日本財団の主催で9月、国内外の専門家40人以上が集まり、福島市の福島県立医科大学で東京電力福島第一原発事故に伴う「放射線と健康リスク」についての会議が開かれました。2日間にわたる意見交換の結果「福島県が全県民を対象に実施を計画している健康調査を極めて重要とするとともに、日本政府と国際機関が参加したタスクフォースの設置を求める」など、8項目の「結論と提言」をまとめました。


3月11日の東日本大震災は、何世代先まで忘れられない日になりました。マグニチュード9.0の地震と強大な津波が東北地方で発生、特に福島、宮城、岩手3県の太平洋沿岸の被害は甚大なものとなりました。被害を受けた施設の一つが東京電力福島第一原発でした。原発では地震・津波のあと複数の爆発があり、6つの原子炉のうち3つでメルトダウン(炉心の溶融)が起きました。その後何日かの間に南東から吹く風及び雨と雪によって放射性物質が福島県内外に飛散し、福島県民をはじめ東日本各地で放射線による健康リスクについて心配する声が上がりました。
不安を増大させたのは、関係機関から出る情報が統一されていないことでした。政府、東京電力、原発専門の学者、報道機関などが出してきた情報はそれぞれに異なりました。中には誤った情報も含まれ、国民の多くが放射線について詳しい知識を持たない中、氾濫する情報にかく乱されました。
1986年のチェルノブイリ原発の爆発事故後、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアでも同様のことが起きています。この事故の後、日本財団は10年にわたり20万人以上の子どもの健康調査の支援を実施しました。この調査の結果、多くの不安は解消され、この活動を通じて放射線と健康についての有識者との間のネットワークを組織することができました。
東北復興支援活動の一環として、日本財団はこのネットワークを通して、世界のトップレベルの有識者を集めて会議を開催することにしました。この会議の中で福島の現状を把握するとともに放射線の健康に対する影響を検証し、対応策を提案してもらおうと考えました。

9月11、12の両日、福島県立医科大学に国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)、国際放射線防護委員会(ICRP)などの世界トップレベルの放射線関係及びがん関係の国際機関に所属する有識者が集まり、国際専門家会議「放射線と健康リスク—世界の英知を結集して福島を考える」が開催されました。それぞれ専門分野が異なる参加者による国際専門家会議は、発表テーマが「放射性物質降下の状況」、「放射線に関わるリスク」、「放射性物質が落下した地域に住む人々の保護方法」など多岐にわたるもので、発表に対し鋭い質問が続出しました。400人を超える科学・化学者、医師が傍聴した同会議は、Ustreamで中継されただけではなく、新聞、テレビなどにも取り上げられ、多くの反響がありました。
国際専門家会議では、参加した専門家から多様なメッセージが繰り返し伝えられました。会議後、日本財団会長の笹川陽平も出席して記者会見が行われました。福島第一原発の問題は極めて重大なものであり、またこれまでの事故に関する情報に対する信頼度は必ずしも高くなかったため、記者からは多くの質問が相次ぎ、会見は3時間を超えるものとなりました。
今回の国際専門家会議では、40人の有識者が議論し、提言をまとめるのは難しいと考えられていました。しかし会議後、8項目の「結論と提言」が作成され、採択されました。
「結論と提言」など関連資料は以下の通りです。