”homeless, not hopeless”
ホームレス、だけど希望はあります。
~ビッグイシュー「人生挽回」ストーリー~
【はじめに】
“大切な命”をテーマにしている夢の貯金箱は、 “人生をあきらめず、再び輝く命”を一人でも多くの方が実感出来る世の中のために、ホームレスの人々が再び社会に復帰できるための活動を推進するNPO法人ビッグイシュー基金に賛同し、支援を行っています。
この「“homeless, not hopeless" ホームレス、だけど希望はあります。」は、様々なビッグイシュー基金の活動の一年間の連載報告で、毎回魅力的なホームレスの方ひとりにスポットを当てています。今回は第4弾です。
【第四章】心の引き出しを整理、パーソナルコーチングで“希望”取り戻す
希望を取り戻すパーソナルコーチング

右が美馬さん(ホームレスサッカーワールドカップ会場にて)
路上から抜け出し自立するために、十分な食事や家、仕事などの具体的な支援が必要なのはいうまでもありませんが、生きる希望や身近な人との絆、日常の中のふとした楽しみなども、同じように欠かせない要素です。それにもかかわらず、路上での過酷な生活は生きる希望や人とのつながりを奪い、多くのホームレスの人たちは、先の見えない不安や孤独を抱えて生きています。
そのためビッグイシュー基金では、スポーツや音楽活動などのさまざまな活動を通して、人や社会とのつながりを回復し、生きる意欲や希望を取り戻すためのサポートを行っています。今回紹介する“パーソナルコーチング”もそのうちのひとつ。パーソナルコーチングは、“コーチ”と1対1でじっくり会話する時間を定期的にもつことで、自分の過去や不安、希望などを表に出すことにより、未来の目標を自分自身で見つけ、実現していく手助けをするものです。大阪でビッグイシューを販売する美馬 直史(みま なおふみ)さん(46)も、パーソナルコーチングプログラムに参加するひとり。コーチングを通して描かれた美馬さんの希望と、そこに向かう道のりを紹介します。
孤独、不安、そしてビッグイシューとの出会い
地元の徳島にある高校を卒業した後、大学に通うために大阪に出てきましたが、いじめが原因で4年生のときに大学を中退。その後、釣り道具店に9年半正社員として勤めましたが、人員縮小のため突然解雇されてしまいました。その後は、派遣などでいくつかの職場を転々としましたが、自分は本当に必要とされているのか、いつも不安だったといいます。孤独を紛らわすため、ギャンブルに依存したこともありました。安定した仕事に就きたいと思っても、ぎりぎりの生活の中では最初の給料日までの生活費を貯蓄することも難しく、結局、建築現場の飯場で4年間働きました。飯場では、仕事がないときも宿代や食費が引かれたため、手元にはほとんど残らなかったといいます。
美馬さんがビッグイシューの販売を始めたのは、そんな飯場での生活に限界を感じて路上にでたときに、ビッグイシューのスタッフと出会ったことがきっかけです。現在は、大阪の梅田でもっとも人の多い、駅前の交差点で販売をしている美馬さん。2007年の秋には、自力でアパートを借り、畳の上にあがることもできました。“美馬通信”という手作りの冊子をお客さんにプレゼントしたり、オリジナルの販売用ポスターをつくったりするなど、誰もが認めるまじめで礼儀正しい販売者さんです。

美馬さんがつくるオリジナルのポスター
コーチングで心の引き出しを整理
そんな美馬さんがライフコーチングを始めたのは、今年の2月のことでした。販売を開始してからすでに3年目。応援してくれているお客さんのためにも、そろそろ次のステップに進まなければと思いながら、なかなか踏み出す勇気をもてずにいた頃でした。それを後押ししてくれたのがコーチングです。最初にコーチングを受けたとき、「詰め込んだまま開かなくなっていた心の引出しを整理して、どれを最初に出すかわかった感じがした」といいます。「今までは今の状況がずるずる続くような気がしていて、変わりたいと思っても行動に移せずにいたけど、このままではだめだという思いが強まりました」。その決意が、ずっと踏み出せなかった一歩を後押ししました。
夢はパソコンを使った仕事につくこと

パソコンの練習中
まず彼が目標にしたのは、パソコン検定の4級をとること。パソコンを使った仕事をするのが美馬さんの夢でもあります。苦手なエクセルを克服するため、ビッグイシュー販売の仕事の合間をぬって、ボランティアの協力を得て個別のパソコンレッスンも行いました。そして8月29日、ついに受験の日を迎えました。緊張のためタイピングの実技では指が思うように動かなかったそうですが、結果は見事に合格。現在は、3級合格を目指して勉強中です。
今は目標に向かって進んでいます
もうひとつの目標が、来年の4月までに仕事を見つけ、ビッグイシューを卒業すること。自分にあった仕事が見つかるか、就職した後に信頼できる人間関係が築けるか、自立には様々な不安があります。しかし、コーチングを通して自分の想いをコーチに伝えることで、考え方が変わったといいます。「いままではすぐに落ち込んでしまっていたけど、今はプラス思考になりました。自分で考えて、いろいろな選択肢があるということに気付きました。
そして、今までは考えただけで行動に移せなかったけど、今は目標に向かって前に進んでいます。」
ホームレスの人たちの自立を助けたい

サッカーの試合中の様子
さらに美馬さんには、就職の先にもうひとつの“希望”があるといいます。それは、ホームレスの人たちの自立を助ける仕事につくこと。恥ずかしそうに、でも少し誇らしげに話してくれました。美馬さんは、先日イタリアのミラノで行われた、ホームレスサッカーワールドカップ2009の日本代表チーム“野武士ジャパン”のメンバーでもあります。
目標の4月が近づいていますが、不安はありますか?との問いには、「サッカーを通して多くのことを学ぶことができたから、大丈夫」と心強い答えが返ってきました。何事にも慎重で努力家の美馬さん。ゆっくりですが、着実に、自分の足で自立に向かって歩み始めています。
★おまけ★
美馬さんのブログ紹介!
美馬さんは、パソコン講習で学んだスキルを生かして、自分のブログを書いています。パソコン検定の受検のときの様子や、ホームレスサッカーワールドカップの報告など、美馬さんの日常が綴られています。
【第三章】 ホームレス・ワールドカップ日本代表としてミラノへ