第28回世界保健機関(WHO)笹川健康賞授賞式

スイス・ジュネーブ

WHOが掲げる「すべての人に健康を」という大義に賛同して設立された笹川健康賞も今年で28回目を迎えます。

この賞は、プライマリ・ヘルスケアの分野においてユニーク且つ革新的な活動を展開し、人々の健康増進に大きく貢献している方々を顕彰することで今後のさらなる活動の発展を奨励することを目的としています。

今回受賞されたインドネシアのSyamsi Dhuha財団は、ループス(systemic lupus erythematosus)と弱視によって困難な暮らしを余儀なくされている方々のQOL(quality of life)向上のために活動されています。同財団のDian Syarief会長は、1999年にご自身がループスに罹り、視覚に障害をもつことになりました。しかし、ご自身の抱える困難を乗り越え、自分と同じように病気による苦しみや困難の中に生きる人々の助けになろうと2003年に財団の活動を始めたのです。

ループスはまだその原因が分かっていない病気です。そのため、医学的な研究が必要とされていますが、同財団はこの分野の研究プログラムや医療従事者への訓練プログラムの充実のために挑戦しています。また、弱視の方々に対するガイダンスや、本人にどういったサポートが必要かといった教育を家族や周囲の人々に対して行っているほか、「世界視覚の日」を制定するなど啓発活動に取り組んでいます。これらの取り組みを通して、人々がたとえ病気にかかったり、体の一部の機能が低下したとしても、人生をより豊かに送れるよう尽力されているのです。

私がつとめる日本財団でも、病気を患った方や障害のある方々のQOL向上のために少しでもお役に立てるよう取り組んできました。たとえば、視覚障害者の情報アクセスを支援する電子録音図書などICT(情報コミュニケーション技術)の活用、聴覚障害者のための手話辞書の作成、手や足の一部を失ってしまった方々への義手義足の提供などです。また、社会参加の機会が保障されるよう、教育や就労の支援にも力を入れています。そして、このような取り組みを通して、「本が聴けるようになった」「歩けるようになった」「働けるようになった」「生活が向上した」といった本人たちの喜びの声を聞けることが、私にとって何よりの励みであり、活動を続ける動機になっています。

Syamsi Dhuha財団がループスと弱視に苦しむ人々のQOL向上のための歩みを始められて約10年が経ちます。医療面における革新的なアプローチと、患者の立場に立った継続的な取り組み、そして広くパートナーを巻き込みながら社会の理解を広げていく挑戦が、一人一人のかけがえのない人生をより豊かなものにすると信じています。笹川健康賞の受賞がそういった崇高なる挑戦の後押しとなることを願っています。そして、本日世界中から集まった医療界の第一人者の皆様とともに、「すべての人に健康を」、そして、たとえ病気を患っていたり障害があったとしても、すべての人にQOLを保証できる世界を築いていけるよう力を合わせていきましょう。