海と船の大事さを伝える
NPO「鐵の学校」の講座

国際協力グループ


「資源とエネルギーの大部分、食料の半分以上を海外からの輸入に依存し、多くの製品を輸出して成り立っている日本にとって船は絶対不可欠の存在だ。それなのに、海や船に対する一般の関心は非常に低い」。福島県のNPO法人「鐵の学校」(佐藤幹雄理事長)はこんな危機感から、日本財団の支援で海のない地域の子どもたちに週末、船に関する科学講座を開催している。南会津郡只見町で1月19日に開催した講座に参加し、子どもたちの笑顔に出会った。
▽心の通うものつくり
「鐵の学校」の佐藤理事長は、福島県出身で、建設機械を扱う商社マンを経て高校生や大学生の進路相談を受けるキャリア・カウンセラーをしている。当初は千葉県を中心に金属加工を通して「ものつくり研究会」を開催、若者の心の成長ぶりを見てきた。「ものつくり」という表現は、流れ作業をイメージさせる「ものづくり」ではなく、心を持った人間による「つくる」という動作に力点をおいた佐藤さんのこだわりだ。
福島に拠点を移してからも「子供たちにものつくりや科学に興味を持ってもらいたい。海や船の重要性も伝えたい」という思いから2004年に「鐵の学校」を設立、06年からはこの講座を始めた。

▽ユニークな講座の進行
この科学講座は進め方がユニークだ。昔ながらの手作り紙芝居による講義と鉄が水に浮く不思議さを紹介する浮力の実験、さらに参加者たちが作るポンポン船(アルミパイプ蒸気船)の競走実験で子供たちを惹きつける。

只見町での講座の開催は今回で3回目だ。「このような子供たちむけの講座がもっとあればいいが、実際にやろうとする団体はなかなかいない」と只見地区センターの担当者。只見町は福島県内陸部に位置する豪雪地帯だ。それだけに子供たちは「海」と言われてもぴんとこないようだ。この時期は雪も多く、交通が不便なため参加者を確保するのも難しいそうだが、この日は小学校低学年の児童を中心に、8人の子供たちが元気に地区センターにやってきた。中には母親に連れられてお兄ちゃんと遊びにきた幼児もいた。
講座はまず、子供たちが自ら準備するところから始まる。「最近の科学講座ものは、キットのようになっていてすべて準備されていることがほとんど。でもこうやってなんでも自分でやってみるということが大事なのです」と語る佐藤さん。そして、みんなで水を汲み、たらいのような小さな容器にためる。これを小さな海と想定して船を浮かべるのだ。さらに発砲スチロール板を切って油性ペンで絵をつけ、曲げたアルミパイプを通してオリジナルの船を作る。創造力あふれる船を作った子は誇らしげだった。
▽10年継続が目標
作った船を次々と海に浮かべると、火をつけてアルミパイプを暖める。水が熱せられ、その蒸気で船が水面をポンポンと走り出すと子供たちは歓声をあげ、どうしたらもっと早く走らせられるだろう、といろいろ工夫をしていた。佐藤さんは、そんな子供たちにエンジンの仕組みや船の帆の役割などについて話して聞かせていた。


「何度講座をやっても毎回新しい発見がある」という佐藤さん。船の科学講座は3年目となり、只見町のような海とは離れた地域でどのように子供たちに海や船のことを知ってもらうか、そのための参加者増が課題だという。鍵はいい場所を選ぶことだそうだ。知らない土地でも理事長の佐藤さんが足を運び、公民館の職員とじっくりと話すことで熱意が伝わり、受け入れてくれるところも増えてきている。
今年は福島県で延べ24カ所を回る予定だが、佐藤さんは「来年は県外にも活動の幅を広げ、宮城や山形でも子どもたちに海と船の話をしたい」と意欲を見せ、講座を10年続けることが目標だ。講座に参加した子供たちが大人になっても、海や船に対して関心を持ち続けてほしいという佐藤さん。「鐵の学校」 の挑戦はまだ始まったばかりだ。