プロジェクトニュース

[ 2009/05/27]

”homeless, not hopeless”
ホームレス、だけど希望はあります。
~ビッグイシュー「人生挽回」ストーリー~


【はじめに】
“大切な命”をテーマにしている夢の貯金箱は、 “人生をあきらめず、再び輝く命”を一人でも多くの方が実感出来る世の中のために、ホームレスの人々が再び社会に復帰できるための活動を推進するNPO法人ビッグイシュー基金に賛同し、支援を行っています。
この「“homeless, not hopeless" ホームレス、だけど希望はあります。」は、様々なビッグイシュー基金の活動の一年間の連載報告で、毎回魅力的なホームレスの方ひとりにスポットを当てて行きます。どうぞご期待ください!

【第一章】貯金プロジェクトと渋谷のプロペラさん

念願のアパート入居!

くつろぐときの定位置は、、、
くつろぐときの定位置は、、、

 路上生活はどれくらい?と尋ねると「うーん、おおよそ10年かな。毎日生きるのに必死だったからもうはっきりと覚えてないよ」と言う下谷芳男さんは、住所が路上では口座を開設できないので、ビッグイシュー基金の貯金プログラムで毎日少しずつアパートに入るための貯金を続け、2008年12月に念願のアパート入居を果たしました。


ビッグイシュー「夢貯金」通帳
ビッグイシュー「夢貯金」通帳

 「なかなかたまらなくて、スタッフに小言をいわれ、いやになることもあった」と本音をポロリ。雑誌『ビッグイシュー日本版』の読者で自立を目指す人を応援したいというアパートのオーナーのご好意とビッグイシュー基金の生活自立応援サポートで入居が可能になりました。
 「今、最高です!」と満面の笑顔になる下谷さん。「心配をせずに安心して朝までぐっすり眠れるのが何よりも嬉しい」と言います。野宿をしているときは何度も有り金全部を盗まれたそうです。今のアパートは2年の期限つきなので、次のアパート入居のための貯金も再びはじめました。自分の貯金通帳も作ったのですが、以前、通帳もキャッシュカードも盗まれたこともある下谷さん、アパートのお金だけはビッグイシュー基金の口座にあずけることにしています。


トレードマークはプロペラつき帽子

手作りのプロペラ帽第??代目
手作りのプロペラ帽第??代目

 いつもプロペラつきの帽子をかぶっていることから、ビッグイシューのお客さんやボランティアの人たちからは「プロペラさん」と親しみを込めて呼ばれる下谷さんは、2006年5月からビッグイシューの販売をしています。日雇いの仕事でひざを痛めてしまい、仕事が出来なくなり橋の上に座り込んでいたところを、ビッグイシューのスタッフから声をかけられたのが始まり。「雑誌販売なんてできないと断ったんだけど、翌日は二人できてね。他にすることもなかったし、お金も底をついてたからやってみようかと思ったんです」
 トレードマークの帽子は「はじめのは高田馬場のリサイクルセンターで見かけて、10円だったから、これいいや!って思って買った」。初代プロペラ帽は何度も洗って乾燥機にかけているうちにプロペラが折れてしまったそうで、以来、プロペラと部品を秋葉原まで買出しにゆき、春夏用、冬のニットキャップバージョンなど手作りしています。


『今が幸せ、お客さんがいるからね』

渋谷駅南口バスターミナル付近で販売中の下谷さん
渋谷駅南口バスターミナル付近で販売中の下谷さん

 下谷さんは青森出身。中学卒業後板金工の見習いとして働いていた19歳のとき、ブリキの屋根葺きをしていて屋根から滑り落ち、29日間意識不明で生死の境をさまよう大事故を経験しています。一命は取り留めたものの右目の視力を失い、その後はいろんな職を転々として29歳で親戚を頼って上京、瓦屋で働いたけれどそこも続きませんでした。
 20代半ばの頃には両親が、30代半ばの頃には最後の肉親であった姉が無くなり、天涯孤独の身になり誰かを頼ることもできず、ずっと一人でやってきたと言います。
 金属プレスの機械にはさまれて指を2本失ってからは、職人になることもあきらめ、求人欄で建築現場の仕事を探しては各地の現場を転々とし、「そのうちに酷使してきた身体にガタがきて力仕事を1日すると2、3日働けなくなった」と言います。今も片足を引きずるように歩く状態のため、飯場(注1)の仕事が減るとしかたなく日雇いの仕事や古本集めをして1日1日を凌いできました。「朝3時に起きて5時には寄せ場(注2)で並ぶんだ。寝坊すると仕事をもらえなくて食いっぱぐれるから必死よ。雨の日は仕事がないから食いっぱぐれる」。ビッグイシュー販売の仕事は「決して楽ではないけれど、それまでの人生を振り返れば幸せ」と下谷さんは言います。「夏は暑いし冬は寒い。でも炎天下で40キロもある袋詰めのセメントを担いで階段を1日何十回も登らさられたことを思えば楽なもんだ」と笑います。
 一番楽しかったのは10代の怪我をする前で、空手の練習と仕事に明け暮れる毎日を過ごしたそうです。就労応援プログラムを利用して、パソコンとメールの使い方を覚え雑誌のメール販売を始めたり、携帯電話を購入したり、新しいことに常に挑戦しています。夢や、やってみたいことはありますか?と聞くと、「またバイクの免許でもとろうかな。あと、ビッグイシューの販売はお払い箱になるまでつづけます。お客さんがいるからね。19、20歳の女の子も毎回買ってくれるんだよ」と笑顔が返ってきました。

*下谷さんは2009年5月現在、生活保護を一部受けながら販売のお仕事を続けています。

注1:飯場(3食宿泊施設つきの建築現場)
注2:寄せ場(建築業者が日雇い労働者を集めにくる場所。全国各地にあるが、大阪の釜ヶ崎や東京の山谷、横浜の寿町などが有名)

★おまけ★
「路上脱出ガイド(東京23区編)」の配布を行っています!

路上脱出ガイド(東京23区編)
路上脱出ガイドtokyo

政府の発表では東京都のホームレスの方の数は約3000人。5000部を準備しましたが、配布開始(2009年4月20日)からわずか2週間でなくなり、6000部増刷することになりました。
身近にいるホームレスの人たちに渡したいと市民や支援団体の方々からの問い合わせが殺到しているそうです!

【ガイドについてのお問い合わせ先】NPO法人ビッグイシュー基金東京事務所03-6380-5088(火・水のみ)