[ 2010-01-13]

今日は、この街にいます。

加藤 春樹
加藤 春樹


《12》 愛知県名古屋市


街と個人に《相性》はあるだろうか? 住人にしてみたら愚問であろうが、行きずりの旅人にとっては《ある》のかもしれない。私の場合、名古屋はどうもいけない。何度行っても長居をする気分にならず、街歩きを楽しんだことがない。そこで、今度ばかりは意を決し、中心部(と思われる)あたりを歩いてみる。熱田神宮(写真・下)にご挨拶し、地下鉄に乗って名古屋城(写真・上)へ行き、大通りを下って栄町界隈を探検したのだ。さて・・・。

かつてどこかの団体が「うれしいお土産、うれしくないお土産ランキング」というアンケートを発表した。うれしいトップは「夕張メロン」、うれしくない1位は「名古屋・ういろう」であった。「ういろう」にはとんだトバッチリだったが、名古屋名物みそカツ同様、全国区になるには個性が強すぎるのだろう。それは名古屋弁にも言えることで、この街は列島の中央にありながら、強烈なローカル性を保守する「大きな田舎」なのではないか。

古代、「濃尾」を取り込んだ勢力が覇権を握った。しかし国の中枢は畿内にあった。武家が切り拓いた中世は、京⇄鎌倉と、権力が尾張の頭上を行き来した。近世、扉を開いたのはこの地が輩出した信長と秀吉であったが、国政の中心は京・大阪に留まり、次は江戸に行ってしまった。そして現代、経済をもって国のリーダーになるかと思われたとたん、頼みの自動車産業がつまずいた。名古屋はなぜ、「首都」にならない(なれない)のだろうか?

ひところ《首都移転》が国政の検討テーマになり、誘致合戦もあってカシマシかった。経済の縮小とともに熱気は冷めて、今や立ち消えかと思ったら、先日訪れた三重県伊賀市に「三重・畿央地域に首都機能移転を」という看板が生き残っていた。列島の東西バランスを優先させるとしたら、確かに首都機能の落ち着き先としてこのあたりは適地である。他に「三河」や「那須・白河」地域が候補地に絞られたのではなかったか。

話は逸れるが、この構想は《こころざし》が低かった。移転先の条件として、地震危険地帯や豪雪地など自然条件の厳しい地域を外すという前提が設けられたことだ。一部の地域と国民を切り捨てたのである。この国土にそうした生活困難地帯がある以上、むしろ地震多発の豪雪地にこそ首都機能を移し、最新技術を持ってその苦労・不安を克服する街を建設する! そうした気概がなくて、何が国家100年の大計か。政治に《志》がなかった。

さて、名古屋だ。熱田に「神宮」があるということは、この地が古くから交通の要衝であったことの証であろう。だが名古屋に城下が形成されたのは家康の時代になってからで、名古屋は今年が400年祭だ。街区としては存外に新しいがそれは東京も同じ。全国に目下、開府・開町400年という街が多々あるのは、この国が徳川政権の国割りを引きずっているからで、その意味ではわれわれはいまだ江戸時代の延長を生きていることになる。

「首都」になどならなくとも一向に構わないし、個性は街の財産だ。とはいえ名古屋のアクの強さはいささか度を超えていて、話に聞く婚礼の派手さやルール無視の運転といった風習は全国標準になって欲しくないし、新聞購読率の地元紙シェアの高さも異様だ。今後いつの日か、再び《首都移転》が国家的テーマになる時、名古屋がもう少し洗練さを加えていたら、有力な候補地になるかもしれない。その時の対抗馬は新潟、あるいは北陸地域であろう。

ただ名古屋は、可哀想な街なのだ。戦災で焼き尽くされ、ようやく復興したところを伊勢湾台風に襲われた。死者・行方不明者5098人という災害は、それ以降、阪神大震災があるだけだ。それでも市民は街を再建した。再建し、これだけの大都会を築いたのだから名古屋人は偉い。アクの強さと特異な生活習慣は、非常時にはエネルギーになるということか。「伊勢湾台風50年」というパネル展に立ち寄り、この街と市民の苦難が心に沁みた。

さて、そこで私と名古屋の相性だが・・・。一応、お城を見物し、大通りをそぞろ歩いて芸術文化センターで食事をし、栄町辺りのデパートを覗いてみたりした。整備が行き届いた街ではある。しかし京都の「ふむ!」、大阪の「えっ?」、神戸や横浜の「おっ!」といった、都会を歩くトキメキが湧いてこない。やはり私は、名古屋と相性が悪いのだろうか? いや、そうではなくて、まだこの街を歩き足りないのだ、と思うことにした。


名古屋を歩いた日(2009年9月29日)、熱田神宮に近いホールで名古屋フィルハーモニー交響楽団が福祉コンサートを開催していた。その感動的な様子は「日本財団ブログ・マガジン」で。


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