第14回フォーラム2000 〜広島・長崎原爆展〜

ヨルダン・アンマン

 ハベル大統領、ファーガソン博士、笹森さん、ご来場のみなさま、このような場でごあいさつさせていただける機会を頂戴し、大変光栄に存じます。

今回、このような展示会をチェコで開催するのは初めてになりますが、広島とチェコ、そしてプラハとの間には実は深い関係があります。広島に落ちた原爆の突風のなか残り、のちに世界遺産となったドームを設計したのはチェコ人の建築家ヤン・レツル氏です。また、毎年世界中のリーダーたちがプラハに集まるこのフォーラム2000が始まったのも、ハベル大統領が広島を訪問したことがきっかけでした。そして、最近、核兵器なき世界に向けての動きが活発になるきっかけとなった場所もこのプラハです。

 昨今、核問題に関する関心は明らかに高まっています。各地で核兵器問題を扱う会議やシンポジウムが開かれ、これまでにない多くの人たちがその動向に関心を寄せています。また、本フォーラムでも先ほどのセッションで核兵器問題について様々な視点、立場から議論を深めていただきました。

 私たちは核兵器について考えるとき、その脅威は外に存在するものだと考えがちです。しかし、私は、その脅威の根本をたどると、私たち人間の心、内側とは切り離せないものだと感じています。核技術を含め科学技術は、進歩と発展を目指す人間が創り出したものであり、実際に多くの人々の生活を豊かにしてきました。しかし、同じ人間が創り出したその技術が、私たちの内面の葛藤を反映するかのように、多くの人々に恐怖や苦しみも与えてきたのです。だからこそ、私たちが考えなければならないのは、両刃をもった科学技術とともに生きる私たち人間の心であり、倫理・哲学なのではないでしょうか。

フォーラム2000ではこれまでも、テロや紛争、環境破壊や経済格差などの問題を、政府やNGOのリーダーだけでなく、宗教家や哲学者、文学者や芸術家の方々と語りあってきました。もちろん、問題解決に向け、政策提言を作成し、法的枠組みをつくることも重要です。しかし、このフォーラムでは、その上で、より文化的、精神的なアプローチにより、人間の内側にも目を向け、共通の倫理・価値観、モラル・ミニマムを模索することに意義を見出し、多くの対話を重ねてきました。

この展示会が、モラル・ミニマムを模索するうえで一つの着想を得る機会になることを願っています。