
人間らしい死に方を考える「死生学」という概念を定着させた哲学者のアルフォンス・デーケン上智大名誉教授(哲学博士)がこのほど、千葉大で行われている日本財団寄付講義「いのちを考える」シリーズの第7回目の講師として登壇、医学部、薬学部、看護学部の学生ら約450人を前に「死生観を育む~スピリチュアリティ(霊性)とは~」と題して、いまなぜ死生学が大事なのかを語りかけた。

この寄付講義は、がんなどの末期患者にターミナルケア(終末期ケア)をするホスピス、緩和ケアについて学生に理解と関心を深めてもらうことを目的に10月から15回の予定で実施している。この分野の第一線で活躍する医師や看護師、哲学者、カウンセラーらが講師となり、医療系以外の学生も講義を聞くことができる。
デーケン博士は「ユーモアとは<<にもかかわらず>>笑うことである」(自分は大変苦しくつらい状態にあるが、それにもかかわらず、相手を少しでも喜ばせようとほほえみかける優しい心遣いが真のユーモア精神だという意味)というドイツの定義を前提に、ジョークを交えながら(1)死を見つめる時(2)スピリチュアリティとは(3)スピリチュアル・ケアに携わる人に望ましい基本的な態度-について話を進めた。この中でデーケン博士は「危機という言葉が好きだ。人生は様々な危機の連続だが、それによって人間として成長する」「人が病気になるのは生きがいを喪失した結果だ。だから生きがいを見つけることが大切だ」と語った。

さらに大学院生時代にニューヨークの病院で亡くなった友人の母親が、死ぬ間際にウイスキーを飲み、タバコを吸って子どもたちを笑わせた経験から「死の直前まで愛のユーモアを示すことができれば、人間らしい生き方、死に方といえる」と述べた。講義終了後には、ホスピスの仕事を希望する医学部の女子学生がデーケン博士に相談する姿もみられ、学生たちがこの分野に関心を深めていることがうかがわれた。
デーケン博士は1932年にドイツで生まれた。1975年に上智大教授となり、約30年間哲学の教鞭を執った。82年に「東京・生と死を考える会」を創設するなど、「死とどう向き合うか」についての研究を進め、91年に菊池寛賞、98年にドイツ功労十字勲章叙勲、99年に東京都文化賞と若月賞(農村医療に尽くした若月俊一氏を記念した賞)を受賞している。現在は上智大名誉教授で日本各地のほか、世界を回り講演活動をしている。