東北を復興へ導く「ROADプロジェクト」
みんなのいのち

地域の絆をつなぎとめる! 「まつり応援基金」で伝統芸能や祭りの復活を支援


東北各地の伝統的な芸能や祭りの復活を支援することにより、絆をつなぎとめてコミュニ ティの崩壊を防ぐことを目的に、日本財団ROADプロジェクトでは「地域伝統芸能復興 基金(通称:まつり応援基金)」を設立した。

2012.10.01

バイオリン売却資金で基金創設

写真:ストラディバリウス「レディ・ブラント」 ストラディバリウスは、17〜18世紀にイタリアの名工・ストラディバリによって作り出されたバイオリン。音色の美しさや骨董的価値 などから、収集品として高額な値で取引されることでも知られている。

そのストラディバリウスを多数所有し、数々の演奏家たちに無償で 貸与してきた日本音楽財団は、東北復興支援のために、1721年製の ストラディバリウス「レディ・ブラント」をロンドンのオークショ ンに2011年6月に出品。ストラディバリウスとしては過去最高額の 1589万ドル(約11億7000万円)で落札された。日本財団に寄付され たこの資金を元に、新たに創設されたのが「地域伝統芸能復興基金 (通称:まつり応援基金)だ。
「その頃、被災地での“生きるか死ぬか”という緊急支援がひと段落したところでした。また原資がストラディバリウスなので、文化的事業に役立てたいと いう思いもあった」(日本財団・公益ボランティア支援グループ 枡方瑞恵)

当時、新聞各紙には『東北で芸能がピンチ』や『祭りの復興で鎮魂の祈りを』などという記事が頻繁に掲載されるようになっていた。 「民族芸能の宝庫」といわれる東北地方では、個性的な祭りが数多く行われ、地域の人々が心を通い合わせる場として重要な役割を持ってきた。長い間受け継がれて来た伝統ある祭りが、被災による道具類などの消失によって開催できないでいるということを知った日本財団は、これまでに各地の芸能を次世代に伝える事業を積極的に展開してきた経験を生かそうと、現地に調査に入った。

祭りがコミュニティーを活性化する!

写真:釜石 夏の港まつりの様子

基金では、被災地で郷土芸能に関わっている団体や大学の教授などにヒアリングを実施。また、本当に地元の人々が祭りを復活させたいと願っているのかといった点にも留意して調査を行った。その結果、各地方の中核的な年中行事や芸能・祭りに関わる芸能団体をサポートすることに決定した。

最初に支援したのは、岩手県釜石市にある釜石虎舞保存連合会だ。虎舞とは簡単に言うと、獅子舞の獅子が虎になった舞踊のこと。釜石だけでなく、三陸の沿岸部に多く伝わっており、踊りやかけ声などは場所によって独自性を見せる。地域の祭りで披露されるほか、祝い事の際にも踊られているものだ。

写真:釜石虎舞 「『釜石に住んでいるから虎舞を踊っているのではなく、虎舞があるから釜石にいるんだ』という声を多く耳にしました。だから、このまま虎舞が復活しなければ、多くの人がこの地域を離れてしまうのではないかといった焦燥感も伝わってきたんです。私たちは単にお祭りをして欲しいのではなく、お祭りを開催する過程でコミュニティーが再形成していく、そのつながりを支援したいと考えていたので、まず、この虎舞への支援を決定しました」(枡方)

その後も基金では、数々の伝統芸能の継承のために必要となる物品購入を支援。伝統工芸品は地元で製作されることが多く、被災地の手工芸の活性化にもひと役買っている。2012年4月までに、15団体に対して祭装束や太鼓、神輿、山車などの修理や購入費用として3億2389万5061円の支援を行った。

写真

※釜石虎舞の動画はこちらをご覧ください。
『釜石虎舞〜復興の舞〜』

心の故郷「鎮守の森」の復活を目指して!

写真:第1回目の植樹祭の様子

第2フェーズに入ったまつり基金が、現在行なっている活動が『鎮守の森復活プロジェクト』だ。 神社の境内や参道を取り囲む鎮守の森は、災害時には防災林として避難所の役割を果たし、普段は人々の憩いの場として地域の人々に親しまれるもの。しかし、震災の津波により、東北地方の多くの神社で、社殿や鳥居などとともに鎮守の森も流出してしまったのだ。

「鎮守の森はおまつりを行う場でもあり、地域の核となるもの。それが流されてしまいました。自分の住宅が全部流されてしまっているのに、まずは神社をなんとかしないといけないと、地元の皆さんでお金を出し合って仮の社殿を整備したという地域もあります。そうした心のよりどころである神社で、森だけでも早期に復活したいという声がたくさんありました」(枡方)

写真 そこで日本財団では神社本庁などと連携して、住民の心のふるさとを復活させる『鎮守の森復活プロジェクト』を始動したのだ。森づくりの権威・宮脇昭氏(国際生態学センター所長)を植樹祭の監修に迎え、2015年春までに約30社において植樹を行う予定だ。 第1回目の植樹祭は6月24日に宮城県亘理郡山元町の八重垣神社で行われ、地域住民を中心に学生ボランティアなど500人以上が参加した。宮司の藤波祥子さんはこう語ってくれた。

写真 「八重垣神社は何本かの松を残してすべてが流されてしまいましたが、震災前は沢山の樹木に囲まれて四季折々の美しい姿を見せてくれました。この場所は、神様のお庭であり、地域の人の心の故郷でした。今回、皆さんが心を込めて植えてくれた樹が大きく育ち、私たちの子孫がこのお庭で、私たちが経験したような素晴らしい時間を過ごしてくれたらと思います」

写真:大沢 尚芳(釜石虎舞)、コデラケイ(鎮守の森)