅、岩塩など鉱物資源を何種類も組み合わせ水や乳茶に溶かして服用する。組み合わせ品目とそれぞれの成分比を記した専門書も整備されつつあるという。

モンゴルでの薬草採取は6~9月。ウランバートル市内のモン・エム社を訪問すると、建物の中には乾燥した薬草や木の実、茎や根のほか各種鉱物など多種類の原料が山積みされ、同じ建物の上層階にある病院施設にはリュウマチを患う女性患者らが入院。中には伝統薬が合うということでロシアから来た男性患者も目についた。
衛生管理から製造工程まで、先進国の近代的な製薬工場に比べれば大幅に劣るが、品質管理の強化も図られており、モン・エム社には6月末から技能ボランティア海外派遣協会(NISVA)のシニアボランティアである山岸一さんが日本から着任、指導に当たっている。山岸さんは明治製菓の製薬部門出身で、これまでも韓国やタイ、中南米で薬や食品の品質管理の指導に当たってきたベテラン。

今回は取りあえず9月までの3ヶ月間の予定。「水回りから空調など品質管理上、改善すべき点はきりがなく、多くの資金も必要となる。直ちにそれを求めても現状では無理。当面はそうしたハード部分には目をつむり、何のためにマスクや帽子が必要なのか、さらにやったことはすべて記録に残す、といった初歩的なソフト面を指導したい」と語っている。
モンゴルレポート2007