中国人民解放軍来日歓迎会

日本・東京

何信崇上級大佐を団長とした2011年度人民解放軍の研修来日を心から歓迎申し上げます。来年2月には自衛隊が訪中をすることになっております。このプロジェクトは両国の軍人の皆様方に、単に軍事上のことだけではなく相手国社会、そして人々を良く知っていただくためのプログラムです。

デリケートな軍の代表団を民間が主導して交流するという、いわゆるトラック2までいくかどうか分かりませんが、1.5くらいでしょうか。両国の政府間の軍事交流がストップしている時も我々のこのプログラムは継続して行ってきたということもあり、本事業は単に日本の防衛当局や中国の人民解放軍のみならず、世界的に高い評価を受けております。

自衛隊の皆様が中国に行かれると、自分たちがイメージしていた、あるいはテレビで見ていたのと大いに異なっていたということを口々に仰います。今回来日された20人の方々も、軍事施設の他に農業や生産業の現場を訪問したり様々な人と接したりすることで、恐らく想像していた日本とは大きな相違が出てくるのではないかと思います。

ところで、本事業は民間が入ることで柔軟なプログラムが組めるということもあり、両国政府から高い評価を受けているということは申し上げたとおりです。しかし、「果たしてそれでいいのだろうか」と私は常に疑問に思っております。もちろん私たちがやるべきことをやるのは当然と致しましても、民間だけに頼っていて本当にいいのだろうかということは甚だ疑問に思うところであります。

皆様ご承知のように、ドイツは旧ソ連と戦い、ソ連に大きな犠牲を強いたわけでございますが、戦後ソ連にとりまして(今はロシアですが)、最も良い二国間関係にあるのはドイツであります。

日本と中国の間には尖閣問題を含め微妙な問題がたくさん存在します。しかしこれは何も日本と中国に限ったことではありません。世界中どこでも隣国同士というものは常に良好な関係にあるわけではなく、あえて申せば緊張状態の長い国も数多く存在します。

日本にとりまして今や中国は輸出、輸入とも世界一の貿易相手国です。そのような関係にありながら、問題が起こった場合にはお互いが単に批判をし合うだけというのは隣国同士のお付き合いとして私は甚だ具合が悪いのではないかと思います。そして問題が惹起すると両国間で非難合戦を繰り広げ、反日・反中感情を煽ることは、率直に申して残念至極というより情けない状態だと言わざるを得ません。

「一衣帯水」の経済状況にありながら、国家指導者レベル、政治家、あるいは実業家も含めてその交流は儀礼的なものから一歩も出ていないと、私は率直に申し上げたいと思います。

世界の歴史をみれば偶発的な事故、あるいは事件が大きな問題に発展してきたことはいうまでもありません。私たちにもそういう問題が存在することが分かっているわけでございますから、やはり予防的な処置と申しましょうか、両国の首脳並びに政治家リーダーたちが率直に意見を本音で語るという非公式な場を数多く作っていくことがこれからの日中関係において最も重要なことだと、私は100回近い訪中を通じて実感しております。

日本は日米安全保障条約に守られていますが、それに満足してあぐらをかいていてはいけません。隣国である中国との間には更に率直な意見交換を行い、お互いの本音がどこにあるのか、どこに違いがあるのかという距離をきちんと測っておくことが大事です。それは先ほどのドイツの話ではありませんが、ドイツはNATOの中心国でありながら、体制の違うロシアと十分に話し合いの場を設け、信頼関係を確立しています。なぜ私たち日本人が、日本と中国との間にそのような信頼関係を築けないのか。そしてどこにお互いの見方、考え方の相違があるのかを相互に理解しておくことが大変重要なことです。日中両国が率直な議論を重ね、お互いの違いを良く理解することによって共に発展し、アジアはもちろんのこと、世界の平和に貢献出来る二国間関係を構築することが可能であると私は思います。

何団長をはじめ、御一行にはどうぞ11日間、あらゆる疑問点について日本人に質問していただき、少しでも等身大の日本を理解いただければと思います。自衛隊や企業等の訪問場所においては心から歓迎の準備をしてくれています。どうぞ充実した旅をしていただきたいと願うと同時に、来年2月の自衛隊の訪中につきましても皆様方からの温かいお迎えを心から期待致します。

何団長以下、皆様大変率直にお話が出来る方々です。既に中国人民解放軍の中堅として軍を支えておられ、将来最高責任者になる方々もたくさんいらっしゃると思います。自衛隊やメディア関係者の皆様方におかれましては、短い時間ではございますが、貴重な機会を大いに有効活用していただき、少しでも相互理解を深め、日中双方が体制を乗り越えて素晴らしい二国間関係を築くための一助としてご協力いただければ幸いです。