第15回フォーラム2000 〜民主主義と法〜

チェコ共和国・プラハ

パヴェル氏とともに、私達の社会が直面する構造的かつ根本的な諸問題を対象にした議論の中から希望ある将来を見出そうと、1997年にこのフォーラム2000を立ち上げました。今回で15回目となるこのフォーラムが今日まで続いたのは、ご参加いただいてる皆様、そしてこれまで本フォーラムにご協力いただいた方がの情熱と信念によるものだと確信しています。

世界には経済大国として給食に台頭している一方で、市民社会としての発展が追い付かず、人権弾圧や不正が横行している国があります。また、市民が圧政を倒したものの民主主義や法の支配が確立されていないために、社会混乱による犯罪や不正、暴力などが蔓延している国もあります。しかしこのような状況をどうにか打開し自らの意思に基づく社会を形成しようと、それぞれ国民は民主主義や法の支配の確立に向け歩みだそうとしています。

このように、市民社会の実現を目指して奮闘している市民が民主主義と法の支配に基づいた国をどのように作っていくのかということについて、みなさんの経験や知識をもってこの会議のなかで深化させていっていただきたいと思います。

またその一方で、民主主義と用の支配の制度が確立し、成熟した市民社会が形成されたからといって、そこに住む市民はその状況に安堵していてよいのでしょうか。法の支配が確固たるものになると、市民は法律に守られ、一見するとその中で自由を享受しているように思われます。しかしながら、高度に細分化された法律が市民の後見人となり、市民社会の確立のための手段である法律が目的化し、逆に市民社会の健全な発展を妨げてしまう可能性もあります。このような社会では寛容、自主性、多様性といった市民社会の健全な発展に必要な要素が危うくなってしまいます。これをトクヴィルは「穏やかで平和な隷属状態」と表現したのかもしれません。

その意味で、フォーラム2000のように政治、科学、宗教など様々な分野の指導者が集まるこの会議で民主主義と法の支配について考察するということは、非常に重要なことです。フォーラム2000は直接的な対処療法を提示するのではなく、諸問題の根源を探る事を特徴として継続してきました。今年の会議も民主主義と法の支配という大きなテーマの中で健全な市民社会の在り方について深く掘り下げて考え、自らの意思による社会形成を目指している市民、そして成熟した社会で「穏やかで平和な隷属状態」に陥る危険性のある市民にとって有益な議論が展開されることを切に期待しています。