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日本太鼓の魅力が詰まった全国障害者大会!


太鼓を演奏する障害者チームが日々の練習の成果を披露する『第16回 日本太鼓全国障害者大会』(主催・日本太鼓財団)が、2014年10月5日に大阪で開催された。親しみやすいのに奥が深い日本太鼓は障害者にも愛好者が多く、近年は多くの団体で療育として用いられている。参加した各チームの素晴らしい演奏と関係者のインタビューから、日本太鼓の持つ多くの魅力や利点を探る。

2014.12.08

障害者の療育として効用がある日本太鼓

2014年10月5日、『第16回日本太鼓全国障害者大会』が大阪府大東市総合文化センターで行われた。全国から障害を持つ方とその家族や施設関係者で構成された34チームが参加し、情熱溢れる太鼓の音色で約1200人の観客を魅了した。

この大会は、1998年に社会福祉法人・富岳会(静岡県)によって『第1回全国障害者太鼓演奏会』として開催されたが、「より多くの障害者団体に出演機会を与えたい」という要請に応えて翌年から規模を拡大、日本財団が支援する日本太鼓財団が主催、富岳会共催の形で、大会名も現在の名称に変更された。

太鼓のリズムは生まれる前に胎内で聞いた母親の心臓の鼓動にも例えられ、叩けば誰でも音を出すことができ、音階もない。そのため、最も親しみやすい楽器のひとつと言われている。一方で、団体演奏の組太鼓になると、高低音それぞれの太鼓が音を奏でるために音階が生まれてくる。楽曲が複雑になる分、集中力と協調性、持続性も要求され、全身を使っての演奏は体力づくりにもなり、姿勢や所作も大切になるので礼節も備わるという。

写真:挨拶の言葉を述べる富岳会の山内令子理事長富岳会は37年前から補助セラピーや自己表現の手段、交流の機会として日本太鼓を取り入れ、その成果を全国に発信してきた。現在では数多くの障害者団体や施設で療育として太鼓の演奏を行い、効用があるということが立証されてきた。
富岳会の山内令子理事長は大会開催に当たり、力強い挨拶の言葉を寄せた。
「今後も和太鼓療育の成果を全国に発信するとともに、障害のある人も個々の目的に向かって、継続、努力、挑戦していくことを支援し、和太鼓を通じて、障害のある人も障害のない人も共に暮らす共生社会の実現につなげていければと願っております」

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太鼓が切り拓く新しい世界

障害者大会には、ろう者のチームも多数参加している。
写真太鼓の響きは直接身体に伝わり、リズムや音の強弱を感じることができるため、耳が聞こえなくても演奏することができる。参加者の中には「太鼓に出会うまで、音楽の世界を全く知らなかった」という方もいた。

それでも、身体で感じる振動と視覚を頼りにした練習は、聴者の数倍から数十倍もの時間を必要とするという。しかし、ろう者のチームの太鼓に掛ける思いは熱いようだ。
「ハンデに甘えず『聞こえなくても頑張ればできる!』ということを少しでも多くの方に知って頂くことで、偏見やバリアをなくしていきたいと思っています」(神戸ろう太鼓集団・鼓神)

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写真:スピーチする日本太鼓財団の塩見和子理事長 日本太鼓財団の塩見和子理事長は障害を持つ方の太鼓への熱心な取り組みを賞賛するとともに、それがアジアの障害者にとっても大きな希望となっているという。
「『日本太鼓資格認定制度』では、障害者の方が健常者の方と同じ試験を受けて、すでに60名が合格し、3級の指導員も生まれました。これはとても素晴らしいことです。そして海外でも、2013年から行われている『ミャンマー障害者芸術祭』に、2年連続で甲州ろうあ太鼓のチームが参加しています。耳の聞こえない人でも太鼓の演奏ができるということは、アジアの障害を持つ人々にもとても大きな力を与えているようです」

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親しみやすいのに奥が深い!

写真知的障害のある生徒が通う徳島県立国府支援学校の和太鼓部を引率して来た横山理恵先生は、日々太鼓に打ち込む生徒たちの姿をこう語る。
「太鼓は叩けば音を出すことができるので、誰でも始めやすい楽器です。でも、続けていくと演奏が高度になるだけでなく、振付や掛け声なども覚えねばなりません。そして、チームでの演奏には協調性が必要となります。親しみやすいのに奥が深く、仲間との絆も生まれるので、生徒たちにとって太鼓は魅力的でのめり込みやすいものだと思います」

同校の和太鼓部部長の上野綾真くんも、練習は大変だが太鼓が大好きだという。
「楽譜や振り付けを覚えるのが難しいけど、太鼓のおかげで素敵な仲間に出会えました。みんなと音が合った瞬間の一体感は最高なんです!」

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撮影:コデラケイ