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 プロジェクトニュース

[ 2009/12/25]

”homeless, not hopeless”
ホームレス、だけど希望はあります。
~ビッグイシュー「人生挽回」ストーリー~

山下 大輔
山下 大輔
公益・ボランティア支援グループ
公益チーム


【はじめに】
“大切な命”をテーマにしている夢の貯金箱は、 “人生をあきらめず、再び輝く命”を一人でも多くの方が実感出来る世の中のために、ホームレスの人々が再び社会に復帰できるための活動を推進するNPO法人ビッグイシュー基金に賛同し、支援を行っています。
この「“homeless, not hopeless" ホームレス、だけど希望はあります。」は、様々なビッグイシュー基金の活動の一年間の連載報告で、毎回魅力的なホームレスの方ひとりにスポットを当てています。今回は第6弾です。

アパートの鍵が換えられていた

越澤保幸さん(55歳)事務所前にて
越澤保幸さん(55歳)事務所前にて

 「たった一度だけ、公園のゴミ箱に捨ててあったカツサンドを拾って食べたことがある」
そう語るのは、20代の頃には役者を目指し、劇団に入団していたこともあったという越澤保幸さん(55歳)。7年前、入院しなければならない程悪化した糖尿病が原因で仕事が休みがちになった越澤さんは、それまでしていた仕事をリストラされました。収入がなくなり途方に暮れている越澤さんを更に追い詰めたのは、父親の死。頼る人もいなくなり、家賃が数ヶ月滞納していたある晩、帰宅すると鍵が換えられて部屋に入れない。
そのまま越澤さんは、深夜の路上に放り出されることになります。初めての路上、本当に着の身着のままの状態で、所持金もなく、これから先どころか、その晩すらどのように過ごせばよいのか分からない越澤さんは気がつけば、池袋駅の地下鉄構内にいたといいます。
「たった一人ぼっち。本当に途方に暮れていました。しかし、一人のホームレスのおじさんが話しかけてくれて。炊き出しの情報や夜の過ごし方などを親切に教えてくれたんです。おじさんは1週間、僕に付いていてくれました。そして夜の過ごし方も教えてくれた。夜は歩き回るといいんだよ、とか 自販機の下とかにコインが落ちていないか探すといい、って。その後、新宿が安全だということを聞いて、新宿に移りました」。
しかし、新宿でも毎日炊き出しが行なわれるわけではないので、丸一日何も食べれないという日々を、幾度となく経験することになります。3日間何も食べれないという日が続いたある日、越澤さんの真横のベンチで、サラリーマン風の男性が美味しそうにカツサンドを食べていました。「もう空腹を通りこして餓えの極限の状態だった。精神的にも参っていていましたね、、」越澤さんは、食べる姿を凝視せずにはいられませんでした。するとサラリーマンは、それまで食べていたカツサンドを半分以上も残し、まるで越澤さんに食べてといわんばかりに、ゴミ箱に置いていったそうです。「それは捨てるという感じじゃなくて、そっと丁寧に置かれていました。包み紙に綺麗に包まれて。あの時、何となくですが、2人の間に暗黙の了解みたいな空気が流れたような気がしたんです」。プライドとの葛藤もあったが、極限状態の越澤さんはゴミ箱の中にあるカツサンドにかぶりついた。


あのときのカツサンドの味は一生忘れらない

サラリーマンの親切心が、越澤さんに「考えるチャンスと生きる希望を与えてくれた」。といいます。「このままではいけない。世の中には温かい人が沢山いる。自分も困っている人達の視点に立って行動できる人間になりたい。皆助け合って生きているんだ。自分も動かなければ———」。


教会での奉仕活動と、ビッグイシューの仕事

 その後の越澤さんは、積極的に活動し始めます。これまでは仏教徒であったが、ホームレス支援を積極的に行なっている教会にも定期的に顔を出し、信者となり奉仕活動に従事するようになります。そしてビッグイシューの販売者登録を行ない仕事もスタートさせました。教会関係者やホームレス状態の仲間にも慕われる存在となった越澤さんは、仲間にもビッグイシューの仕事を紹介しました。「越澤さんに薦められて、、」という理由で、ビッグイシューにやってきたホームレスの方は多くいます。そして、その中には、現在アパートに入居し脱路上した人なども含まれています。

 

大学の教壇で授業を行なう

 「ビッグイシューを沢山の人に知って欲しい。そしてホームレス問題についても当事者の一人として仲間の声を伝える代弁者でありたい。そうすることで少しでも仲間の状況が好転すれば」そんな思いをもつ越澤さんは、大学などでの講師を頼まれることも数多くあります。「とにかく、私達の厳しい環境や現状を知って欲しいと思います。また、学生さんと交流することで僕らも元気をもらえるんですよね」。舞台俳優も経験している越澤さんの話術は、寝ている学生も起こしてしまうほどです。
そして、授業の最後には、毎回、生徒さんへの歌のプレゼントがあります。ある大学の授業で、越澤さんの歌を聴いた生徒さんは、こんな感想を寄せて下さいました。
「歌を歌っている姿が、生き生きしていて素敵でした。いつまでも歌を歌いながらがんばって欲しいと思いましたし、講義を通してホームレスの方への見方が変わった気がします」。

大学の教壇で熱弁する越澤さん
大学の教壇で熱弁する越澤さん
学生さんの前で歌を熱唱
学生さんの前で歌を熱唱

タップダンスが特技

ソケリッサ公演にて(一番左が越澤さん)
ソケリッサ公演にて(一番左が越澤さん)

 越澤さんは、ビッグイシュー基金が行なうダンスクラブにも中心的人物として参加しています。4年前に出来たこのクラブは、プロのコンテンポラリダンサーのアオキ裕キ氏とともに、「ソケリッサ」というダンスプロジェクトを結成し、過去3回のダンス公演も行なっています。これまで総勢20名のホームレスの方々が、このダンスプロジェクトに参加し、体を動かすことを通じて、精神的にも肉体的にも健康になり、人との交流や表現を通して自信を取り戻し、アパート入居を果たした方もいらっしゃいます。
役者時代に習っていたタップダンスなども取り入れながら、鮮やかに舞う越澤さんのダンス表現からは力強さと 人柄が滲みでています。公演に足を運んでくださったお客様の一人、精神科医の香山リカさんは、
「彼らにとっては感嘆の目で見られ、拍手まで送られるステージ経験は、間違いなく内面の自信にもつながるものであったに違いない」
と感想を寄せてくださいました。
「ダンス公演で舞台に立ったときの感触は忘れられないです。張り詰めた緊張感の中で、今の自分を存分に表現できることの気持ちよさ。またお客様が喜んでくださることが何より嬉しいです」。ソケリッサの舞台を観た観客は、不思議な感覚を味わうといいます。決して鍛え上げられた肉体ではない、むしろあばら骨が痛々しい、長年のダンボール生活で猫背になってしまった体から発せられるメッセージには、その人の人生や歩んできた道のりが垣間見えます。
「どんな時も希望をもって生きていたい。そして僕も人に希望を与えられる存在になりたい」そう話す越澤さんの来年の目標は、アパート入居です。

★おまけ★

クリスマスパーティーでもダンスを披露する越澤さん
クリスマスパーティーでもダンスを披露する越澤さん

 12月12日、ビッグイシュー基金でクリスマスパーティを行いました。ビッグイシュー基金のボランティアさんも含め、総勢60名が集まりケーキやお料理を食べ盛り上がりました。ゴスペルの歌や、ギター演奏、ものまね、クイズありの賑やかな夜。最後には、サンタからのクリスマスプレゼントも。一足早いクリスマス気分を皆で味わうことができ、幸せな一時を過ごしました。