プロジェクトニュース

[ 2009/07/31]

”homeless, not hopeless”
ホームレス、だけど希望はあります。
~ビッグイシュー「人生挽回」ストーリー~


【はじめに】
“大切な命”をテーマにしている夢の貯金箱は、 “人生をあきらめず、再び輝く命”を一人でも多くの方が実感出来る世の中のために、ホームレスの人々が再び社会に復帰できるための活動を推進するNPO法人ビッグイシュー基金に賛同し、支援を行っています。
この「“homeless, not hopeless" ホームレス、だけど希望はあります。」は、様々なビッグイシュー基金の活動の一年間の連載報告で、毎回魅力的なホームレスの方ひとりにスポットを当てています。今回は第二弾です。

第二章 ビッグイシューの路上販売、夏の戦い

ビッグイシュー焼け

真っ黒な販売者の日焼け跡
右上が販売者のHさん、左がスタッフの腕。この日焼けを、「ビッグイシュー焼け」と呼ぶ人もいるほど

 梅雨が明けたちょうど今の時期(7月中旬)から、肌の色がだんだん褐色になっていく販売者さんが増えていきます。雑誌をPRするために掲げている腕、通行するお客様に向かって挨拶を交わす顔、衣服で守られていない部分は 路上に降り注ぐ太陽の光であっという間に黒くなっていきます。中には火ぶくれを起こしてしまう人もいるほど…。事務所では長袖のワイシャツを用意しその着用や、日焼け止めクリームを常備するなどして、直射日光を避けるように呼びかけています。お客様からも、販売者さんを心配する声など 多く寄せられていますが「売り上げを伸ばして自立するため」「お客様に最高のサービスを」と目標持って頑張る皆さんは、ついつい無理をしてしまいます。
販売者さんの販売環境を少しでも快適にするため、そして真夏の路上販売を乗り切るために、私たちビッグイシュー基金が行なっている取り組みについてご紹介したいと思います


愛情も入ってます、スペシャルドリンク

皮膚がんなどを発症する日焼けも怖いですが、私たちが毎年この時期に一番恐れるのが「熱中症」です。その熱中症予防の取り組みとして毎年行なっているのが「スペシャルドリンク」の作製。このスペシャルドリンク、中身は何が入っているかというと、「レモン果汁、食塩、砂糖」のレシピで作られています。
こちらのドリンクは主にビッグイシューのボランティアさんによって作られ、リサイクルのペットボトルの中に入れ、冷凍庫で凍らせたものを提供しています。毎朝、20本近く用意されていますが、あっという間になくなってしまいます。
このドリンクの最大の特徴は、作る人によって微妙に味が違うこと。分量が少し変わるだけで、甘めタイプ、酸味タイプといろんな味が生まれます。「昨日のドリンクは甘かった」「今日のは酸っぱかった」などと感想を述べつつ、手作りならではの愛情たっぷりなスペシャルドリンク片手に、今日も販売者さんは路上の売り場に向かいます

スペシャルドリンクを作るスタッフ
スタッフがスペシャルドリンクを作製中
暑さ対策でドリンクを飲む販売者
販売場所でドリンクを飲んでいる鈴木さん

 先月、販売者登録したばかりの鈴木さん(写真上)は、事務所最寄りの曙橋駅で販売していますが、こちらも直射日光が当たる日差しの強い売り場。そんな時、カチコチに凍ったスペシャルドリンクがエネルギーをチャージしてくれると話します。これまで料理店のコックさんや、メッキ工場での軽作業、派遣業などを経験し、5年前にアルコール依存症を克服するため函館の更正施設で断酒生活を送ってきました。5年間の入所を終えアルコールを断つことができた鈴木さんは、仕事を求めて先月、上京してきたばかり。住所がないという理由からお仕事はなかなか見つからず、ビッグイシューの事務所に面接にいらっしゃいました。今は、お客様との交流が生きがいと話します。「毎日、お客様と話すのが楽しみで、どんな売り方をしたら喜ばれるか、そんな事ばかり考えてます。自力でアパートに入居することが今の一番の目標ですね」そう話す鈴木さんは、スタッフから受け取ったばかりのオリジナルキャップに合わせて、真っ赤なTシャツを着こなします。


熱中症予防にも一役買うオリジナルキャップ
オリジナルキャップ

 研修期間が終了し、販売者登録している方全員にプレゼントされるのが、真っ赤なキャップにthe big issueの白文字ロゴが入ったオリジナルキャップ。このキャップのビッグイシューのコーポレートカラーである赤が路上で際立ち、これを目印にして買いにいらっしゃるお客様もいらっしゃるそうです。またこのキャップは目印になるだけでなく、直射日光があたる頭も日差しから守ってくれます。メッシュタイプのキャップは夏向きで、熱中症予防に一役かってくれています。


定例サロンで「熱中症予防勉強会」を実施!!

「熱中症予防勉強会」の様子
「熱中症予防勉強会」の様子

 ビッグイシュー基金では毎月1度、販売者さんなどのホームレス状態にある方や市民が気軽に集える場として「定例サロン」を主催しています。
 サロンでは、市民の方と意見交換を行なったり、一緒に食事やスポーツを楽しんだり、販売の仕事や脱路上の為に必要な情報&スキルを講座という形で提供しています。6月の定例サロンでは「熱中症予防勉強会」を実施しました。

なぜ熱中症が起こるのか、体のメカニズムを知り、熱中症の種類やその応急処置、水分補給の重要性などを映像を見ながら説明していきます。熱中症には熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病の4種類あることも知りました。万が一 倒れてしまった場合は、首や脇、足の付け根など大きい血管を冷却すると効果的だそうです。
以前、自分の売り場前で通行人が熱中症で倒れ、救急車で運ばれたのを目撃したこともあるという販売者さんもいて、今回の勉強会でのノウハウを 自分に役立てるだけでなく、路上を行き交う人々の身の上に起きてしまった場合にも活用できる、と丹念にメモをとる姿もみられました。


★おまけ★
世界一カッコイイ、ホームレス写真集

ホームレスの写真集

 ビッグイシューの販売者さんがモデルになった写真集『STREET PEOPLE(ストリートピープル)~路上に生きる85人』(太郎次郎社エディタス)が発売されました。15年間ホームレスの写真を取り続け、ビッグイシュー誌面の写真も担当していた写真家・高松英昭氏の作品です。
写真集の中には、現在販売者登録している方、アパートに入居し自立を果たされた方、大阪や東京などのビッグイシューに関わった多くの販売者が、ちょっとアンバランスなポーズをとって写真の中に佇んでいます。中にはすでに亡くなられた販売者さんもおり、この写真だけが本人の生きた証と言える方もいます。これまでのホームレスのイメージを覆す、路上に生きる普通の“人”がそこにいます。