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伝統音楽・日本太鼓で楽しく広める“和の心”


郷土の特色を伝える民俗音楽として、地域のお祭りやイベントで演奏され、コミュニティの活性化にも大きく貢献している日本太鼓。老若男女が楽しめる親しみやすさから多くの愛好者を持ち、近年では障害者の療育にも活用されて効果を上げている。全国的な太鼓の資格認定を行う唯一の団体である公益財団法人日本太鼓財団は、国内外で日本太鼓の伝統伝承と普及、振興を図るため様々な活動に取り組んでいる。

2014.12.08

太鼓の魅力をより多くの人に伝える

写真古来より伝達手段として使われ、戦では士気を鼓舞する陣太鼓として、また神事や祭礼においても重要な役割を担ってきた日本太鼓。現代では、伝統芸能の域を越え、音楽芸術の楽器として幅広く使われるようになった。その演奏方法や所作や掛け声などは各地方によって特色があり、民族芸能、郷土芸能として伝承されてきたものだ。
そんな土地々々に根ざした太鼓文化だが、全国的な組織・日本太鼓財団が誕生した経緯を事務局長の大澤和彦さんはこう解説してくれた。
「日本太鼓は各地方で流派や団体があり、独自に伝統継承をしてきました。しかし、1970年の大阪万博のステージなど各団体が集まって世界へ日本太鼓を発信する機会が増える中、太鼓の普及活動や団体間での親睦を図るための全国的な組織を作ろうという気運が高まっていきました。そして、1979年に日本太鼓財団の前身『全日本太鼓連盟』が設立されたのです」

写真日本太鼓は叩けば音が出るので初心者でも親しみやすい楽器だ。子供から高齢者まで愛好者の年齢層は幅広く、最近では主婦をはじめ女性グループも増えているという。
「子供たちは太鼓を通じて、礼儀や作法、協調性なども学べるので親御さんにも好評です。全身を使う上に太鼓の振動は脳に直接刺激があるので、太鼓愛好者の老人はシャキっとしている方が多い。そして、最近は障害者支援施設などでの療育でも効果をあげています。日本太鼓は、まさに老若男女から愛されている楽器といえるでしょう」(大澤さん)

日本太鼓財団は日本太鼓をより多くの人に紹介すると同時に出演団体の相互交流を目的とした『日本太鼓全国フェスティバル』や、18歳以下の『日本太鼓ジュニアコンクール』と60歳以上の『日本太鼓シニアコンクール』、障害者チームを対象とした『日本太鼓全国障害者大会』や募金活動を行う『日本太鼓チャリティ・コンサート』など、多彩なイベントを開催している。

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日本伝統文化に対する誇りも育てる

日本太鼓財団の最大の特徴は、「指導者育成や技術向上のための活動」として「日本太鼓資格認定制度」を設けていることだ。 認定制度は、指導員としての資格について認定する「公認指導員(1~3級)」と、演奏者としての技術水準の資格について認定する「技術認定員(1~5級)」の2つに区分されている。そして、毎年全国各地で開催する「日本太鼓全国講習会」や各支部が主催する支部講習会で認定試験を行っている。
こうした太鼓の統一的な技術認定試験を全国規模で行っているのは日本太鼓財団だけだ。太鼓愛好者にとって昇級という目標があることは、日々練習を重ねる上でのモチベーションを高めることにもなる。特に子どもたちは、昇級などの目的がないと練習も長続きしないので、大きな励みとなっているようだ。

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写真 2014年9月13~14日に福島県郡山市・片平公民館で行われた『第51回日本太鼓全国講習会』には、全国18都道府県から123名の受講者が集まった。プログラムは3~5級までの習熟度別の基本講座と、「御諏訪太鼓講座」「三ツ打太鼓講座」「締太鼓講座」などの専門講座が用意され、2日目には技術認定員検定が実施された。
技術検定は日本太鼓財団・技術委員会によって定められた演奏実技と筆記試験が行われるため、講座内でも実技だけでなく、太鼓の歴史や道具の種類や扱い方などの座学も実施される。
「各地方の流派の練習では、やはり演奏技術を学ぶことがメインとなっています。そのため、太鼓の成り立ちや正しい保管の方法などを知る機会は少ないようです。筆記試験のために自分たちが演奏する楽器のルーツを知ることで、演奏にも厚みが出てくれると思いますし、太鼓という日本伝統の文化に対しての誇りを持てるようにもなるのではないかと考えています」(大澤さん)

太鼓の響きで“和の心”を世界に伝える

写真:太鼓を演奏する日系3世・栄口カロリーナさんこの講習会の参加者の中で一際熱心に太鼓を打ち込んでいたのが、日本で太鼓を学ぶためにアルゼンチンから留学中の日系3世・栄口カロリーナさんだ。
彼女は日本財団が助成する「日系スカラーシップ:夢の実現プロジェクト」によって来日し、長野県岡谷市で日本語学校に通いながら、諏訪響太鼓店で製造方法、御諏訪太鼓道場で演奏技術を学んでいる。
「私の両親は日本人ですが、親から太鼓を教えてもらったわけではありません。子供の頃からパーカッションを学んでいて、大人になってから日本の太鼓に出会って、その魅力に惚れ込んでしまったのです。日本の太鼓は本当に素晴らしいと思います。良い演奏をするためには、身体だけでなく、頭も気持ちも全部使わないといけません。2年間の留学期間で技術認定1級を取得することを目指して頑張っています」(栄口さん)

栄口さんのように海外に住みながら日本太鼓に興味を持つ外国人も多い。現在、ブラジル、ペルーなどの日系人社会を中心に、中国や台湾、アメリカやヨーロッパでも人気は高まっているという。
「現在、海外からのイベント出演の依頼や太鼓指導のお話などが増えています。そういったオファーに対応する場合、流派ごとでは規模的に難しい部分もあるので、日本太鼓財団は太鼓を世界に広めるための窓口としても機能していると思います。海外での公演を聴いた方の中には、日本太鼓を通じて日本語や日本文化にも興味を持ってくれる場合も多いようです。日本太鼓財団は、和の心を守って伝承しながら、和の心を世界に広げるために、これからも努力していきたいと思っています」(大澤さん)

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撮影:コデラケイ