[ 2007-03-20]

沖ノ鳥島に灯台 日本最南端の航路標識

石井 克則


 日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)に海上保安庁が設置した「沖ノ鳥島灯台」が、3月16日から運用を始めた。周辺海域を航行する船舶や漁船の安全とスムーズな運航を図るのが目的という。珊瑚礁で構成される小さな環礁に設置された灯台の役割は小さくない。同島をめぐるこれまでの経過を振り返ってみた。

3mの灯台

12カイリ先まで照らす白色の光
12カイリ先まで照らす白色の光

 沖ノ鳥島は、東京から約1,730km南方の北緯20度25分、東経136度04分にある無人島だ。香港、台湾よりも南に位置し、ハワイ島北部と同じ緯度にある。東西に細長い楕円状の環礁(東西4.5km、南北1.7km、外周11km)で、その中に2つの島(北小島、東小島)が海面から姿を出しており、そこには消波ブロックとコンクリートの護岸工事が施され、東小島にはチタン合金の格子がかぶせてある。沖ノ鳥島灯台は島の観測施設地点にあり、高さ3m、海面からの高さは26m、電源は太陽電池パネルを採用し、12カイリ先まで見える発光ダイオード(LED)を使って8秒に1回の頻度で白色の光を発している。環礁に漁船が乗り上げるなどの事故(過去10年に4件)もあり、新しい灯台は事故防止に役立つことになる。


排他的経済水域(EEZ)に設定

日本の国土面積を超えるEEZ
日本の国土面積を超えるEEZ

 この島は1920年(大正9年)、国際連盟から日本の委任統治領として認められた。戦前には、飛行場と灯台建設の工事が始まったが、日本の敗戦によって工事は中断した。終戦後、小笠原諸島とともに米国の軍政下に置かれ、1968年(昭和43年)日本に返還された。国連海洋法条約によると、「自然に形成された陸地であり、水に囲まれ、高潮の際にも水面上にあるもの」というのが島の規定だ。
 日本政府はこの国際法を根拠に沖ノ鳥島は「島」であるとして、島を中心にした半径200カイリ(370.4km)、約40万平方kmについて「排他的経済水域」(EEZ)と設定している。排他的経済水域では天然資源(水産資源、鉱物資源)の探査や開発などの主権的な権利を沿岸国に主張することができ、遠洋漁業やエネルギー開発のために国家的な重要性を持つといえよう。


中国が水域内で調査

チタン製防護ネットで覆われた
東小島
チタン製防護ネットで覆われた
東小島

 1933年当時は5つ(6つの説もある)あったという島は、波の浸食がひどいために水没し、排他的経済水域の根拠を失う恐れが出てきたため、政府は1988年から89年にかけて約285億円の巨額を投じて消波ブロックとコンクリートの護岸工事を行い、さらにその後、台風の影響で損傷を受けた東小島は、1999年チタン製の格子で覆われた。
 日本の排他的経済水域設定に対しては、2001年ごろから水域内で中国の海洋調査船が調査をしていることが判明した。日本の抗議に対し中国側は「沖ノ鳥島は島ではなく岩だ」として、日本の排他的経済水域の設定を認めない姿勢をとっている。こうした動きもあって、東京都は沖ノ鳥島での経済活動を実践するため、深層水と表層水の温度差を利用した発電の実験や漁業活動の計画を公表し、2005年5月20日には「東京都小笠原村沖ノ鳥島1番地」と記したチタン製の看板を設置している。今回運用を開始した灯台は同年8月、経済活動実証のために建設が決まった。


日本財団も調査団を派遣

東京から約1730km離れた
沖ノ鳥島
東京から約1730km離れた
沖ノ鳥島

 政府、東京都とは別に、日本財団は2004年11月と2005年3月の2回、調査団を派遣し、民間として初めて島の実態を調査した。1回目の調査には国際法、サンゴ、建築などの海洋問題の専門家が参加、「島」の有効利用に関する報告をまとめた。
 続いて2回目の調査は「経済活動を促進させる調査」と位置づけ、(1)灯台など航路標識の設置計画(2)再生計画=サンゴと有孔虫(石灰質の殻を持つ根足虫のこと)の培養による砂浜の自然造成(3)海洋の温度差を利用した発電計画-について、それぞれの専門家が参加して調査、116ページに及ぶ報告書を出している。
 この報告が灯台の設置などにつながった。地球の温暖化の影響で沖ノ鳥島の水没問題も無視できないため、砂浜の自然造成も緊急な課題といえよう。


灯台は軽量化が図られている
灯台は軽量化が図られている

 今回の灯台の運用開始について、2回目の調査に参加し、灯台設置を提言した日本航路標識協会の佐藤辰雄理事は「私たちのレポートをベースに、提言より一回り大きな灯台ができて大変うれしく思っている。灯台は海上航行の安全に寄与するだろう」と語っている。