東北を復興へ導く「ROADプロジェクト」
みんなのいのち

次のニーズを予測する「避難所アセスメント」が災害支援を変える


阪神淡路大震災でも、新潟中越地震でも、避難所で多くの方が亡くなっている。東日本大震災では「避難所でどう生き延びるか」という課題を解決するため、「避難所アセスメント」という考え方を取り入れた活動が行われた。

2012.10.01

「避難所で生き延びてほしい」という思い

東日本大震災発生3日後の2011年3月14日、「スペシャルサポートネット関西」や「せんだい・みやぎNPOセンター」などを核とした5つのNPOが集い、「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」(以下、つなプロ)が発足した。彼らのミッションはただひとつ。被災地で見過ごされがちな“スペシャルニーズ”に特化して、専門性の高いNPOと被災者とをつなげて支えようというものだ。

写真 これは過去の震災から学んだことだった。つなプロ発起人の田村太郎氏が説明する。
「阪神淡路大震災のとき、震災からは生き残ったのに、避難所で亡くなった方が500人出ました。新潟・中越地震では、死者の半数以上が避難生活で亡くなっている。これは避難先での生活のクオリティが低すぎることも大いに関係していると考えられています。『避難所に行けたから安心』なのではなく、『避難所でどう生き延びるか』という課題が横たわっているのです」

食糧・水・防寒具といった基本的なニーズは、行政やほかの多くのNPOやボランティア団体がサポートすることは予想できた。むしろ支援物資は余剰を抱えるだろうと、以前の震災での経験から判断し、つなプロは避難所でみんなが“生き延びる”ための細かなニーズを把握することに奔走する。

だがそこには思いがけない出来事が待っていた。予測していた“基本的な支援”が被災地にまったく届いていなかったのだ。
「普通なら震災後1週間も経てば、物資が行き届くのに、今回はガソリン不足や原発事故の影響などもあり、避難所に必要な支援物資が充分届かなかった。そのような中で、避難所がいまどんな状態なのかをアセスメントしようと、私たちは支援物資も何も持たないで避難所を訪れたので、被災者の方からは『手ぶらで何しに来たんだ』と叱責を受けたこともあります。最初の1〜2週間の調査は非常にキツかったですね」

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あるべき理想的な避難所の姿を思い描き提示する

しかし彼らは地道に避難所のニーズを掘り起こしていった。「間仕切りはあるか」「トイレはいくつあるか」「トイレの汲み取りはどれくらいの頻度か」「土足か土足禁止か」…。これらは被災者に「何が必要ですか」と尋ねるだけでは出て来ない、彼ら独自のアセスメント方式を使ったものだ。

「被災地のニーズを発掘するためには、被災者の声を聞くことが大事だと思っている人が多いのですが、『何が必要ですか』とご用聞きのように尋ねるだけでは、本当のニーズは決して出てきません。被災者は『命があるだけで良かった。欲しいものは特にありません』と言われる方が多いのです。ですから私たちは自らの評価軸で、あるべき避難所の姿を想定し、提案していきました。『AとBとC、あったらいいと思うものある?』と具体的に聞いて、やっと被災者の方は『これが欲しかったんだ』と気づく。こちらがニーズを予測して提示することが大事なのです」

こうして避難所を回って集めた調査結果を事務局に持ち帰り、情報を集計。6月末までに延べ443ヵ所の避難所を訪問し、505件のニーズを発掘した。そしてこれを民間企業のクラウドシステムを利用してウェブサイトで公表、刻々と変わる被災地のニーズを週単位で更新し、社会に向けて発信も行った。そして、車イスを津波で流された人に震災1ヵ月後に車イスが届けられたり、「辞書」や「胃ろうバッグ」といった少数だが大切なニーズにきめ細かな支援が行われた。

貴重な情報を分析し、次に備える

「阪神大震災と比較して、支援が遅れているという声を耳にします。ですが、1995年といまとでは人口構成も地方の財政状況もまったく違うのです。例えば18歳人口は1995年から2010年の間に3分の2になった。地域に元気な若者がそこそこいるという前提で議論してはダメ。もうそんな時代ではありません。また阪神大震災の95年当時は、まだ自治体財政にもある程度余裕があったが、いまはそこもカツカツ。さらに金利が下がってしまって、基金を積んで金利で復興する『復興基金』モデルが通用しない。いままでとは違う災害時対応や復興対策へと、発想を転換する必要があると思います」

それにはまず自治機能を取り戻し、再構築することが先決。その上で、被災者が納得できる復興計画をつくって実行していけるよう、周りはサポートしていかなければならない。

つなプロも、今回集めた貴重な情報を元に分析を進め、避難所アセスメントの在り方、スペシャルニーズへの対応の仕方などを整理して、いつか必ず起こるであろう次の震災への対策を進め、備えていく予定だ。

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