草原に定着する置き薬制度
伝統薬を積極活用[モンゴルレポート2]



伝統医療国際会議出席のためモンゴルを訪問中の日本財団一行は8月24日、首都ウランバートルから東へ約300kmのヘンティー県ウムヌデルゲル郡を訪問、伝統医療普及事業の現場を視察した。住民からは伝統医薬品の配備を歓迎する声が出され、郡の医療関係者も伝統医療を積極的に活用していく考えを示した。

ヘンティー県は英雄チンギス・ハーンの出生地として知られ人口7万1千人。豊かな草原に覆われ、羊、山羊を中心に190万頭の家畜が飼われている。丘陵を一直線に貫く舗装道路を走ると、青い空の下、黄緑色のなだらかな草原が視界いっぱいに広がる。途中の道路わきでは昨年のモンゴル建国800年祭に間に合わせる予定だったチンギス・ハーンの巨大な像の建設が現在も続いていた。周辺には観光客用の移動式の住居、ゲルも整備する予定という。
ウムヌデルゲル郡は同県の北西部、ロシアとの国境に位置し人口5,200人。2005年から伝統医療事業が始まり、現在、郡全体1,165世帯のうち500世帯に伝統医薬品のキットが配備されている。使用分の代金回収率は100%に近く、キットの配備後、住民の急病連絡で医師が駆け付けるハウスコールも10%以上減少、伝統医薬品の配備が日常的な予防や初期治療にも役立っていることを裏付けている。

草原のゲルにチメドツェレンさん(72)一家を訪ねると、10人を超す子や孫が一行を盛大に出迎え。妻のエレグゼドマーさん(59)は「薬の効能や使い方を分かりやすく説明した手引書も配られ、重宝している。風邪薬などは本当に良く効く」と笑顔で語った。
1kmほど離れたナランバートルさん(28)一家のゲルでも、一族が同様に手厚い歓迎。一家は山羊100頭、馬30頭を飼育する。年間の薬の使用料は500円程度。「カシミヤを売れば十分、払える額。現在、医薬品のキットは村の180所帯のうち88所帯にしか配備されていない。早く全所帯に配備してほしい」とナランバートルさん。

次いで2つのゲルから10kmほど離れた郡の総合病院を訪問。医師は院長のジャブザンラクチャーさん(57)を含め3人。20床の入院施設をもち、近代医療、伝統医療の双方を行う。郡内の6つの村(バグ)が対象区域で年間1万5千人の外来患者があるほか、春、秋を中心に年3~4回、各村を巡回診療する。
「伝統医薬品は西洋医薬品に比べ副作用が少なく安価、しかも多くの場合は1日1回の服用で済む。指圧や鍼灸も含め伝統医療に対する住民の関心は高く、これからも積極的に活用していきたい」。薬草の標本などが飾られた院長室でジャブザンラクチャー院長は伝統医療の活用に意欲を見せた。

郡ではこの日、一行のために特別に少年、少女による「競馬」を開催、日本財団の笹川陽平会長ら3人に上位入賞馬3頭を寄贈した。現地で伝統医療事業の普及活動を担当するNGO ワンセンブルウの内田敦之アドバイザーは「彼らが伝統医療事業をいかに歓迎しているか、最大限の感謝の表現です」と解説した。
モンゴルレポート2007