パラオ共和国における海上保安能力の強化および環境配慮型ツーリズム推進のための官民国際会議

パラオ・コロール州

まず、先日のサイクロンによって、被害を受け、尊い命を落とされたフィジー国民の皆さまに心よりお悔やみ申し上げます。

本日は、トミー・E・レメンゲサウJr.大統領、ご来賓ならびにご出席の皆さまと共にこの会議に出席できることを光栄に思います。

そして、米国、豪州、日本の各国政府の代表をはじめ、この地域の安全と安定のためにご尽力されている皆さまに敬意を表します。

1990年、民間団体である日本財団は、旅客船「日本丸(にっぽんまる)」を寄贈し、その船は20年以上、ペリリュー島とコロール島を結ぶ役割を果たしました。以来、四半世紀もの間、パラオと日本財団が良好な関係を築いてこられたことを私は大変嬉しく思います。その間、私はずっとこの美しい島や海に魅了されてきました。

しかし、皆さまご承知の通り、太平洋に深刻な危機が迫っています。近年、この海域において、外国漁船による違法(illegal)・無報告(unreported)・無規制(unregulated)漁業が横行し、海洋生物資源に悪影響を与えています。また、洋上における船舶からの廃棄物の不法投棄などの犯罪行為で海洋環境にもダメージが与えられています。このような海に多大な負荷をかける行為は、海との共存をはかる私たちにとって、許されてはなりません。

ミクロネシア3国、つまり、パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国は、その国土より遥かに大きい600万平方キロメートルの広大な領海及び排他的経済水域を有しています。

たとえ3国のリソースを結集させたとしても、この広大な海域を守り次世代へ海を引き継ぐことは困難です。

私は、この課題の大きさや深刻さを考えると、ミクロネシア3国だけでなく、太平洋から多大な恩恵を受けている各国の政府や関係者が一つになって、この太平洋を守る責任があると感じています。

そこで2010年、日本財団と笹川平和財団は、ミクロネシア3国と米国、豪州、日本の各国政府に呼びかけ、ミクロネシア海域における海上保安能力強化のため、一同に会して解決策を議論する共同会議を開催しました。

この官民共同会議の場で共有された課題認識に基づき、日本財団は、ミクロネシア3国の沿岸域を警備する小型パトロール艇や通信設備の配備、それに伴う乗組員の研修など、海上保安能力向上のための支援を行ってきました。

さらに、レメンゲサウ大統領のリーダーシップの下、国民と海の共生を目指しているパラオにこのプロジェクトの拠点になってほしいという思いから、昨年2月にパラオ政府と日本財団は、海上保安・環境保護・エコツーリズムの3つの柱に関する覚書を締結しました。この覚書に基づき、私たちは昨年から新たな取り組みを進めています。

具体的には、パラオの海洋管理能力向上のため、小型パトロール艇に加えて40m級の中型巡視船とその係留施設を配備します。これらの船を効果的かつ持続的に活用していただくため、日本財団は燃料やメンテナンスについても支援を行うとともに、スキルを持った乗組員の育成を行います。海洋管理を実践するためには、多くの人員が必要になるため、海上法令執行庁の庁舎の建設も支援します。

これらの支援を実施するにあたり、パートナーである米国、豪州、日本の各国政府には、共同プロジェクトとして専門性を生かした多分野からの貢献をお願いしたいと思います。

また、パラオを訪れる観光客の数はかつてないスピードで増加しており、環境への負荷が課題になっていると聞いています。私は、海外からの旅行者を受け入れ、観光を推進しつつも、環境に配慮することが重要だと考えています。このパラオの環境を守りながら、観光産業を持続的に発展させていくために、エコツーリズムの推進に関する調査も行っています。パラオには、海洋環境を第一に考えた新たなビジネスモデルを創成するリーダーとして牽引していただきたいと思います。

日本財団と笹川平和財団は、この各国政府や関係者が協力し合う重要な取り組みに、携われることを大変光栄に思っています。そして、このパラオにおける取り組みがモデルケースとなって、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国など太平洋地域の各国における発展にも貢献していただきたいと願っています。本日の会議を通じて、海の未来を守るための新たな連携を作り出していきましょう。