南コーカサス安全保障会議

グルジア

写真:南コーカサス安全保障会議の様子

 

私は、この度はじめて貴国グルジアを訪れる機会を得ました。グルジアは、サーカシヴィリ大統領の指導により、民主主義が目覚しく進展し、経済成長も目を見張るものがあります。

いうまでもなく、2003年の11月、ローズ革命は、貴国の名を世界中に馳せることとなりました。そして、日本とグルジアとの友好関係は、大統領閣下が去る3月に日本を訪問されて以来、新たな展開を始めております。

ここで私が誇りに思いますのは、私の関係いたします笹川平和財団は、それ以前から貴国との友好的な関係を構築していたことであります。

笹川平和財団では、アルメニア・アゼルバイジャン・グルジアの南コーカサス3カ国において、各国の政策立案能力を向上させるため、3カ国の連携の場を作り、政策に関する情報の共有を進めてまいりました。

その中でも特に、グルジア戦略問題財団との友好的なパートナーシップを通じて、我々はグルジアと日本における人的交流プログラムに重点を置いてまいりました。

東西冷戦終結後、国家間の力関係は大きな変化を遂げております。20世紀最後の10年間においては、世界中の大多数の人が安定と繁栄の続く世の中に楽観的な見方をしていました。

しかし、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロの惨劇は、グローバル化が急速に進んだ国際社会に新しい緊張感を生み出しました。と同時に、中国やインド、そしてロシアの急速な経済発展は、ユーラシア大陸における新しい国際関係の構築を必要性なものといたしました。

南コーカサス、特にグルジアは政治的、地政学的かつ戦略的なダイナミズムの局面を迎えています。この地位の安全保障やエネルギー資源の流通経路の確保は、ロシア、中国、インド、EU諸国の注目を集めています。

ともすると、大国の思惑に振り回され、隣国との友好関係が分断される危機さえあり得るでしょう。南コーカサス3国の協力は、そういった渦中においても長期的な信頼醸成に自助努力をおしまず、継続していく精神をもち続けることが重要です。

ASEANのように経済的、社会的な協力関係を構築することも、有効な手法と考えられます。

南コーカサス3カ国を取り巻く情勢を考えますと、私どもが、グルジア国際戦略研究財団と進めてきました人材の育成とネットワーク作りは、3カ国の信頼醸成におおいに貢献できたと考えます。

特に、2006年1月にこのグルジア国際戦略研究財団が開催した国際会議では、南コーカサス、アジア、ヨーロッパや米国、各界のリーダー、政策決定者、有識者が、その地域や世界の平和と繁栄に向けて、目的を共有し、建設的な意見交換が闊達に行われる、ヨーロッパとアジアに跨るこの地域の政治的安定に寄与したことと思います。

これから2日間の会議を通じて、皆様の知恵と知識の集合体が導き出すものは、貴国や貴国を取り巻く国々、ひいては世界における未来を、いかようにも描き出す原動力となることを私は確信しております。

私はここに集ったグルジアと南コーカサスの友人達が、平和と安定した国家を持続するために、互いに協力関係を構築することを確信しております。

この会議がそのための第一歩としての役割を担うことと存じます。また南コーカサスをはじめ、全世界と協調関係を築くための、方向性を示す足がかりとして、そのお手伝いをしてまいりたいと思います。