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[ 2009-03-23]

ベトナムにおける障害者の自立生活支援プロジェクト

横内 陽子
横内 陽子
国際協力グループ


2月のプロジェクト開始を祝う式典
2月のプロジェクト開始を祝う式典

 去る2009年2月16日から5日間、ベトナムの首都ハノイにおいて、障害者の自立生活支援プロジェクト開始を祝う式典とワークショップが開催されました!式典には障害者約30人を含む300人余が参加し、障害者が地域で伸び伸びと暮らせる社会づくりに期待を寄せました。イベント報告については、ブログマガジンをご参照ください。

 皆さん、障害者の自立生活と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょう?自分でお金を稼ぐことでしょうか。それとも、他人の助けを借りずに自分で自分の世話ができるようになることでしょうか。

 私たちの支援する活動では、自立生活を「自分で選び、決定することのできる暮らし」と定義しています。

 ベトナムを含む開発途上国では、今でも介助の必要な重度障害者の多くは家族や施設の職員に頼った暮らしを送っています。しかし、こうした暮らしは家族の高齢化や過度な負担、施設の都合等による影響を受けやすく、障害者を非常に弱い立場に置くものと言えます。


ハノイ自立生活センター代表 ホン・ハー女史
ハノイ自立生活センター代表
ホン・ハー女史

 このプロジェクトは、障害当事者が中心となり、自立生活に必要な介助者派遣等の福祉サービスを自ら作り、運営しながら、同時に利用者にもなるという取り組みです。これにより、好きなときに外出する、一人暮らしを楽しむ、結婚する、といった当たり前の権利を障害者自身の手に取り戻すことが可能となり、また、家族の負担も減ることとなります。

 プロジェクト遂行の責任者は、ハノイに新しく設立される自立生活センターの代表となるベトナム人のホン・ハー女史、そして障害者インターナショナル(DPI)のアジア太平洋ブロック議長にして日本の自立生活運動の第一人者である中西正司氏です。2人はともに車椅子利用者であり、日々の生活に介助者を必要としています。


DPIアジア太平洋ブロック議長 中西正司氏
DPIアジア太平洋ブロック議長
中西正司氏

 「トイレ介助を頼めるようになったら一人前」と笑う中西氏は、大学生時代に事故で四肢マヒとなり手足の自由を奪われました。その後入所した施設で待っていたのは、「自分で自分のことができるようにと、4時間かけて自分でズボンを履く練習をする」日々。障害を抱えた途端、生活のすべてを自分以外の誰かによって決定づけられるなかで、米国カリフォルニアのエド・ロバーツが唱えた自立生活運動を知り、やがて日本及びアジアでこの活動を次々と成功させていきます!

 一方、ハー女史はこれまでベトナムの肢体障害者の当事者団体、「ブライト・フューチャー」を率いる代表として、職業訓練や英語研修等、障害者の生活の質を向上させるための活動を導いてきました。「障害者だからといって、自己選択や決定の権利を奪われることはない。必要なサービスさえ手に入れば、障害者も十分社会に役立つ活動をすることができる」という自立生活活動の理念に共鳴し、障害者福祉が遅れているベトナムにこのプロジェクトを導入しました。


ハノイ自立生活センター
ハノイ自立生活センター

 現在、ハノイ自立生活センターには数人の車椅子利用者が働いており、同時にセンターの介助者派遣サービスを利用しています。長く福祉の「受け手」だと思われてきた障害者が「担い手」となることは、当事者のエンパワメントにもつながります。まずは自立生活の理念を理解し、これを実践できる当事者リーダーの育成、そして介助者の育成が第一の課題ですが、やがては障害者が積極的に街に出ることにより、交通アクセスの改善や建物のバリアフリー化が進み、当事者ニーズに合った社会福祉サービスが整備されていくことが期待されます。


2月のワークショップの様子
2月のワークショップの様子

 今回のワークショップでは、障害当事者約15人を対象とした自立生活リーダー養成研修が行われましたが、6月には介助者養成研修、そして8月には障害者の自立生活をサポートするピア・カウンセラーの基礎講座が実施されます。ハノイ自立生活センターも6月には正式にオープンし、車椅子対応の福祉車両が配備される予定となっています。我々としては、この活動をひとつのモデルケースとし、アジア全体の自立生活を大きく前進させるきっかけにしたいと願っています。

 日本財団はこれまでも多くの障害者支援事業を行ってきましたが、今回新たにこのプロジェクトに協力した理由は、この活動が途上国の障害当事者やその家族の自由と権利を守るだけでなく、社会全体にも大きなプラスの影響を及ぼすと考えたからです。障害者の社会進出が進めば、それは街中のエレベーターやスロープの設置、障害者向け商品の開発に結びつき、高齢者、妊婦、病人、幼児等、社会を構成する幅広い層を支えることになります。

 地域社会には様々な構成員がおり、私たちはお互いに助け合い、補い合いながら暮らしています。私たちはまた、赤ちゃんから高齢者まで、人生の過程において介助の必要な時期を何度も経験します。日本財団は、多様な人々の多様なステージを支え合える社会こそ、最も豊かで安心できる社会であると考え、これからも障害者の自立生活支援を推進していきます。