[ 2009-05-18]

競艇学校に入ってみた 1年でプロを育てる厳格教育


早朝、整列して点呼にのぞむ訓練生
早朝、整列して点呼にのぞむ訓練生

「第1班総員15名、事故なし、現在員15名、番号!」「1、2、3・・・異常なし!」
午前6時10分。プロの競艇選手を目指す「やまと競艇学校」の訓練生の日課は、恒例の点呼から始まる。6時のブザーとともに起床。布団、シーツを決められた形できれいにたたみ、訓練用の制服に着替え、中庭に集合。慣れた訓練生は1分半で済ませる。走って集合し、男子は上半身裸で乾布摩擦、女子はTシャツでダンベル上げをしながら整列する。厳しい訓練で選手を育成する競艇学校に、筆者も含めた日本財団の職員らが研修として体験入学、訓練生の生活を覗いてみた。

ボート訓練の様子
ボート訓練の様子

4月21日から4日間、体験入学に参加したのは日本財団や競艇振興会、競艇学校のある福岡県柳川市などの職員38人。日本財団は競艇の売上で社会貢献活動を推進しており、競艇事業の理解と選手育成の現場の雰囲気を肌で感じ取るため、毎年新人職員などが訓練生に近いスケジュールを体験する。

やまと競艇学校は競艇選手のほか、審判員や検査員を養成する日本で唯一の機関だ。1年間の訓練期間を通過すれば、選手候補の卒業生はプロの競艇選手として登録される。レースには命の危険が伴うだけでなく、公営競技としての厳格な公正さが競技にかかわる業界全体に求められる。大﨑周一校長は「業界全体の公正の確保のため、礼と節による人材づくりが基本だ」と語る。


きれいに整理整頓された訓練生の部屋
きれいに整理整頓された訓練生の部屋

6時起床から22時消灯まで、スケジュールがみっちり詰まっている。すべて5分前までに準備が終わる必要があるのだ。この決まりが守れなければ、厳しい指導が下される。携帯電話や漫画雑誌は禁止。夜のわずかな自由時間もトレーニングや自習に励むか、親への手紙を書く訓練生が多い。


山口さん
山口さん

第106期生として4月に入学した(同期入学は計40人、5月12日現在の在籍は29人)ばかりの福岡県出身の山口由希絵さん(27)は「気が抜ける時間が1秒もない」と緊張気味だが、「競艇を好きになってくれる人が一人でも増えてくれるよう、いいレースができるいい選手になりたい」と夢を語る。専門学校を経て仕事に就いていたが、今回初めて応募年齢の上限が21歳未満から30歳未満になったことで、もともと好きだった競艇の選手になろうと挑戦した。競艇は男女区別なくレースを行う競技で、訓練のスケジュールも男性と同じだ。同期生の女性4人とともに切磋琢磨の日々が続く。


葛原さん
葛原さん

オートバイ・ロードレースの全日本大会で優勝経験も持つ徳島県出身の葛原太陽(ひろあき)さん(25)も競艇学校の門を叩いた。年齢枠の拡大と同時にスポーツ選手を対象にした特別枠が新設されたことをテレビCMで知り応募したという。日本チャンピオンから訓練生としてゼロからの再チャレンジだが「オートバイを一昨年にやめて目標のない生活をしていたが、人生の目標ができてとてもよかった」と表情を引き締めながら語った。

競艇学校は選手も指導教官も真剣そのものだ。研修に参加した財団職員らも3泊4日の訓練を通して、施設全体に張りつめた緊張感を肌で感じた。「水上の格闘技」と言われる競艇は事故で命を落とす可能性もある。

75針の顔面事故から復活し「艇王」とまで呼ばれた元競艇選手の植木通彦日本モーターボート競走会理事も研修課目の講和の中で「プロとは命を懸けること。命がけの思いが強まるほどよいレースができる」と語った。水上の闘いに命を懸ける選手の卵たちが、今日もやまと競艇学校で訓練に励んでいる。


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