広報人語

[ 2010-05-19]

松本清張『砂の器』

菅原 悟志
広報グループ
グループ長


松本清張さんのベストセラー小説『砂の器』を久しぶりに読んだ。最初手にしたのが高校生の時だから数十年ぶりになる。将来を嘱望された天才作曲家が政治家の娘と婚約したが、ハンセン病の父を持つことが暴露されないために連続殺人を犯すというストーリー。「天刑病」「忌まわしい病気」など当時のハンセン病に対する根強い差別が問題提起されている。

清張さんがこの作品を書いたのは昭和30年代半ば。ハンセン病は恐ろしい伝染病であるという誤解が国民に根付いていた時代である。隠れて生活している患者を警察に密告し、療養所へ強制収容し社会から隔離することや結婚にあたっては断種や堕胎を強制されたそうだ。しかしながらハンセン病は感染力が極めて弱く、薬を飲めば簡単に治る病気である。予防法や治療法が確立しているにもかかわらず、1996年にらい予防法が廃止されるまで、長年患者、回復者(元患者)を苦しめてきた。

1980年代に世界には約1600万人の患者がいたが、現在は約21万人。日本で罹患する人は年に数人程度である。日本財団は40年以上にわたり、世界からハンセン病をなくすための活動を行ってきた。現在は患者、回復者、その家族に対する偏見や差別解消ための活動も行っている。社会の隅に追いやられ、辛い生活を強いられてきた人たちの精神的苦痛は癒されることはないかもしれない。しかし、新たな差別を生みださないためにも歩みを止めてはいけないのである。

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