海底遺跡ミュージアム実現へ
長崎で水中遺跡見学会



長崎県・五島列島の小値賀島(おぢかじま)で、8月25、26日の2日間にわたって実施された前方湾(まえがたわん)水中遺跡見学会(9月7日「日本財団ブログ・マガジン」参照)は、わが国における初の「海底遺跡ミュージアム構想」実現に向けた第一歩でもあった。福岡市に本部を置くNPO法人アジア水中考古学研究所が、地元の小値賀町と連携して実現を目指している構想で、見学会は水中文化遺産の保護と活用に向けてのスタートとなった。
考古学の研究対象である埋蔵文化財は、土中だけでなく水中に埋没しているケースがあり、2001年のユネスコ総会では海底遺跡の野外ミュージアム化による水中文化遺産の保護と活用を目指す「水中文化遺産保護条約」が採択されている。海外ではローマ時代の海底遺跡であるイタリア「バイア海底遺跡」や、紀元前の沈没船などを中心にしたエジプトの「アレクサンドリア海底遺跡」などの海底遺跡ミュージアムがある。
そこでは海底の遺跡をそっくりそのまま保存し、スキューバダイビングや船底がガラス張りのグラスボトムボートで見学できるよう、遺物・遺構が保存されている。さらに陸上には考古博物館などが整備され、海と陸を連携させて遺跡の保護・活用が行われている。韓国や中国でも国家レベルの取り組みが進められており、韓国では木浦・新安沖の沈没船発掘を契機に国立海洋遺物展示館が整備され、沈没船の復元が進められている。
海に囲まれているわが国では、地殻変動や戦乱、海上投棄などによって海中に残されることになった「生活の痕跡」は数多く、同研究所が全国の教育委員会に問い合わせた集計だけでも379カ所の水中遺跡が確認されている。なかでも北海道江差沖の沈没船「開陽丸」や、長崎県松浦市の元寇ゆかりの島・鷹島など、貴重な海底遺跡も多い。しかし日本での水中の歴史遺産に対する関心は低く、水中遺跡の多くが埋め立てなどにより破壊されているのが現実だ。
アジア水中考古学研究所は1986年に設立され、海底遺跡調査と共に水中の文化遺産の保護活動に取り組んできたが、その必要性を訴えるには「海底遺跡を実際に見てもらうことが効果的」と考え、今回、日本財団の支援を受けて一般市民を対象とした初の見学会にこぎつけた。同研究所の林田憲三理事長は「水中にも人間の生きた証が残されている。歴史学構築のためにも海底遺跡は重要」と語り、見学会実施で今後の遺跡活用の道筋をつけたいと期待している。
地元の小値賀町でも、旧石器以来の多くの遺跡地が残る島の歴史風土を活用していくために海底遺跡ミュージアムとの連動に期待を寄せており、山田憲道町長が見学会に駆けつけ、「小値賀の豊かな自然と文化遺産を確認し、陸と海を連動したミュージアム実現に力を貸していただきたい」と挨拶した。さらに水中考古学での日韓共同研究の可能性を探るため、韓国からも研究者2人が参加した。「研究者だけでなく、多くの人に水中遺跡に触れてもらう試みは素晴らしい」と感想を語っていた。
同研究所は今後、福岡市での公開シンポジュウムや佐世保高専との共同作業で水中遺跡DVDの作成を進め、海底文化遺産の啓蒙活動に取り組む計画だ。また潜水見学ツアーは今回の成果を基にガイダンスシステムを考案し、再び小値賀島周辺遺跡での見学会を実施する考えだ。以下は今回の「小値賀島海底遺跡見学会」写真アルバム。












