芸術やスポーツで豊かな社会を
豊かな文化

越境するゲートボール


2014年9月26日~28日、新潟市陸上競技場で「第11回世界ゲートボール選手権大会」(世界ゲートボール連合主催)が開催された。同大会を通じて、地域や世代を超えて広がるゲートボールの現状を紹介する。

2014.10.15

2014年、ゲートボールの世界大会が12年ぶりに日本で開催された。2日間、世界各地の予選を通過した96チーム、700人が熱戦を繰り広げ、中国・山西省から参加した「山西臨汾代表隊」が優勝を飾った。準優勝は日本の「上昇気流」、3位はチャイニーズタイペイ(台湾)の「新竹縣」と中国の「上海高東鎭門球隊」だった。

写真:スピーチする世界ゲートボール連合の小野清子会長 今大会の開始式で、世界ゲートボール連合の小野清子会長は、ゲートボールは名実ともに世界中で親しまれるスポーツになったと述べた。
「6カ国・地域でスタートした世界大会は、20カ国・地域から参加者が集まるまでになりました。 今や世界の競技人口は1200万人です。ゲートボールの普及国も45カ国・地域に広がり、2012年にはアフリカ大陸(南アフリカ)でも行われるようになっています。ゲートボールが日本で誕生してから67年、五大陸での普及を達成することができました」

世界に広がるゲートボールの輪

1947年、北海道在住の鈴木和伸さんが、ヨーロッパの伝統的なスポーツ「クロッケー」をヒントにゲートボールを生み出した。当初は子どものためのスポーツとして考案されたが、戦後の混乱もあってあまり普及しなかった。しかし1960年代に高齢者スポーツとして再発見されると、1970年代には全国でゲートボール・ブームが巻き起こり、その魅力は里帰りした日系人や海外旅行者を通じて世界各地に伝えられていった。

当時、日本では複数のゲートボール団体が存在し、それぞれが独自に国内外で活動を展開していた。そのためルールが統一されておらず、さまざまなトラブルが発生していたという。
こうした混乱を解消するとともに、高齢者の健康増進を目指して、日本財団の支援を得て1984年に日本ゲートボール連合が発足。国内の各団体を統括し、統一のルールや審判制度を定めた。そして日本での整備を終えると、各国の愛好者団体を統括する世界連合の設立を呼び掛けることになった。ブラジル、米国、台湾、韓国、中国の各国・地域はそうした提案に賛同し、日本を加えて1985年に世界ゲートボール連合が誕生した。

1986年、世界ゲートボール連合の主催で統一ルールによる初の世界大会がゲートボール発祥の地、北海道で開催された。1990年の第5回大会までは毎年、それ以降は4年ごとに開催されている。日本以外では、サンパウロ、ソウル、ホノルル、済州島、上海で開催され、今年の新潟大会で第11回を迎えた。

地域や世代を超えた広がり

今回の世界大会には、スイスとチーム・ヨーロッパ(英、仏、ベルギー、ルクセンブルクの混成)が初出場。これまでアジア諸国や日系人が多い北米・南米からの参加者が中心だったが、ヨーロッパ勢が加わることになった。

写真 ヨーロッパはクロッケーが盛んな土地で、ゲートボールの普及に関してはハードルが高かった。そうした状況を打破してくれたのが、オーストラリアチームのアレックス・パークさんだった。ゲートボールに惚れ込んだ彼は、地元でゲートボールを楽しむクロッケー選手たちのネットワークを頼ってスイスや英国に赴き、自発的に“伝道活動”を行ってくれた。「僕がヨーロッパでまいたゲートボールの種が、今大会で芽が出たのは感無量です」とアレックスさんは言う。

アレックスさん経由でゲートボールに出会ったスイスチームのデイビット・アンダーヒルさんは、個人競技のクロッケーに比べてゲートボールは10人で競うチームスポーツなので面白いと言う。
「それだけ作戦が複雑になり、チェスのような頭脳ゲームとしても楽しめます。今後ヨーロッパ諸国でもブレイクする可能性は十分にあります」

こうした動きに連動して、世界ゲートボール連合では用具の提供を行ったり、技術指導員を派遣したりして、ヨーロッパ大陸での普及を推進していった。その際、ゲートボールが評価されたのが、競技時間がクロッケーに比べて短いということ。クロッケーでは競技時間が数時間から数日に及ぶこともあるが、ゲートボールは30分で勝負が決まるからだ。

写真

また今大会で顕著だったのが、若者たちを中心とするチームが数多く出場したことだ。インド(初出場)やインドネシア、ロシアでは最初から若者向けのスポーツとして親しまれてきたから当然だが、日本をはじめ、中国やブラジルなどのチームでも20~30代のプレイヤーの活躍が目立った。台湾からは中学生のチームも参加した。

第1回の世界大会からブラジルチームの世話役として参加してきたサンパウロ新聞社社長の鈴木雅夫さんは、「ブラジルでは、ゲートボールは日系3世の若者たちの間で人気です」と言う。
「ゲートボールがこれだけ盛り上がるとは思ってもみませんでした。10年ほど前に、世界ゲートボール連合が若い層も取り込んでいこうという方針を打ち立てたのが良かった。今後は日系人以外の若者にいかにその魅力を伝えていくかだと思っています」

写真

グローバルスポーツを目指して

写真 今大会で中国勢は1位と3位を占め、圧倒的な強さを見せつけた。前回の上海大会でも1位から3位までを独占している。中国の競技人口は500万人。日本の200万人を大きく上回る競技者が中央行政機構の国家体育総局の支援のもと、技術や戦略に磨きをかけている。近年ではジュニア層の指導にも力を入れているというから、今後さらに実力をつけてくるに違いない。

写真

写真:日本ゲートボール連合普及課長の野上順さん今後の世界展開の観点に立てば発祥国以外の国が力をつけていくのは喜ばしいことだと日本ゲートボール連合普及課長の野上順さんは言う。
「今大会で日本が優勝できなかったのは本当に残念ですが、日本以外の国・地域で盛り上がっていくことは、さらに世界に広まっていく上での一つの通過点とも言えるでしょう。世界で力を入れる国・地域が増えれば、国際的スポーツとして認知されますし、ゲートボールがスポーツとして進化していくことにもつながっていきます。またグローバルスポーツとして日本に逆輸入されることで、国内でのゲートボールに対するイメージも変わっていくはずです。これからも本家である日本が世界の流れをリードしながら、この素晴らしいスポーツを生んだのが日本だというメッセージを伝えていきたいですね」

撮影:三輪憲亮