カンボジアにおける教育支援

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(EiF:English is Fun)の授業で笑顔を見せる生徒たち

日本財団は、カンボジアの子どもたちが学校教育を通じて、将来の選択肢を広げ、希望を持って生活を送ることができるよう、都市部と農村部の教育格差是正を目指し、教員養成、および英語教育への支援を行っています。

日本財団が支援をする背景

カンボジアでは1970年~1990年代の内戦と混乱により、教育施設は破壊され、学校の教員を含む多くの知識人が粛清されました。長い内戦が終わると、海外から支援の手が差し伸べられ、教育分野では学校の再建設が進み、教育環境はハード面において徐々に改善されました。日本財団も2000年までの間に、支援の届きにくい国境地域に100校の学校建設支援を行いました。

一方で、教育環境、特に子どもたちを育てる教員自身の教育水準や指導技術が農村部中心で、未だに十分とは言えない状態です。その理由として、教員を目指す地方出身の学生が経済的な理由でアルバイトに時間を費やさざるをえず、学業(教員課程)に専念できないこと、また、教員になった後も教材の不足や生活維持のため、アルバイトを続けざるを得ないという事情があります。

さらに、教材不足・研修不足の問題は深刻です。特にカンボジアの英語教育は、義務教育に含められていますが、英語を教えるための研修を受けた教師が不足していることから、英語の授業が実施されていない学校も多数あります。さらに、就学レベルに対応した教材が無く、義務教科にも関わらず、子どもたちは十分な英語の授業を受けることができませんでした。

これらの事情を背景に、日本財団は、カンボジアにおいて、教員養成と英語教育、学校建設の支援を行っています。

支援プロジェクト

1.教員養成(2004年~)

カンボジアの貧困農村地域出身の教員養成学校生を中心に、生活補助の奨学金を支給し、アルバイトではなく、教職課程に集中することによって教員の能力向上を目指しています。2004年より、累計2,300人以上のプノンペン教員養成学校の教員養成課程の学生に対し、奨学金を支給しました。

今後の支援計画(2018年1月~12月)

  1. 奨学金の提供
    支給対象者:プノンペン初等・中等教員養成学校で学ぶ6地域の学生約350名
    支給額:1人$15/月
  2. 国内研修の実施(アンコールワット遺跡群見学スタディツアー)
  3. 海外研修の実施
    訪問先・期間:タイなどの東南アジアの学校現場など、1週間
    参加者:成績優秀生12名、教官2名他
    選考方法:教員養成学校の成績と出席率を参考に決定
  4. 卒業生(現職教員)による学校開発と研究発表会の実施
    現在教員として活躍する卒業生による学校開発活動および、研究発表会を年に数回実施する。

2.英語教育の支援(2010年~)

カンボジアでは、1990年代に海外の援助を受け中学英語教科書を作成しました。しかし、読み書き主体に作られた教科書は、内容も難解で、生徒のみならず教師にも理解するのが難しく、教育現場の実態に即していないものでした。さらに、他の教科に比べ、地方で英語を教えられる教師が不足していたこと、教科書が行き渡っていないことにより、都市部と地方の教育格差が拡大していきました。また、生徒の英語能力は就職に少なからぬ影響を及ぼしていることから、都市部と地方の生徒の進路の選択肢の格差にも繋がることが懸念されました。

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国内研修先でカンボジアの歴史について学ぶ中学校教員養成学生

このような状況を受け、日本財団と現地の事業パートナーであるNGO Education Support Center “KIZUNA”は、英国BBCの協力を得て、2010年より会話能力の向上を目的としたラジオ英語プログラム(EiF:English is Fun)作成に取りかかりました。15のモデル中学校を対象にパイロット事業を開始し、2014年には、対象校が40校までに拡大しています。その結果、EiF実施校の生徒の英語の成績が、都市部の学校に通う生徒の成績を上回るという、驚くべき結果を残しました。リスニングとスピーキングに特化したEiFの効果に注目した青年教育スポーツ省から、さらに同様のリーディングとライティングを効果的に教えられる英語教科書作成の要請を受け、2015年、新国定中学英語教科書作成支援を開始しました。現在、カンボジア全国の公立中学校で、日本財団によって作成されたEiFを含む英語の教科書が公式に使用されています。

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EiFを活用してグループワークを行う中学生

教員養成プログラムと共に、英語教育における“質の向上”を目的として、英語教材の制作と普及を行っています。

今後の支援計画(2018年1月~12月)

  1. 中学校英語研修の実施
    地方の英語教員約500名に対し、3~5日間の新英語カリキュラム指導方法の研修を実施する。
  2. 高校英語シラバスの作成
    EiFの教授法を取り入れた高校生の英語シラバスを作成する。

3.学校建設プロジェクト(2000年終了)

American Assistance for Cambodia(現:World Assistance for Cambodia)をパートナーとして、農村地帯で最も貧しく、クメール・ルージュ(独裁体制を支えた政治勢力)支配地域といった、支援が行き届いていない地域に100校の校舎を建設しました。

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新しく建設された学校の前に集まる子どもたち