プロジェクトニュース

[ 2009/10/20]

スーダン渡航報告レポート/御村明日香【差別に苦しむ命のために】(下)


「夢の貯金箱」では、スーダンの視覚障害学生の人たちに音声読み上げソフトを提供し、大学で学ぶ機会を提供するとともに、“ブラインドサッカー”を普及して視覚障害者の生活を変えていこうと活動している、NPO法人 スーダン障害者教育支援の会を支援しています。
筑波大学第三学群国際総合学類の御村明日香さんのスーダン訪問レポートの2回目です。




タマーム・ミアミア!100%の笑顔と元気をもらって帰ってきました・下 /御村 明日香

支援室の様子
支援室の様子

ハルツーム大学の支援室を訪問
 緑や遊具が並ぶ広場をしばらく歩くと、さわやかな黄緑色の建物が現れます。以前は雨が降るたびに雨漏りがひどかった、という障害学生支援室の建物は、今では中はきれいなピンク色に塗られ、音声読み上げソフトが導入された5台のパソコンがすっきりと用意されています。
 昨年オープンしたばかりの支援室では、もう述べ50名ほどの視覚障害者がパソコン講習会を受講しました。私たちが訪問したときには、現地パートナーである卒業生の会の会員や支援室の利用者が14、5名程度集まり、支援室の利用や大学での学習、卒業生の会の活動についてなど話してくれました。
特に印象的だったのは、一口に視覚障害者のパソコン利用、といってもアラビア語の文字を知っている人と知らない人では全く状況が異なるということです。私たちがパソコンを用いるように、視覚障害のある人も、カーソルの示す部分を音声で認識しながら、キーボードを操作します。
 そこでパソコンの講習会では、まずパソコンの機能とともに、どこにどの文字のキーがあるか覚えることから始まります。今まで口頭でしか話してこなかった人が改めて文字を覚える大変さは、想像に難くないと思います。また、研究内容によってもパソコンの利用の仕方は異なり、アラビア語の古典を専攻している学生は、墨字の資料に関しては友人に代読してもらうしかない、と言っていました。
 また支援室で講習会が行われている間は、ほかの学生がパソコンを利用できなくなってしまうことも課題のひとつです。スーダンではまだまだパソコンは高級品で、いまだほとんどの学生は手書きでレポートを提出しています。卒業生の会は、大学から支援室前のスペースを取り付け、資金が集まり次第、支援室の拡張を行う予定でいます。「今の状態は第一段階だ」と言いながら、次々と課題を見つけ、目標を立て、行動していく姿勢がとても印象的でした。

 通学の苦労も話してくれました。スーダンの歩道は砂が隆起していたり、不規則な段差が並んでいたり、大きな溝があったり、と普通に歩いていても危険がたくさんあります。私も足を掬われることや、散乱するゴミに躓くことがありました。学校の敷地内を卒業生の会のメンバーがぞろぞろ歩きながら、皆で壁にぶつかりそうになる場面もありました。ミクロバスに乗ろうとしても、バスが止まってくれなかったり、下りる場所がわからなかったり。手伝って欲しい、と頼むと「危ないんだから家にいればいいのに」、「手伝ってくれる人は家から連れてこい」と心無い言葉をかけられることも少なくないそうです。一人ひとりの悩みは個人的であっても、それが社会によって作り出されたものであれば、同じ困難を感じる人は他にもいる。なかなか社会に理解されない障害者の状況ですが、問題意識を共有できる場があることがとても心強く思いました。


スーダン渡航宣言と私がスーダン障害者教育支援に関る理由

支援室のメンバーと御村さん
支援室のメンバーと御村さん

 今回、私は渡航にあたって3つの宣言をしました。1つは、プロジェクト報告書執筆や報告会企画を通して、自分たち団体の活動をしっかり社会に伝えること。2つ目は、なぜスーダンの障害者の高等教育をテーマとするのか考えること。そして最後は、暑さやにおい、雰囲気、人の表情などできるだけリアルなスーダンを日本に伝えること、そしてその中で視覚障害者が生活するとはどういうことか考えること。答えは出ないかもしれないけれど、しっかり考えて、考えたことを人と共有したい、自分の口で伝えたいと思いました。
1つ目、3つ目に対しては、現在中山事務局員と一緒に、本レポートならびに報告書の執筆、東京とつくばにおける報告会企画に尽力しております。対外的に表現したものでしか私たちが訪問した意義は評価できないと思っているので、極力自分たちの見たもの、聞いた内容は文章として記録するよう心がけています。
2つ目に関しては、私の出会った元気なスーダンのイメージを伝えることが、ひとつの答えです。確かにスーダンには紛争や食糧難など深刻な問題も山積みで、どの優先順位が高いかと聞かれても永遠に答えはありません。一方、私が出会った卒業生の会や視覚障害を持つ学生たち、ブラインドサッカーチーム「ヌール・アル・ハヤート」は、置かれている状況は非常に厳しくはありますが、日本の学生も顔負けの熱意を持っています。私は、スーダンの障害者が弱くて可哀想だから支援するのではなく、人一倍頑張っている友人を応援すると意識で、今後CAPEDSの活動に関りたいと思うのです。「勉強やサッカーを頑張るぞ!」「自分たちで何とか大学を変えてやろう!」という彼らの強烈なメッセージを社会に広く伝えていくことが、今回の渡航を通して見つけた使命です。もし今一度「スーダンの障害者の高等教育支援が必要なの?」と聞かれたら、私は「スーダンで頑張っている友人と、一緒に社会に働きかけたい」と答えると思います。


渡航を振り返って

大学の助教授(視覚障害)訪問
大学の助教授(視覚障害)訪問

いざ訪問してみると、スーダンはとても暑い国でした。ペットボトルの水がすぐに熱湯になり、冷たく甘酸っぱいジュースは一瞬で空っぽ。昼間にサッカー練習すれば熱中病になるでしょうし、エアコンの効いた部屋でなければ、勉強する気になんてなれません。事務局員も、夕方になるとうとうと・・・暑さの中にいるだけで、ひどく体力を消耗してしまいました。スーダンでの生活は、けして楽なものではありません。
滞在中に、国立盲学校も訪問しました。見せていただいた点字製版機は老朽化しており、子どもを運ぶスクールバスも買い換えたいとのことでした。機材がない、教科書がない、お金がない。ないない尽くしでしたが、子どもたちの好奇心は百万倍、スーダンの暑さも吹っ飛ばすほどでした。一言挨拶した私に、子どもたちが握手のために差し出した腕腕腕・・・が忘れられません。厳しい状況にありながらも、非常に頼もしい光景でした。近い将来、彼らが支援室の仲間たちと一緒に活躍してくれることを、心底期待しています。

短い滞在ではありましたが、卒業生の会を中心とするハルツーム大学障害支援室のメンバーのみならず、全盲である心理学助教授サーディック先生、ブラインドサッカーの練習、国内唯一のエルヌール盲学校、中核支援校の先生方とさまざまな施設や教育分野で活躍されている方を訪問させていただきました。また、アブディン代表理事のお宅にホームステイし、ご家族に豊かなスーダン料理を振舞ってもらったり、伝統衣装を頂いたり、市内を案内してもらったり、と一番ローカルなスーダンを楽しませていただきました。代表理事をはじめ、現地で尽力してくださった方々、温かく迎えてくださった皆様、日本から渡航を支えてくださったスタッフの面々、渡航を提案くださった日本財団の皆様、寄付金を提供してくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。これから、一人でも多くの方が私たちの報告書に目を通し、スーダンを身近に感じるとともに、そこに生活する生身の人々に魅力を感じてくれれば幸いです。
今後、私たちの団体に関ってくださる全ての方に、継続的かつ発展的な報告ができることを期待して。
2009年10月16日