第26回世界保健機関(WHO)笹川健康賞授賞式

スイス・ジュネーブ

笹川健康賞25周年という四半世紀の記念すべき節目に、こうして授賞式でご挨拶できることを嬉しく思います。

今回の豚インフルエンザ問題については、DGのリーダーシップのもと、WHOのスタッフの方々によって迅速な対応がなされたことに敬意を表します。またこのような混乱の中、この授賞式が滞りなく開催されるよう調整にご尽力いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げます。

この賞は、「すべての人に健康を」というWHOの指針を体現すべく、1984年に設立されました。

健康であることは、食べること、教育を受けることと同じく、基本的人権のひとつです。

何よりもまず人は健康でなければ、食べること、教育を受ける機会も喜びも、大きく減ってしまいます。

すべての人に向けて健康を害する根本的な原因を解消していくプライマリー・ヘルスケアは、多くの人に影響する重要な分野です。

そのプライマリー・ヘルスケアの分野において活躍された人物・団体の活動を称えるこの笹川健康賞は、今年はバーレーン王国保健省のアマル・アブドルラフマン・アル・ジョウデル医師に贈られます。

彼女は1985年に東リファ・ヘルスセンターで家庭医としてキャリアを始められ、保健教育局へ活躍の場を移されました。彼女のキャリアは、笹川健康賞とほぼ同じ期間の歴史を刻んできています。

彼女の長年に渡る活動の中で、特に称賛されるべき理由がふたつあると私は思います。

まずひとつめに、正しい情報伝達の重要性に着目されたことです。
ラジオやテレビプログラムを通じて、保健に係る正しい知識を広めることに尽力されてきました。病気に関する正しい知識を広めることは、病気予防、早期発見の上で不可欠です。そのためにはメディアの協力は欠かせません。

私はWHOのハンセン病制圧大使を務めていますが、ハンセン病においても同じことがいえます。ハンセン病は病気に対する社会的偏見とそれに基づく厳しい差別が未だに残っていますが、その偏見を解消していく上でも、メディアを通じて病気に関する正しい知識を伝えていくことが有効であると肌で感じています。

情報伝達に加え、彼女の素晴らしい業績のふたつめは、他の省、他のセクターとの協力体制を築かれたことです。保健省という枠にとらわれることなく、保健専門家、自治体、地域のセンター、学校等と協力し、プライマリーヘルスケアの普及に努められました。

社会変革の波を社会全体の隅々にまで届けるためには、先ほども申し上げたメディアをはじめ、NGO、学校、企業など、社会を構成するあらゆるセクターと連携し、うねりを生み出していくことが必要です。

笹川健康賞は、賞金を更なる活動発展のために使っていただくという、賞金の使途を定めたユニークな賞です。アル・ジョウデル医師は本賞金により、遠隔地における保健教育のための教育バスと、体を鍛えるためのボールや運動器具などを運ぶスポーツバスという2種の巡回バスを整備されるという構想をお聞きしています。

この賞が、これからのさらなる活動の発展につながるものであることを祈り、お祝いの言葉とさせていただきます。(了)