風の香り

[ 2009-10-21]

風の香り

宮崎 正


《3》 形より勝つことへのこだわりを 新名人に新たな美学を期待

20歳、フレッシュな新名人が碁界に誕生した。第34期名人戦で張栩名人を4勝1敗で破った井山裕太新名人。1965年、坂田栄男・名人本因坊を破り名人となった林海峰名誉天元の23歳を上回る史上最年少での名人位獲得。若きスターが日本の碁界の“新風”となるよう期待する。

ヘボ碁しか知らない自分が新風というのは、おこがましい気もするが、中韓両国に押され気味の日本の囲碁界に対し、かねて素朴な疑問を持っている。方寸の盤上で半目を争う碁はまごうことなき勝負事である。にもかかわらず日本の棋士は、ともすれば「勝ち」よりも石の流れや形の美しさにこだわる傾向が強く、結果的に勝ちにつながらず、時に勝てる碁を落とすことにもなっている気がするからだ。

同じことはサッカーを見ていても感じる。体力、筋力、シュート力に違いがあるかもしれないが、ここでも形の美しさに対する日本選手のこだわりが、一瞬のシュートの思い切りの良さ、力強さを欠く一因になっているような気がしてならない。どのような形であれ、1点は1点である。ひょっとすると、そんな貪欲さを欠くのは、結果よりも経過、形にこだわる日本人の美意識と関係があるのかと想像したりもする。

2年ほど前、たまたま日本財団の関連団体の交流会で会った大竹英雄名誉棋聖にかねての疑問をぶつけてみたことがある。名誉棋聖は気さくに「そうなんですよ。それが問題なんだよね・・」と答えた。挨拶をかねた立ち話で、それ以上、突っ込んだ話はしなかったが、林海峰名誉天元とともに竹林時代を築き手厚い棋風が大竹美学と呼ばれた大竹名誉棋聖もこだわりの強い棋士だった印象があり、やや意外な感じがしたのを覚えている。

ちなみに日本棋院は施設建設に関連して日本財団の支援を受けた経緯があり、当日は日本棋院理事長としての交流会出席とのことだった。日本財団の活動にも詳しく、その後、音楽財団の演奏会でも顔を合わせ、改めて日本財団グループの活動の広さを知ることにもなった。

井山新名人は小学校2年生で全国少年少女囲碁大会で優勝。12歳でプロ入りし、多くの最年少記録を塗り替えてきた。棋風は「手厚い」「冷静」「勝負に強い」「実利を稼ぐ」とさまざま。勝負に強い天才棋士ということのようだ。勝ちにこだわる無敵の大棋士の夢を託し、勝手に応援することにした。(了)


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