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[ 2009-10-09]

2009年度インターン報告
「目指すのは利用者の自立と自律!パイ焼き窯」

丸山 綾子
公益・ボランティア支援グループ インターン


法人名 (福)はる
事業所名 社会就労センターパイ焼き窯
代表者 仮屋暢聡 氏
所在地 東京都世田谷区等々力2-36-13
TEL/FAX 03-3702-0459/03-3702-0439
ホームページ http://www.paiyaki.net/index.html
インタビュイー (福)はる 常務理事 西谷久美子 氏

商品が出来るまで

もともとお菓子に親しんでいた施設長の西谷さんが、ある有名なパティシエの方に出会ったのが始まり。原料の仕入れ先、市場調査まで、製品作りはパティシエの全面的な協力で行われました。


製品(Product)

お店は自由が丘のすぐそば、スイーツ激戦区です。市場調査の末、有名店が扱う生菓子でなく、焼き菓子で攻めることに。焼き菓子は保存がきき、材料さえよければいいものができるのも強みです。特に力を入れているのは以下の3点。

①いい素材で、素朴な昔ながらのお菓子
地卵、国産小麦粉、フレッシュバター、特に粒子の細かいグラニュー糖など、材料にはこだわりにこだわっています。

②ニーズに応じたギフト
ラッピング、数など、お客様の要望に合わせたギフト販売をします。ロゴの入ったオリジナルの箱を外注しています。ノベルティ用に、企業名を書いたクッキーもあります。

③流行を取り入れる
彩り・季節感・地元性などを考えながら、新しい商品を次々に出していきます。夏にはゼリーやムースも展開します。

 


価格(Price)

価格は、障害者自立支援法下の事業所であり、支援スタッフの人件費は反映させる必要がないことに加え、工房は法人所有のため家賃代がかからないため、安く押さえられます。


流通(Place)

店舗販売が中心。ネットでの販売も増やしたいところですが、なかなか販売単価が上がらないのが悩みです。お菓子をフランチャイズで販売してもらうのが、次の目標です。

広報(Promotion)

世田谷という土地のブランド力から、地元のラジオや雑誌に取り上げられることもしばしばですが、やはり大きいのは口コミ。施設長の講演を聞いた方から取り寄せの電話がかかることもあるそうです。


利用者について

主に精神障害を持つ方が働いています。一つのお菓子の全行程を一人で担当するのが特徴です。そのお菓子がうまくできるかは一人ひとりにかかっています。それにより失敗を人のせいにすることなく、自分の健康状態を自分で把握し、コントロールしながら働くことを学んでいきます。一定の時間内に三回うまく作れたお菓子は、その人に任されるお菓子のレパートリーに加わります。

それぞれのお菓子には作る難易度に合わせてポイントがついています。難しいお菓子が作れるようになり、任されるお菓子が増えるほどポイントが上がり、同時に工賃も上がります。こうしてシステム化することで、利用者はステップアップを実感できます。
時には失敗作が出ることもあります。それも無駄にはしません。なぜ失敗したのか、支援スタッフとともに振り返り、対応を考えます。反省をふまえて次に成功すれば、達成感もひとしおです。

働き始めて一定の時間が経つと、障害が目立たなくなります。代わりに、表情がつき、体力も増進し、コミュニケーションも円滑になってきます。自分が作ったものが人に喜ばれることで仕事のやりがいにつながるのです。


地域との関係性

普段に使える安全・おいしい・お手頃なお店として、主婦を中心に地元の方に愛されているパイ焼き窯。月一回の販売会では利用者とお客様の交流も生まれます。他にもお菓子作りのイベントを定期的に開催して、地域の方との触れ合いを創り出しています。おいしいお菓子には、地域と利用者を結び付けるパワーが秘められているようです。


ここがポイント! みづちゃんビュー

焼き菓子はライバルが多いだけに、ただ取り組むだけで売れるようにはなりません。イチゴでなくフランボワーズのジャムを使ったり、サブレの上に濃厚なカラメルとアーモンドを上に敷き詰めてみたり、パイ焼き窯のお菓子は人が引きつけられるツボを心得ています。それはパティシエの力を借りて工夫を重ねた結果です。

また作業を複数の工程に分けて利用者に振り分ける施設が主流の中、独自の仕事のシステムは珍しく映るかもしれません。ですが、これこそ、精神障害者の自律(=自分で自分をコントロールする)と自立(=自分の力で生きていく)の実現を考え抜いて形にされたものです。

専門家の力を駆使してお客様のニーズに合う商品を追求すること。利用者の自立と自律につながるような仕事を提供すること。全てにおいてこの二本柱が徹底して貫かれていることが、お菓子作りの激戦区にあってパイ焼き窯が成功できた要因でしょう。

(インタビュー日2009/08/14)


~この調査報告書は、日本財団2009年度インターンシッププログラムにおいて作成しました~
■公益・ボランティア支援グループ 福祉チーム インターン学生(調査・執筆)
   筑波大学 芸術専門学群 3年 藤森瑞葉
   京都大学 総合人間学部 総合人間学科 3年 丸山綾子
■インターンシップチューター(企画・監修)
   公益・ボランティア支援グループ 福祉チーム 伊藤広毅