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[ 2008-04-22]

リーフチェックのリーダー養成
「国際サンゴ礁年」の石垣島で

加藤 春樹
加藤 春樹


 海の熱帯林とも呼ばれるサンゴ礁は、多様な海洋生物を育てる貴重な資源であり、地球の環境変化を警告する重要な役割も担っている。そのサンゴ礁が、気候変動や沿岸の開発などにより、世界的な危機に直面していると警告されている。このためサンゴ礁保全を目的とした国際協力組織「国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)」は、今年を「国際サンゴ礁年」と定め、加盟各国にサンゴ礁保全のための活動を呼びかけている。

 ICRCは2008年を「国際サンゴ礁年」に指定するにつき、(1)サンゴ礁と関連生態系の高い生態的、経済的、文化的な価値についての理解、そして、そのサンゴ礁が重大な危機に直面しているという理解を広める(2)サンゴ礁と関連生態系の保全と持続可能な利用のための有効な管理戦略の策定と実施のため、すべてのレベル(官、民、NGO、地域住民等)で、早急に行動を起こす(「国際サンゴ礁年2008」より)——と決議している。

 サンゴは水温が18度から30度ほどの暖かい海に生息し、世界で450種以上確認されている。サンゴ礁はそうしたサンゴの死後、長い時間をかけて骨格の石灰質が堆積し、形成される地形のことだ。形状により、日本で多く見られる陸地を囲むように海岸に接して発達する「裾礁(きょしょう)」、オーストラリアのグレートバリアリーフに代表される「堡礁(ほしょう)」、太平洋の小さな島々を形成する「環礁(かんしょう)」などに分類される。

 日本はサンゴとサンゴ礁が見られる世界最北地域で、琉球列島(沖縄県と鹿児島県奄美地方)では約415種、それより北の海では約200種のサンゴが生息している。日本で最大規模のサンゴ礁は沖縄県の石垣島と西表島の間に広がる「石西礁湖(せきせいしょうこ)」で、西表石垣国立公園に指定されている。石西礁湖を含む八重山諸島海域では363種のサンゴが確認されており、世界的に重要な生態系として注目されている。

 しかしこうしたサンゴ礁が、世界の海の多くで危機的状況にさらされている。ICRC によれば「2004年には世界のサンゴ礁の20パーセントがこわされ、回復できそうにない。さらに24パーセントは危険な状態で、10年から20年後にはこわれてしまうといわれている」と深刻だ。その原因は「高すぎる水温や病気、オニヒトデなど自然現象によるものと、赤土や沿岸の開発など、人間の活動によるものとがある」と指摘されている。

環境省国際サンゴ礁研究
モニタリングセンター
環境省国際サンゴ礁研究
モニタリングセンター

 日本政府は石垣島に「環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター」を設置、ICRIが目指す地球規模でのサンゴ礁モニタリングネットワークの、東アジア海地域の拠点となる活動に取り組んでいる。また現在、日本はICRIの議長国でもあることから、研究者や民間グループが参加するワーキンググループを組織し、市民参加型の「国際サンゴ礁年」活動を展開している。サンゴ礁保全に取り組む民間グループの一例を紹介する。


環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターでの講義
環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターでの講義

 サンゴ礁を中心とした海の自然環境保護活動を展開しているNPO法人「コーラル・ネットワーク(Coral Network)」は、2008年4月3日から6日まで、沖縄県石垣市で「サンゴ礁モニタリング・リーダー養成講座」を開催した。世界のボランティアダイバーが地球規模の連携で継続しているサンゴ礁の健康状態調査「リーフチェック」に参加する、日本における調査リーダーを養成するための講座だ。首都圏や沖縄から9人が受講した。

 「リーフチェック」は1997年に、日本など世界30カ国で立ち上げられ、世界のサンゴ礁の健康状態を、国境を越えて統一的な方法で継続調査している。広大な地域でのサンゴ礁の調査・研究は、研究者だけでは限界があるため、世界のサンゴ礁研究者グループが一般のダイバーらに協力を求め、ボランティア活動による定期的・地球規模の調査方法を考案したのだ。現在は84カ国以上に広がり、日本の調査地点は20カ所を超えた。

石垣島米原ビーチ沖の海洋実習(コーラルネットワーク提供)
石垣島米原ビーチ沖の海洋実習(コーラルネットワーク提供)

 「コーラル・ネットワーク」は、リーフチェックを実施するためのリーダー養成に力を入れており、日本財団の助成を受けて全国各地で養成講座の開催を続けている。事務局長の宮本育昌(やすあき)さんらが米国のリーフチェック本部にコーディネーターとして登録し、実習と試験によるリーダー養成を委任されている。これまでに20人を超すリーダーが生まれていて、それにあわせ日本でのリーフチェック地点が増加している。

 講座は学科と海洋実習で構成される。今回の石垣講座の参加者は、環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターで2日間、魚類、無脊椎動物、サンゴ、サンゴ礁一般など5科目を受講した。各科目ごとに、国際統一された試験が行われる。合格点は80点で、これをクリアしないと「リーダー」にはなれない。魚には詳しいダイバーたちだが、無脊椎動物やサンゴの識別には苦労していた。

川平湾から出港した実習船
川平湾から出港した実習船
海洋実習(コーラルネットワーク提供)
海洋実習(コーラルネットワーク提供)

 参加者は一定のダイビング経験者ばかりだが、さらに2日間の底質同定海洋実習がある。川平湾から米原ビーチの沖合いに出て、定められている基準調査の方式を学んだ。リーフチェックの基準調査は、人的影響をあまり受けていないサンゴ礁の3メートルと10メートルの二つの水深で、それぞれ100メートルにわたりサンゴの状況、生息魚類、無脊椎動物を継続的に観察することになっている。

 こうした養成コースを修了すると、リーフチェックの世界標準調査をマスターした「チーム科学者」として認定され、それぞれの地域でボランティア・ダイバーを指導しながらリーフチェックを実施することができるようになる。今回の参加者にはダイバーショップのオーナーが多く、そうした人たちがリーダー認定を受けることで、そのショップをベースに潜水を楽しむレジャーダイバーが、ボランティアとしてリーフチェックに参加することが期待されている。

海洋実習(コーラルネットワーク提供)
海洋実習(コーラルネットワーク提供)
川平湾から出港した実習船
川平湾から出港した実習船

 また伊豆半島のサンゴをモニタリングしたいと考えている首都圏の会社員や、石垣島に移住してきたので、リーフチェックで地域に溶け込みたいと考える人らも参加した。潜水実習では昨年心配された米原Wリーフの白化現象の影響が思いのほか少なく、サンゴの良好な生育状況が確認できたといい、みんな満足そうだった。実習は2日間の午前と午後、しっかりと繰り返された。

 自身も会社員で、リーフチェックはボランティアで続けている宮本さんは「サンゴ礁には地球環境の変化を知る貴重な手がかりがある。モニタリングを続けるリーダーが増えることは、日本のリーフチェック地点が増えることであり、それだけ環境保全の目が広がることが期待できます」と語っている。コーラル・ネットワークは今年度中にさらに2回のリーダー養成講座開催を計画している。