高齢者・障害者に対する訪問歯科診療のために

公益・ボランティア支援グループ

口腔ケアは、機械的または化学的に口の中をきれいにすることにより、口の中のばい菌を減少させてむし歯や歯周病の予防、入れ歯による悪影響の改善、誤嚥性肺炎の防止など、さまざまな口の中のトラブルを改善することを目的としている。
歯科医師、福祉施設経営者、職員、利用者、家族に対して口腔ケアの必要性、重要性の周知を図り認識を高めるべきである。関係者が共通の認識のもとに取り組んでこそ成果が生まれる。
本調査によれば定期健診の実施状況は40%であった。口腔ケアの重要性から定期健診の実施率を高める必要性がある。
*2007年3月に財政再建団体に認定された夕張市では、市営病院を引き継いだ「夕張希望の杜」が予防医療の観点から「歯科と医療の連携」を進めている。具体的には、常勤の歯科医を雇用し往診させることで、「食道がんの手術後の患者が、口から取れなかった食事を食べられるようになった」という症例があったという。また、病院が運営する老健で専門的な口腔ケアを歯科衛生士が入所者全員に行い、誤嚥性肺炎の予防を行った結果、肺炎入院が1年以上1人もなく、また2009年度にはインフルエンザに一人もかからなかったという実績がある。
福祉施設は、地域の歯科医の協力の下、施設利用者の特性に合ったケアマネジメントを計画していくべきである。例をあげれば2009年4月に介護保険改定で新設された「口腔機能維持管理加算」ある。加算の収入増は、入所者100人の特別養護老人ホームで年額約36万円とそれほどでもないがメリットとして適切な口腔ケアで誤嚥性肺炎などを防止できれば入所者にとって身体的・経済的負担のリスクが軽減され、それが施設経営の安定化につながることが予想される。
口腔ケアを実施している施設は、全体の85%と高い割合を占めるが、口腔ケアを行う頻度・質などが課題になっている。
口腔リハビリ/口腔機能回復を含むトータルとしての口腔ケアがなされている施設は、24%にすぎない、何らかの形で口腔ケアがなされている施設は、85%あるものの、口腔清掃のみにとどまっているケースが57%(1,749施設)
地域の福祉施設の職員に対して、地域の歯科医師会等が研修会や講座などを定期的に開催することで、正しい理解が広がると同時に、地域の歯科医師と施設の関係づくりのきっかけにもなる。
「歯科診療を実施するにあたり支障となるもの」において「予算がない」をあげている割合は高いが実際の歯科診療には、どのくらいお金がかかり、どのくらいの負担ならサービスを実施することが可能なのかわかりやすく提示していくべき。
地域の歯科医師会が訪問診療可能な歯科医院のデータを収集、行政や福祉施設等への情報提供を積極的に行うことが必要である。
歯科医師の訪問→ケアマネジメント計画の策定→口腔ケアの実施→定期健診→訪問歯科治療→QOLの向上といった流れを生み出すことが必要と思われる。
歯科診療設備を有する施設は、(156施設)しかないが、訪問診療を受けている施設は、(1374施設)あることからおおよそ9割の施設では訪問歯科医師のポータブル歯科機材等により治療がおこなわれていることが類推される。設備がなくても訪問歯科で対応可能である。
また訪問診療を実施していない施設が、43%(1010施設)あることがあることがわかった。老人デイサービスセンターなど運営上、訪問診療を取り入れづらい施設もあるがこれらの施設にも口腔ケアの必要性を歯科医師が積極的に働きかけ、在宅での治療に結び付けるなどの方策も必要である。
全国に要介護者は、450万人いることから治療や口腔ケアのニーズは多くあり、施設のみならず在宅にも積極的に対応していくことが歯科医師としての社会的な責務である。
医療保険と介護保険の隙間の例として老人デイサービスセンターにおける訪問診療の難しさがある。
*介護保険上、診療時間は保険対象時間とならない為、経営上導入は難しい。
*サービス提供時間中の診療はその時間が除かれるためむずかしい。
*通所介護のため施設内での診療が出来ない。自宅に訪問してもらいたいことはある。
……などの自由記述の回答があった。
高齢者、障害者のQOLの向上のためには、口腔ケア、訪問診療は、欠かせないものであるが現状では、福祉関係者、当事者、歯科医師の連携が取れているとは、言い難い。
関係者が協力し介護報酬上にきちんと位置づけをするよう国に働きかける。あるいは施設と連携しデイサービスを利用しない日に積極的な訪問診療をするなど工夫の余地は、残されている。
| 歯科診療を実施するにあたり支障となるもの | |||
| 複数回答可 | |||
| 歯科医師とのパイプがない | 近隣に歯科医師がいない | 予算がない | その他 |
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