第3回福島国際専門家会議「放射線と健康リスクを超えて~復興とレジリエンスに向けて~」

日本・福島

はじめに、本日このシンポジウムにご出席の皆さまに心より感謝を申し上げますとともに、国内外から遠路遥々、再び福島にお越しくださった皆さまに深く歓迎の意を表します。

また、福島県立医科大学の先生方やスタッフの皆さまには、本会議の開催にあたり、共催のご協力を賜り、誠にありがとうございます。

この第3回福島国際専門家会議には、放射線と健康リスクを超えて、福島の復興とレジリエンスについて議論するという共通の目的のために、国際機関や政府機関、研究機関、地域の公衆衛生や医療サービスを行っている医療機関の代表の方々にお集まりいただいております。

2011年3月11日、東日本地域は前例のない大地震と津波に襲われました。さらに、福島第一原子力発電所での事故が引き起こされ、福島では、15万人以上という多くの人々がこの地を離れることを余儀なくされました。当時、放出された放射線物質による健康リスクに関して、人々は強い懸念を抱いていました。不安を煽るようなメディアやインターネットの情報により、社会に混乱が起こりました。

このような混乱した時期に、日本財団と笹川記念保健協力財団は、チェルノブイリ原発事故での人道支援活動にご協力をいただいた放射線と健康リスク分野の専門家をはじめ、世界各地の専門家の方々のご協力を得て、福島県立医科大学とともに、第1回福島国際専門家会議を開催しました。短い開催周知期間であったにもかかわらず、国内外から放射線と健康リスク分野の40名以上の専門家の方々が私たちの呼びかけに応えてくださいました。福島県立医科大学のご協力により、第1回会議は成功裡に終わりました。震災からわずか6カ月後という時期でしたが、専門家の方々が集まり、放射線が健康に与える影響について、科学的な根拠に基づいて検討され、会議終了後には、議論の結果と提言が日本政府に提出されました。それらの資料は日英の2カ国語で作成され、誰でもオンラインで自由にアクセスできるようにしました。

第1回会議以来、国内外の多くの方々が活動に携わり、貢献されてこられました。福島県立医科大学は、2013年に第2回専門家会議を開催し、福島の住民の健康を見守るための県民健康調査を続けています。また、福島県は、県民健康調査に関する報告書を定期的に発行しています。さらに、様々な国際機関や放射線の専門家、科学者の方々が福島の現状についての調査、分析を続けています。福島の状況に関する報告書を発行している組織もありますし、福島の復興のために、地域の方々が問題や課題を洗い出す対話の場を設ける活動をしている組織もあります。

このような状況を鑑みて、私たちは、今、多様な活動に携わっている専門家の方々が一堂に会する場を設けることは、時宜を得ているのではないかと感じました。本会議の特徴は、専門家の議論に加えて、原発事故の影響を受けた地域の住民の方や臨床医、保健師の方々に議論に参加していただくパネルを設けたことです。このように地域の方々の生の声を聞くことにより、この原発事故が精神的、心理的な面にどのような影響を及ぼしているかについても、より理解を深めることができるのではないかと思います。

本会議を通じて、国内外の専門家の皆さまが様々な情報を共有、分析し、多角的に福島の現状について議論くださり、その過程を通じて、福島の復興とレジリエンスが確かなものになることを期待しております。今回のシンポジウムでも、議論の結果と提言を日本政府に提出し、それらの資料を日英2カ国語で作成した上で、国内外の人々からオンラインで広くアクセスできるようにします。

この2日間の議論が、有意義で実りあるものとなりますよう、心より願っております。

皆さまが、これからも福島の人々に寄り添いながら、さらなる活動を展開してくださることで、福島の復興とレジリエンスへとつながることを祈念いたします。