風の香り

《10》果たして本人、親方だけの責任か!朝青龍引退と相撲協会

《10》果たして本人、親方だけの責任か!朝青龍引退と相撲協会

朝青龍が引退に追い込まれた。泥酔した上、一般人に暴力を振るいケガをさせたとされており、やむを得ない気もするが、問題となった「品格」とは何なのかー。国際化の中で相撲界には、違った社会、価値観の中で育った多くの若者が集まる。相撲道とは「人が一人の人間をつくる作業」(元横綱・大鵬)と言うが、それならば外国人力士に門戸を開いた時点で「人を育てる」ための新しい受け皿も必要だったはずだ。朝青龍、高砂親方という個人だけに責任を特化するのは公平を欠く気がする。
朝青龍は2007年夏、体調不調を理由に巡業休業を申し入れ、帰国したモンゴルでサッカーに興じ2場所、出場停止処分を受けた。たまたまこの時期、日本財団が富山の置き薬制度を利用してモンゴルで進める伝統医薬品の普及事業の取材で首都ウランバートルを訪れており、懇親会の席でエンフバヤル大統領(当時)に朝青龍問題につい聞く機会があった。
内容は共同通信を通じて配信されたが、大統領は「郷に入れば郷に従え」のことわざを引用して朝青龍の行動を詫びるとともに、「格闘技にかける青年の気持ちも理解してやってほしい」と言われた。残念ながら大相撲がいつから国技になり、現在のように形に美しさ、品格が求められるようになったのか知らない。
しかし相撲が格闘技であることに替わりはない。貴乃花引退後、朝青龍のスピード感あふれる取り口、切れ味鋭い技が相撲人気を支えたのも間違いない。今回、朝青龍に引退勧告をした横綱審議会には、立会い前に締め込みを叩く朝青龍の気合を「品格を欠く」と指摘する向きもあったようだが、多くの相撲ファンは闘志をむき出しにする朝青龍の土俵上の姿こそ歓迎していたのではないかー。格闘技である以上、闘志を前面に出すのはむしろ自然で、観客も裂帛の気合に酔い、それ故に朝青龍人気は続いた。
私は相撲道が重んずる礼を否定するわけではない。ただ格闘技でありながら礼と品格を重んずる相撲の神髄は多分に農耕民族の価値観のような気もする。英雄ジンギスハーンを見るまでもなくモンゴルは騎馬民族であり、相続ひとつとっても農耕民族が長子相続を基本とするのに対し、騎馬民族は兄弟の中で一番の力を持つ子が相続する。どの丘の牧草を求めて移動するか、リーダーの判断が間違えば、一族全体が危機に直面し、他部族との争奪も激しい。まず力ありき、の世界である。
勝手に決め付ければ、朝青龍の激しさもそんな民族の血に由来している気さえする。力、品格双方を備えた白鳳の存在を否定材料として指摘する向きもあろう。しかし、その白鳳とて内に秘めたる闘志、強さに対する畏敬は恐らく日本人力士を上回る。それがなければ、これだけの大横綱にはなれない。
いずれにしても素朴な相撲ファンとして朝青龍と白鳳の横綱対決がもう見られないのは残念でならない。朝青龍を引退に追い込んだ日本相撲協会が今後、それに見合うだけの自己改革を求められるのは言うまでもない。(了)
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