次の災害に備えて みんなのいのち

「災害救助犬」命を探す犬たち


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災害が発生したときのために準備が必要なのは人間だけではない。がれきの下に生き埋めになった生存者を探し出す「災害救助犬」とトレーナーも、ひとりでも多くの人の命を救うために日々訓練を積む。日本財団は、災害救助犬とトレーナーの育成、訓練施設の整備に対する支援を行っている。
2013.12.16

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一刻を争う災害現場での生存者の救出

災害発生によって倒壊家屋や土砂などの下敷きになった人の救出作業において、「72時間の壁」という言葉がよく使われる。
生き埋め状態になってから72時間を境に生存率が急激に低くなるという統計から生まれた言葉で、海外では救出のための大切な時間「Golden 72 hours」と呼ばれるために「黄金の72時間」という言い方をする場合もある。72時間は、水分摂取なしに人間が生きられる時間とも重なるが、人命救助におけるあくまでも目安。実際は外傷やがれきによる圧迫、暑さや寒さなどによって生存時間は短縮してしまう。つまり、生き埋め状態の方の捜索は一刻を争うものなのだ。

しかし、生き埋め状態の人間を探す特殊な機械(電磁波人命探査装置など)の普及はまだ充分ではなく、東日本大震災のような広範囲に被害が及んだ場合にはほとんど対応することができない。
そこで、活躍を期待されるのが災害救助犬という存在だ。災害救助犬とは、家屋の倒壊現場などから生存者の匂いのみを探し当てて、救助活動をサポートする犬のこと。東日本大震災の被災地では、救援に駆けつけた海外の組織の犬たちも含めて、多くの災害救助犬が生存者を探して駆け回った。

地震や台風など自然災害の多い日本では、こうした救助犬のニーズは以前から指摘されており、さまざまな団体が犬の育成に当たってきた。中でも、「救助犬訓練士協会(RDTA)」は、「国際救助犬連盟(IRO)」に加盟する日本唯一の団体で、IROの基準に基づく救助犬の資格試験を実施している。
日本財団ではRDTAの活動に対して2008年から継続的に助成を行ってきたが、東日本大震災の発生で災害救助犬の必要性が再確認されたこともあり、長野県富士見町に世界に通用する救助犬とトレーナーを育成するための大規模なトレーニング施設「RDTA八ヶ岳国際救助犬育成センター」の整備を支援した。

日本中に災害救助犬が普及する日まで

RDTA八ヶ岳国際救助犬育成センターは、広大な敷地の中に大量の瓦礫やコンテナなどが設置され、さまざまな災害の発生現場が再現されている。
2013年5月3日の開所式に合わせて、ドイツの鉄道警察学校校長を務めた災害救助犬育成の第一人者、アルフォンス・フィーゼラーさんが来日。新しい施設を使っての特別セミナーが行われ、小型の愛玩犬から大型犬までさまざまな犬たちとその飼い主30組以上が参加した。

フィーゼラーさんは「日本の救助犬のレベルは、この10年間で大きく向上しました。こうした施設を利用して訓練を積めば、さらに多くの技術を習得できるでしょう。今後はトレーナーとして災害現場で犬に付き添う飼い主の技術向上が大切です。実践的な訓練によって、犬の考えていることを感じ取ってすぐに行動できるようになってほしいですね」とアドバイスを送った。

救助犬というと、警察や消防で専門的に育てられたようなイメージを持たれがちだが、海外では、一般家庭で飼われている犬がほとんどで、犬種もさまざまだ。崩れやすいがれきの小さな隙間など、小型犬が活躍できる場面も多いという。
日本でも普通の飼い犬がいざという時に救助犬として出動できるような体制づくりが期待されており、今回のセミナーにも救助犬育成のNPOスタッフなどに交じって一般の愛犬家も参加していた。
「日常のしつけのために専門の訓練所に預けたところ、好奇心が強くて素質があるから救助犬の訓練を受けてみないかと誘われました。犬にとっては訓練という意識はなくて、広い敷地の中で思い切り駆けまわれるし、かくれんぼの延長みたいに感じているようで、本当に楽しんでいます。いざという時に私たちが少しでもお役に立てたらうれしいです」
東京からフィルくんを連れて参加した女性は話す。

RDTAの村瀬理事長は今後、RDTA八ヶ岳国際救助犬育成センターに屋内訓練施設や宿泊設備などの設備を充実させていく予定。そして、災害救助犬のさらなる普及を目指す。
「災害救助犬は東日本大震災以来、認知度は上がりましたが、この先に起きるかもしれない大災害を考えれば、まだまだ犬もトレーナーも足りません。これから、もっと多くの方に災害救助犬という尊い存在を知ってほしいし、さまざまな訓練ができるこの施設を効果的に活用してもらいたいです」

ビデオ撮影・編集:田中 柾幸
ナレーション:吉田 裕美
写真:コデラケイ

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