
私たちの生活に必要な食糧や燃料などの多くは海外から輸入されており、そのほとんどが海上輸送によって各地の港に運ばれています。日本が海に囲まれた島国としていかに海運の恩恵を受けているかが分かります。一方で、この海上のライフラインが事故などによって一時的にでも途絶えたときの、私たちの生活への影響は計り知れません。
海上事故で厄介なもののひとつに積み荷油の流出事故があります。日本近海で起こった1997年のナホトカ号油流出事故を覚えている人もいるでしょう。タンカーの座礁・衝突などによって一度油が海に漏れ出てしまうと回収は非常に困難です。さらに、回収が遅れれば、油への引火による大規模火災などの人命にかかわる事故が発生したり、生物資源や漁場に甚大な被害が及ぶ可能性もあります。

海上事故の被害拡大を最小限に抑えるためには、迅速な初動対応が鍵を握ります。それゆえ、海上保安庁だけでなく民間の海運業者にも、事故現場の近くにいる場合には率先して初動対応を行うことが求められるのです。さらに、近年では積み荷の内容も多様化し、事故対応に専門知識が必要となる場面も増えているため、対策の技術や器材も更新し続けなければなりません。
海上災害防止センターは、海上保安庁と海運業者など官民が連携して事故対応の業務にあたるネットワークを構築してきました。具体的には、事故現場にいち早く駆け付け初動対応にあたることのできる海運業者を全国主要86港湾に選定し、多様な事態を想定してオイル回収装置などの器材を効果的に配備しています。しかし、配備した機材が有効に活用できなければ十分な対策とはいえません。そこで、いざ事故が起こったとき、迅速かつ適切な対応を可能にするため、事故を想定した実地訓練や研修も継続して行っています。こうしたハード、ソフト両面の充実を図ることで、官民のネットワークが事故の際に有機的に起動できる体制を整えているのです。

日本財団は、海上災害防止センターへの助成を通じて、「自分たちの海は自分たちで守る」の基本理念のもとに官民が力を結集し、海上事故の被害拡大を最小限に抑える活動を支援しています。