風の香り

《6》 まず首相のメッセージを! 論議呼ぶたばこ値上げ

《6》 まず首相のメッセージを! 論議呼ぶたばこ値上げ

たばこ価格の引き上げが議論を呼ぶ中、12月17日、NPO法人「日本医療政策機構」が主催する「たばこ増税を実現する緊急集会」が東京・永田町のホテルで開催され、1箱1000円の実現を求めるアピールを出した。たばこ1000円は日本財団の笹川陽平会長が昨年、産経新聞の「正論」で提案して以来、国内でも大きな反響を呼び、規制強化が進む欧米各国では一足早く1000円時代を迎えている。
先進国では日本のたばこの安さが際立つ形になっており、笹川会長は11月、「正論」で改めてたばこ1000円の実現を鳩山首相に求め、日本医師会や日本歯科医師会が呼び掛け人となって1箱1000円を求める異例の意見広告も朝日新聞に掲載された。これを受け新政権も長妻厚生労働相がOECD(経済協力開発機構)並みの1箱600円前後を念頭に「増税は国民の健康増進に資する効果がある」と発言、超党派の国会議員でつくる「禁煙推進議員連盟」(72人)の意見も、取り合えず2倍の600円に上げ、次いで毎年100円アップ、4年後に1000円とする値上げ案が大勢と聞く。
しかし来年度予算編成が大詰めを迎えつつある最近、政府税制調査会の議論は1本当たり2~3円、20本入り1箱40~60円の小幅値上げの方向で集約されつつあるようだ。新政権が「脱官僚支配」を掲げる中、一人勝ちの様相を強める財務省が大幅値上げに反対しているほか、来年7月の参院選への配慮が背景にあるという。大幅値上げは、それによって賛成派の票が集まるわけではなく、逆にたばこ農家や小売店の票離れを生み、選挙対策上、好ましくないという理屈のようだ。
しかし「健康優先」を前面に打ち出してきた経過、さらにWHO(世界保健機関)の総会で採択された「たばこ規制枠組み条約」の締結国として1本2~3円の値上げは、あまりに姑息に見える。民主党の税制改革大綱も「健康に配慮したたばこ税の引き上げを考える」とうたい、鳩山首相本人も政権誕生時、「人の命を大切にし、国民の生活を守る政治」を目指すと宣言、その後も「環境や体の面から見て、増税ありうべしかなと思う」と健康目的の増税に前向きの姿勢を示してきた。
仮に財務省の反対で大幅値上げが見送られたとすれば、たばこ税を「その場しのぎの便利な調整財源」として引き続き維持しようとする財務省の思惑を優先することになり、たばこ産業の健全育成をうたう「たばこ事業法」を廃止し健康増進目的の新法に切り替えるとする民主党の公約に反する。
また伝えられるように参院選の票計算を踏まえた判断であれば、民主党という政党の利益を国民の健康より優先させたことになり「国民の生活を守る政治」と矛盾する。本格的な値上げを参院選後に行う、ということなら、有権者を欺く結果になりかねない。緊急集会に出席した禁煙推進議員連盟幹事長・小宮山洋子議員は「参院選を控え今回は2~3円ということになるかもしれないが、政府税調には大幅な増税を目指すというメッセージを出すよう働き掛けたい」と述べた。与党議員としての微妙な立場を反映してか、筆者にはいつもの歯切れ良さを欠くように聞こえた。
仮に小幅値上げで決着した場合、鳩山首相はそれをどう考えるのかー。政治の世界で理想と現実を一致させるのは難しいとは言え、「国民の生活を守る」と大見えを切った公約とのかい離はあまりに大きく、首相の指導力、信頼が低下しかねない。一国の首相、リーダーとして自らの考えをもっと積極的に発信した方がいい。迷走を続ける米軍普天間飛行場移設問題を見るまでもなく、あいまいな態度が事態を余計、難しくしている。
ちなみに普天間問題は、あくまで沖縄県外、国外への移転にこだわるのなら、対案も含め自らの考えを明確に表明すべきである。いたずらに結論を先送りすれば、首相の真意が分からぬまま、沖縄県民や米国の苛立ちが一段と高まる。たばこも然り。首相としての毅然たる態度、メッセージをまず示すべきだ。それを受け、値上げをするのかしないのか、さらに上げるとすればいくらにするのか、検討するのが筋だ。そうでなければ、政権交代に対する熱気も冷めることになる。(了)
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