国際ハンセン病サミット

タイ・バンコク

ソラウォン・ティアントンタイ保健副大臣、各国大臣の皆さま、ご来場の皆様、おはようございます。本日は世界各国から共通の目的のために、皆さんがこの場にお集りくださったことを心より嬉しく思います。

はじめに、国際ハンセン病サミットを開催するにあたり、多大なるご尽力をくださったソラウォン・ティアントン保健副大臣、タイ保健省の皆さまに深く感謝申し上げます。また、サムリ・プリアンバンチャンWHO東南アジア地域事務局長の長年にわたる揺るぎないコミットメントにより、本サミットを共に開催をできたことに心より御礼申し上げます。

私たちのハンセン病との闘いは決して容易なものではありませんでした。

しかし、ここ30年の間、医療面においては劇的な進歩を遂げてきました。1980年代にMDTという効果的な治療方法が開発されてからハンセン病は治る病気となりました。そして、WHOが1991年に「患者登録数が人口1万人当たり1人未満となること」という明確な目標を掲げて以来、各国は、目標達成のため、政府やNGOを含む世界中の様々なステークホルダーと力を合わせ、病気の制圧に向けて尽力されました。その結果、ここ20年間で約1600万人の患者が病気を治癒するという驚異的な成果をもたらしました。また、ハンセン病が一般の医療サービスに組み入れられたことにより、ハンセン病治療のサービスそのものも拡大されました。

WHOが掲げた制圧目標に向かって、各国は多大な努力を重ね、制圧目標を達成してきたことは明らかです。そのため、一国一国が目標を達成する度に、私も含めて、多くのステークホルダーが達成感や満足感を味わってきました。

しかし、そのことで、私たちは安心感をおぼえ、本来の目標である“Leprosy Free World” 、つまりハンセン病とそれに纏わるスティグマや差別に苦しむ人がいない世界をつくる、というゴールを見失いかけてしまったのかもしれません。WHOが掲げた制圧目標の達成は、私たちにとって、ゴールではなく、あくまでもひとつのマイルストーンに過ぎないのです。

今、私たちは、制圧達成前よりもさらに困難な状況に直面しています。ハンセン病患者の蔓延地域は、大都市スラム街や少数民族地域、国境付近などリーチしにくい場所にあることが多く、また広域にわたって患者が散逸しています。それに制圧目標を掲げていた頃と比べると、各国政府におけるリソースは確実に減ってきているのが現状です。

去る5月にジュネーブで開催された世界保健会議で私がお会いした各国の保健大臣の中には、制圧目標を達成したことで関係者の気が緩みがちになり、これまで以上に厳しい条件の中で成果を出すことの難しさをお話しされている方もいました。

それを象徴するように、ここ数年、ハンセン病患者の減少は横ばい傾向にあり、国によっては新規患者が増えているところもあります。

私は、世界各国を訪れていますが、確かに、蔓延地域や大都市スラム、国境付近など今までの方法ではカバーしにくい難しい地域があると感じました。そして、できるだけ早くこうした地域での活動をはじめる必要があると思いました。なぜなら、対応が遅れることにより、早期発見・早期治療も遅れ、身体に障害を生じる患者が増えてしまうからです。そして、その障害はスティグマや差別を生み出す大きな要因の一つとなるのです。

こうした現状の深刻さについて各国保健大臣やプリアンバンチャン氏と意見交換をしたところ、まずは関係者が問題をしっかりと認識すること、そして、具体的な対応策について議論し、行動につなげていく必要性があるとのことから本サミットを開催するに至りました。

本サミットは、各国政府が本気で“Leprosy Free World”を目指すという強い意志を確認し、それに対するポリティカル・コミットメントをバンコク・デクラレーションの採択を通して表明する大変重要な機会になるでしょう。

そして、各国のポリティカル・コミットメントを推し進めるためにも、私たち日本財団はもちろん、全てのステークホルダーが決意を新たにし、それぞれの役割をしっかりと果たしていかなくてはなりません。そして、知識、経験、専門的技術、ネットワーク、資金など、自分たちが持つリソースを持ち寄って、できる限りの協力を互いにしていこうではありませんか。

 私たち日本財団は、今後、5年間で計2000万ドルの支援を実施することを決めました。

この日本財団のコミットメントは、これまでプリアンバンチャン氏が中心となって進めてこられたWHOでのグローバル・レプロシー・プログラムを継続し、一層強化すること、高い志を持って取り組むステークホルダーの活動を充実させること、さらには、本サミットで出てくるであろう重要な課題に迅速に対応することを目指すものです。

ハンセン病との闘いはまだ終わっていません。

私は“Leprosy Free World”の実現を目指し、生涯を捧げる覚悟です。

各国政府、そしてそれを支えるすべてのステークホルダーが“Leprosy Free World”という共通の目的に向かって想いを一つにし、邁進していくことを期待します。共に手を携え、行動を起こしましょう。

ご清聴ありがとうございました。