2017年国連海洋会議「オーシャン8表彰・授賞式」

米国・ニューヨーク

栄えあるオーシャンチャンピョン8のひとりとして素晴らしい受賞者の皆さまと名を連ねることができ、大変光栄に思います。この栄誉ある賞は、78歳の私に隠居するのではなく、さらに精進するようにという、皆さまからの鼓舞激励としてありがたくお受けいたします。

私たちが海洋分野の人材育成に取り組み始めたのは1987年に遡ります。30年間にわたり、様々な学際的な人材育成プログラムを通じて、私たちは140カ国、1,236名のフェローを育成してきました。

これらの数字を成果と呼ぶこともできるかもしれません。しかし、私は、これらの数字は私たちが世界中に蒔いた「種」だと考えています。成果という名の「収穫期」が訪れるまで、まだ長い時間を要しますが、卒業したフェローたちが参集し、多様な海洋問題に取り組んだ時こそ、その収穫期となるでしょう。

本日は、その成果の一例を紹介します。私たちは、宇宙開発の分野において、火星の表面の詳細を把握しています。しかし、地球の表面に関しては、ほとんどわかっていません。地球の70パーセントは水です。100年ほど前から研究の努力がされているにも関わらず、まだ全体のわずか15パーセントしか把握できていません。

海底地形を解読することは、安全航行のみならず、気候変動の予測や生物多様性や水産資源のモニタリングの精度を高めるのに重要な役割を担っています。したがって、海底地形を明らかにすることは、ユネスコ政府間海洋学委員会(The Intergovernmental Oceanographic Commission of UNESCO : IOC-UNESCO)がこれから推進しようとしているアジェンダ、「持続可能な開発のための海洋科学の国際10年」(International Decade of Ocean Science for Sustainable Development) へ貢献するだけでなく、持続可能な開発目標14(the Sustainable Development Goals : SDGs14)※を推進するうえでも不可欠なのです。

これらの重要な利益のために、日本財団は、2030年までに世界の海底を100パーセント解明することを目的に大洋水深総図(General Bathymetric Chart of the Oceans : GEBCO)指導委員会と協同します。

日本財団は、2004年よりGEBCOと共同で奨学金事業を開始し、ニューハンプシャー大学において、海底地形図や海洋学を学ぶ若き研究者を育ててまいりました。そこで育ったフェローのアルムナイや育成に携わってくださっている関係者の方々が中心となってSeabed 2030プロジェクトが起案されました。私は、これを数十年前に私たちが世界に蒔いてきた人材の種の芽吹きとして歓迎しています。

しかし、この芽を収穫段階まで成長させるためには、より多くの方々の支援が必要です。ですから、ここにご来場の沿岸諸国、国際組織、国際機関、産業界などのご関係者の皆さまのお力添えをいただきたいと思います。2030年までに世界の海底地形を100パーセント解明するという、非常に大きな目標を実現するため共に協力していこうではありませんか。

※持続可能な開発目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する(SDG : Conserve and sustainably use the oceans and marine resources for sustainable development)