笑顔を運ぶ「乗りもの」
あなたのまちづくり

カラフルな福祉車両が発信する未来へのメッセージ


日本財団の福祉車両は、2013年度申請分から新しいデザインが導入されることになった。デザインを担当したのは世界的アパレルメーカーのユナイテッド カラーズ オブ ベネトン。異色の顔合わせは、日本の福祉環境の向上という福祉車両配備の目的をできるだけ多くの人に伝えたいという、若いスタッフの共感から実現した。

2013.05.27

若手担当者の熱意が生んだ異色のコラボレーション

2013年4月26日、日本財団ビル1階において、2013年度申請分から導入される新しい福祉車両のデザインが初めて公開された。新車両のシェアマークは“七色”。これまでとは全く違うイメージに、会場に集まった約50人の報道関係者から驚きの声が漏れた。

白い車体に緑のシェアマークの福祉車両は、長年親しまれてきたシンボル的な存在でもある。それが、なぜ大幅なデザイン変更が実行されたのか。「福祉を身近なものに感じてほしい」という思いで、プロジェクトを進めてきたベネトン ジャパン、日本財団双方の若手担当者に話を聞いた。

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日本財団側広報グループの宇田川貴康は2012年5月ごろ、初めてベネトン側に協力を打診した。
「日本財団の福祉車両は累計3万台を超え、町で見かけることが多くなりました。そこで、これからは配備先の団体で活用してもらうだけでなく、道路を走るだけでも何か社会にプラスになるアピールができるのではないかと考えたのです。ベネトンはメッセージ性の高いビジュアルの力を通じた世界的な社会課題に対する活動で実績のある会社です。協力してもらえたらうれしいと、全く面識もないまま、代表番号を調べて連絡してみたんです」

宇田川からの連絡を受けたのはベネトン ジャパン・コミュニケーション本部の井上宏臣さん。
「当社には、社会活動や福祉問題などで出資してほしいというオファーが数多くあります。今回も『寄付を〜』というような話なら断ろうと思っていました。しかし、話を聞いてみて日本財団が社会問題の解決に取り組む姿勢や、福祉車両のデザインで若者の意識を変えたいというアイディアに共感しました。ベネトングループには社会的な問題に関する広告などを担当するコミュニケーション リサーチ センター『ファブリカ』というチームがあり、デザインを無償で提供することを決めました」

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「福祉の現場で働く人がいる」ことを伝える車に

ベネトングループでは過去にエイズや人種差別の問題などで、世界的なキャンペーンを行ってきたが、日本法人のベネトン ジャパンが主体的に国内向けの社会貢献活動の一環としてデザインを提供するのはこれが初めてだという。 「ベネトングループのリソースを活用して社会問題の解決のお手伝いができるということで、イタリアの本社も、ファブリカのクリエイターたちも、関心を持って取り組んでくれました。こうして新しいデザインを発表できたこともうれしいですが、ベネトン ジャパンとして初めての国内向け社会貢献プロジェクトを日本財団と一緒にできたことが良い経験になったと思います」と井上さん。

一方の日本財団側でも宇田川ら若手スタッフは、今回の取り組みは、福祉車両について改めて考えるきっかけになったという。
「福祉車両配備は歴史のある事業で、財団内では大まかな共通認識のようなものがあります。しかし、ベネトンジャパンに事業の意義を説明する際に、きちんと言語化する必要に迫られ、この事業の背景を見直すことができました。3万台も走っているのだから幅広く認知されているだろうと考えていたのが、実際には活動内容までは理解されていないことにも気づきました。そして、『福祉の現場で働く人がいる』ということを幅広く知ってもらうことこそが、今回のデザイン変更での最大の目的となりました。ここまでの取り組みで、広報としての課題もたくさん発見できたと思います」と宇田川も振り返る。

ベネトンとのコラボレーションによる新デザインの福祉車両は、2013年6月17日に助成申請受付が始まる。

井上さんをはじめ、ベネトン ジャパンのスタッフは、「実際に使う人々に喜んでもらいたいのは当然ですが、福祉車両を知らない人が街で見かけたときに『あの華やかな車は何だろう?』と興味を持って調べてくれたらうれしいですね」と新デザインが街を駆ける日を楽しみにしているという。

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撮影:コデラケイ
特集イメージ写真:大沢尚芳