海洋基本法制定記念大会

日本・東京

写真:スピーチする日本財団の笹川陽平会長

 

私の勤めている日本財団は、海に関する仕事を重要なテーマの一つとしています。特にマラッカ・シンガポール海峡は日本の生命線と言われるように、重要な位置にあります。

この海峡の管理、保全、航行安全のために、私たちは三十数年にわたり、黙々と活動してきた組織です。この点からも、海に対して関心を持つ組織の一つといえます。

私たちは日本の方々に、海の大切さを具体的に理解してもらうために戦略的に活動してきました。コンセプトは「海に守られた日本から海を守る日本へ」です。

海を取り巻く問題の一つにEEZ(排他的経済水域)における中国の石油掘削ということもあります。マラッカ・シンガポール海峡における海賊対策、北朝鮮の工作船の展示。この時は170万人の方にご覧にいただきました。

また沖ノ鳥島問題でも多くの方々のご尽力を賜り、国民の目をいかに海洋問題に向けさせるかということについて取り組んできました。

ここに秋山会長率いる海洋政策研究財団という、世界の海洋問題について専門に扱う日本唯一の組織があります。シンクタンクといわれる組織は世界中にありますが、その多くは研究成果を文書化し、本棚に並んで終わるというケースが多いわけです。

海洋政策研究財団はシンクタンク、アンド、ドゥタンクとして、研究と行動を一緒にしようということを第一に考えておられます。この度、研究委員会の中心として活動されたことに、心より感謝申し上げます。

今回の法制定は政官民、民の中には学者、一般の海に関心を持つ多くの方、そしてステークホルダーが一致団結し、最終的には武見前参議院議員、石破防衛大臣、若手というと失礼ですが小野寺(五典)代議士、民主党、そして公明党の冬柴国土交通大臣兼海洋大臣のご理解をいただいて、縦割行政の中で画期的な、横断的な法律となりました。

このことは憲政史上初めての例だと思いますし、このような形の法律作成というのが、今後の一つのモデルになりはしないかということは、石破先生がご指摘されたとおりです。紆余曲折の中で総理大臣が本部長になるしっかりとした体制ができたということは、大変おめでたいことです。

先ほど控え室で、冬柴大臣に早速陳情いたしました。来年の7月20日の「海の日」には総理大臣自らが官邸において「海の日」に関する声明を発していただきたいとお願いをしたところ、冬柴大臣より「やりましょう」とおっしゃっていただきました。是非よろしくお願いします。

「海の日」が遊びの日になってしまったというのは本末転倒でございます。私も「海の日」制定に汗をかいた一人ですが、ようやく「海の恩恵を日本人が考える」、そのような日になりそうです。

先ほど冬柴先生より「海洋国家として日本がリーダーシップを取れる領域」というご指摘がありました。私もまさしくそうありたいと思います。例えば、マラッカ・シンガポール海峡には、ここ数年で40億トンという大量の物資が流通します。いつ事故があってもおかしくないのが現状です。

17世紀以来、グロティウスという国際海洋法学者が唱えた「海は無限である、海の利用はタダである」という論理が今なお世界中で通用しています。

しかしながら、今や海は有限です。従いまして、海洋を利用するもの、たとえ海運会社においても、CSR・企業の社会的責任の観点から、その保全と安全航行のために応分の責任を持つ必要があると訴え続けて参りました。

国連海洋法条約43条に「沿岸国と利用国との間で協議する」と規定されていますが、この条文に民間は入っておりません。

しかし先般のIMOのシンガポール会議では、国連海洋法条約43条を飛び越えて、沿岸国と利用国、その上でステークホルダー、海運会社、あるいは石油を輸出する国が、応分の負担をしてこの海域を保全するメカニズムを作り上げようと方向付けられました。

まさしく今、日本のイニシアティブで17世紀以来の海洋に対する考え方が革命的に変わろうとしています。私は日本国が真の海洋国家として世界で指導的役割を発揮できる条件が整ってきたのではないかと思っております。

ご参会の皆様方、一人ひとりの情熱がここに法律として制定され、しかも内閣総理大臣が本部長を務めてくださる。これ以上の形はないと思います。

ご参会の皆様方に心から御礼申し上げますと同時に、どうか関係者の皆様方には仏ができたわけでございまから、いかに新たな魂を入れていただくかをお願いを申し上げます。