風の香り

[ 2009-11-06]

風の香り

宮崎 正


《4》 米の苛立ち フォーラムでも 危うい安全保障政策

新政権が発足して約2カ月、米海兵隊普天間飛行場の移設問題やインド洋の給油活動停止をめぐり日米関係が揺れる中、笹川平和財団と米国のウッドロー・ウイルソン国際学術センターの共催で開催されたフォーラム「『核のない世界』に向けた日米パートナーシップ」を傍聴した。オバマ大統領が4月のプラハ演説で打ち出した核のない世界の実現に向け日米の連携を模索するのが狙いだが、随所で新政権に対する米側の苛立ちが顔をのぞかせ、外交、安全保障政策での新政権の危うさを改めて考えさせられた。

フォーラムは10月21、22両日、都内のホテルで開催され、米側からクリントン政権時代の国防長官でオバマ政権の核軍縮政策立案者の一人でもあるウィリアム・ペリー氏=スタンフォード大教授=、日本側から元国連大使の佐藤行雄氏=日本国際問題研究所副会長=、前外務事務次官の谷内正太郎氏=早大教授=らが出席、核軍縮が拡大抑止に及ぼす影響などを中心に講演、対談を行った。

10月30日付の日本財団ブログ・マガジンでも取り上げており詳細は割愛するが、米側の苛立ちは対談でモデレーターを務めた外交ジャーナリスト、手嶋龍一氏とペリー氏のやり取りでも浮き彫りになった。この中でペリー氏は「日米両国の絆、あるいは政治的連帯が弱まった時、米国民がどのような意見を持つか・・」と最近の日米関係に懸念を表明、これを受け手嶋氏が「新政権が打ち出したインド洋の給油活動の中止は日米の政治的連帯に沿っているか」と質したのに対し、ペリー氏は「民社党はほかの方法で支援をするというのだから、その内容が見えない限り判断しようがない」と珍しく不快感を表に出した。

当の民主党はマニフェストに「緊密で対等な日米同盟関係」の文言を盛り込み、「対等な日米関係」の言葉を好んで使う。しかし米国だけでなく、国民の多くもその趣旨を理解できないでいる。文言通りに受け取れば「日本も米国と同様、自らを武力で防衛し、国際紛争の解決にも自らの血を流す」ことになる。しかし、民主党にそこまでの覚悟と度胸はない。言わんとしているのは「自民党政権時代のように米国の言いなりになるのではなく、時には日本の考えを主張したい」ということであろう。

国民の間にも“米国のゴリ押し”に対する反発、不信は間違いなく蓄積されており、日本が自らの主張を強めることでガス抜きをする効果もある。しかし、その程度の行動を「対等」と表現するのが妥当かどうかー。米国民には「日本は米国の軍事力にただ乗りしながら軽武装で経済に専念し、経済大国になった」といった思い込みがある。そうした米国民にとって、給油活動ばかりか自民党政権時代に決まった普天間飛行場の移設問題まで白紙に戻そうとする新政権の姿勢は許し難いことになり、ペリー氏の発言は、そうした国民感情が今後の日米関係に悪影響を与えることを懸念してのことであろう。

そうでなくても新政権には、インド洋の給油活動を停止する代わりに何をするのか、対案はなく、普天間飛行場に関しては新たな移転先を「国外」「県外」と言うものの、その実、なんら当てもないようだ。最近では「なお県外にこだわりたい」とする鳩山首相と「県外移設はあり得ない」とする岡田外相の足並みの乱れも目立つ。

谷内氏はインド洋の給油活動を、「ローリスク、ハイリターンの国際貢献で、各国からも評価されている」と指摘した。それを止めてどのような貢献策を打ち出すのか。危険地域が多いアフガニスタンの現状から、人より金ということになれば湾岸戦争のテツを踏むことになり、関係国ばかりか国民の支持が得られるとも思えない。

沖縄県外で普天間飛行場を受け入れる自治体が見つかるとも思えない。「飛行場を受け入れる自治体など全国のどこを探してもない。名護市が受け入れること自体、奇跡だと思ってほしい」との島袋吉和市長の言葉こそ重みがある。当てもないままマニフェストで県外移転を打ち出したとすれば、それこそ選挙目当ての詐害行為であり、苦渋の選択をしてきた沖縄県民の心を弄ぶ行為である。 

以上、新政権に厳しい意見を述べたが、政権交代は新しい時代への対応力を欠いた自民党の低迷ぶりからも当然の結果であり、有権者の正しい選択であったと信ずる。しかし、当の新政権の迷走、とりわけ国の要である安全保障面の混乱は目に余る。さりとて自民党の再生も、現時点では期待することすら難しく、「民主党もダメか」ではこの国の将来は暗くなる。ペリー氏はオバマ政権が目指す核軍縮について「民主、共和両党の党派を超えた協力が不可欠」と語った。せめて懸案の諸問題について民主、自民両党の間で腰を据えた議論ができないものか。国民にとって大切なのは両党の明日ではなく、この国の明日である。           
(了)


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