東北を復興へ導く「ROADプロジェクト」
みんなのいのち

悪路も難なく走破するダイムラーの特殊車両を被災地に。


震災発生当初、被災地で特に必要とされたのが車。がれきに埋もれて道なき道となったが、物資や人員を必要な場所に運ばなければならない。そのための特別な車両をダイムラーAGが日本財団を通じて被災地に無償貸与した。

2012.10.01

ドイツからから届いた贈り物

東日本大震災の復興に向けて、多くの企業が積極的な支援を申し出た。国境を越えての支援表明も少なくなかった。日本財団は、こうした企業と現地で活動するNPOやボランティア団体などを結びつけ、三者で協議を重ね、企業側の支援が被災地で効果的に使われるよう、物資提供や支援事業のマッチングを行った。

ドイツの自動車メーカー、ダイムラーAGは、震災からわずか1週間後の3月18日に、200万ユーロの初動支援を、4月12日には車両50台の無償貸与を発表した。これらを託されたのが日本財団だった。その理由を「日本財団は阪神淡路大震災のときも初動期から現地で復旧活動に貢献しており、経験の幅が広い。またNPOとのつながりも深く、被災地の現状に即した支援内容の提案をしてもらえる好パートナーだと判断した」と、ダイムラーAG東京代表事務所は話す。

被災地ではがれきの処理や、がれきに埋もれた漁場の整備が復興への優先課題の一つだったが、作業に必要な大型車両や人員を輸送するための車両が圧倒的に不足していた。ダイムラーAGは、その問題を解決する車両を「一気に迅速に日本に輸送する」ため、世界最大のロシア製航空輸送機「アントノフ」を使用、日本の地を初めて踏む「ゼトロス」8台を含むメルセデス・ベンツの車両20台を成田空港に届けた。ダイムラーAGの日本法人である三菱ふそうトラック・バス(株)の車両も合わせて計50台が、被災地での活動に向けて準備を整えた。

写真:世界最大のロシア製航空輸送機「アントノフ」から降ろされるダイムラーの特殊車両

政府も基準緩和に協力

車が日本に到着しても、被災地に届けられるためにはまだ乗り越えなければならないハードルがあった。ドイツ本国から送られてきた20台には、排ガス規制など日本の車両規制に適応していないものも含まれていたのである。しかし、世界一悪路に強いといわれる「ウニモグ」や、水深1.2mまでは水中でも難なく走行できる「ゼトロス」は、被災地で役立つことは明らか。そこで、貿易管理を担当する経済産業省、車両の基準や道路を管理する国土交通省に、関係者が粘り強く交渉。5月の連休中も交渉を続け、ようやく災害支援を目的として、2年間の期限付きで特例として輸入が認められた。

三菱ふそうトラック・バス(株)の本多通弘さんが、交渉の様子を振り返る。 「当初は車両登録を行うことを考えていたのですが、そうすると認証を取るのに最低でも1年かかることが分かりました。それでは被災地の支援になりません。国交省に基準緩和の認定手続きをお願いすると、担当運輸局が異例の速さで審査を行ってくれ、臨時運行標が発行されました。これらのご協力で、早期に日本の道路で活動することが可能になりました。また、『ゼトロス』は全幅が基準オーバーのため、特殊車両通行許可申請が必要となりましたが、こちらも国や県等が迅速な審査をしてくれ、早期投入が実現しました」

日本財団ではメルセデス・ベンツ日本(株)と三菱ふそうトラック・バス(株)とともに車両配分委員会を設置、現地で活動する団体などからの要望や、現地での運用の能力などを踏まえて、車両の配置を行った。また、貸与された車両を即時活用できるように、ドライバーも、大型免許や作業資格等を持つ現地の住民を起用した。

写真:ゼトロスとウニモグ

がれき処理から炊き出しまで

石巻市の支援活動では「ゼトロス」3台、「ウニモグ」1台、「キャンター」6台が貸与された。石巻市中心部から1時間ほどはなれた小網倉浜では、人手で撤去できないような柱にからみついた大きな漁網や丸太などが、ゼトロスやウニモグによって取り除かれていった。

がれきの処理が一段落した後は、これらの車両はイベントや地域の見回りに活用された。ゼトロスの荷台で炊き出しが行われたこともある。日本初上陸という珍しさもあり「この車が走っているのを見るだけでも元気が湧く」と被災者にも好評だった。2年間の貸与期限ぎりぎりまで、これらの車は被災地を走り続ける。

写真:被災地で活躍するゼトロス

東北の新しいリーダーを育成

ダイムラーAGと日本財団は、緊急支援を行う一方で、長期的な視野に立った支援も必要との考えから、「ダイムラー・日本財団 イノベーティブリーダー基金」を設立した。被災地の復興に欠かせない地域に根を下ろしたリーダーの育成を目指して、東北初のMBAスクールである「グロービス経営大学院仙台校」で学ぶ8人に「イノベーティブ奨学金」を授与したほか、この奨学生が東北地方で新規事業を立ち上げる際の資金を助成。今後3年間で、100人以上のビジネスリーダーを輩出し、被災地での雇用創出に貢献することを目指す。