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[ 2009-04-20]

アフリカ視察報告1

ジェイムズ・ハフマン
ジェイムズ・ハフマン
情報グループ


 日本財団は今年3月、16人のアフリカ視察団を南アフリカ共和国とコンゴ民主共和国(旧ザイール)に派遣しました。作家の曽野綾子さんをはじめ、国土交通省、厚生労働省、防衛省、警察庁、国立感染症研究所の職員などで編成した視察団は、両国のスラム街などの実態を調査。国際協力の在り方を模索するために実施しているアフリカ調査は1999年に始まり、今回で10回目を迎えました。


最終日のタクシー・スト

スラム街の家。この家は、トタン作りで、比較的にいい方でした
スラム街の家。この家は、トタン作りで、比較的にいい方だった。

 南アフリカ共和国での最終日、朝6時半。日本人医師3人と私の計4人は早めにヨハネスブルグのホテルをチェックアウトし、マイクロバスで国立感染症研究所に向かいました。 
 研究所はホテルからそう遠くはなく、通常30分もあれば到着するはずでした。しかしこの日は約束の時間より1時間半も早く出発したのに、妙に焦ります。その理由は午前5時からタクシーのストが決行されていたからです。

 最後の日にストに遭うなんて、今回の旅にふさわしい終わりだと思いました。
この旅は2週間で、南アフリカ共和国とコンゴ民主共和国の貧困状況を視察するというもので、当初はマダガスカルとコンゴ民主共和国に行く計画でした。しかし、マダガスカルの首都アンタナナリボへ飛び立つ前日に、現地でクーデターが起きました。貧困視察が目的であっても、紛争の場に行くのは危険ということで予定を変更し、南アフリカで1週間を過ごすこととなりました。視察団全員ががっかりしつつも、内心はホッとしていたと思います。

 


スラム街の風景と比べて…
スラム街の風景と比べて…

 2つの国の滞在2週間で、私たちは様々な貧困の実態を目にしました。例えば4万5千人の住人に対し水道の蛇口が43個しかないスラム街。電気も水も通っていない2Kアパートには30人が暮らしていました。HIV/AIDSや栄養失調で死にかけている赤ちゃんで満床の病棟。言葉で聞くと「アフリカの貧困ね、ふんふん、HIV?知ってる、知ってる」としか思わないかもしれません。ですが、それを目にし、耳にし、肌で感じる現実は重く、貧困の姿やにおいやホコリが私たちに纏い付くのでした。


南アの貧富の差

…豊かな近所。貧富の差が激しい。
…豊かな近所。貧富の差が激しい。

 南アではすさまじい貧富の差に衝撃を受けました。それは人種と密接に関係しています。美しく豊かで見事に整備されている白人居住区と、貧しくて、基本的なサービスすらないことが珍しくない黒人居住区、その中間のインド人居住区。人種の違いが電気、水、ガス、交通、保健など、生活の様々な面で想像を絶するほどの差があるのです。ヨハネスブルグ・ソウェト(黒人が住む地区)のタクシーは、ソウェト以外の道を走ってはならず、ソウェト以外のタクシーはソウェトの中まで客を連れていくことはできません。

 アフリカ大陸に着いて2週間。貧困も貧富の差も十分に目にしたと思っていた頃に、タクシーのストがありました。この時点までは貧富の差も貧困も、所詮は「だれかの問題」として見ていたのかもしれません。このストに出会って、他人の問題として見るだけではなく、ごく表面的にでも自分自身にかかわる問題として考え、感じることができました。

 ストの原因は、簡単に言えばバスです。南アは2010年のサッカーのワールドカップを主催する予定のため、ヨハネスブルグなどの町で交通システムを開発しています。しかしヨハネスブルグのバスの便がよくなれば、多くのタクシー運転手は仕事を失います。今の貧しい生活から、さらに貧困に落ちる恐れがあると考えた彼らの不満が、ストライキという形で噴出したのです。

 


俺の貧困を経験したと思うなよ

家庭訪問
家庭訪問

 前の月にも3日間のストがあり、暴動で妊婦とその胎児が死亡し、何台ものバスが焼かれました。ホテルを出発する直前にもテレビで、バスの運転手が射殺されたニュースが放映されていました。実に4千人以上のタクシー運転手がデモに参加したそうです。
 中には銃撃も暴行もあり、バスから客が強制的に引きずり出され、オートバイも同様に止められ、降ろされた運転手が暴行を受けていました。私たちを乗せたマイクロバスの運転手は猛スピードを出しながら、振り返ってこう言いました。「大丈夫、大丈夫!問題ないさ。タクシーのストなんか大したことないよ。俺、裏道を知っているからね」

 彼の言う通りでした。ヨハネスブルグのタクシー運転手たちが、自分たちの生活をかけて高速道路や町の道をブロックしている間、私たちは白人居住区をスピード違反で走り抜けました。ラジオで1980年代のラブ・ソングを聞きながら…。

 


 国立感染症研究所に到着。ビル周辺は静かでした。豊かな芝生と青々とした木立の上には、真っ青な空が広がっています。辺りに聞こえるのは鳥のさえずりのみ。死者まで出したストとこの静かなキャンパス。これが同じ国、同じ町、同じ日の出来事です。

 ストに遭遇したとはいえ、私たちは無事に2週間、南アとコンゴ民主共和国の各地を見ることができました。2つの国の現状を目にして、肌で感じることができました。私たちはラッキーでした。しかしストは、アフリカからの最後のささやきだったのかもしれません。「おい、たった2週間ここで見たり聞いたりしたことで、俺の貧困を経験したと思うなよ」と。それが今でも心に響いています。

お金のある人には、豪華なショッピング・モール
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