みんなで囲む、あたたかい食事

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居場所のみんなで食べる手作りの食事

第三の居場所事業がスタートしてもうすぐ2年が経ちます。
今回よりシリーズで「家でも学校でもない第三の居場所に通う子どもたち」にフォーカスを当ててみたいと思います。第三の居場所を通して子どもたちにどのような変化があったのか、ご紹介いたします。

Aくんの場合

小学2年生のAくんは両親と、それぞれ父親が異なる兄弟と暮らしています。父親は持病があり働くことが出来ず、母親も働くことが出来ないため、一家は生活保護を受給しています。母親は育児だけでなく、家事も放棄している“ネグレクト”の状態で、Aくんは毎日同じ服を着ていることが多く、小学校へも不登校気味でした。

学校との連携により、Aくんは第三の居場所に来ることになりましたが、Aくんの驚くべき生活環境を知るきっかけは食事の時間にありました。第三の居場所では毎日栄養バランスを考慮したあたたかい食事を無料で提供しています。ある日の食事の時間、子どもたちの大好きなカレーライスを提供した際に、他の子どもたちは美味しそうに頬張るかたわらで、Aくんはひと口スプーンを運んだ途端に吐き出してしまいました。スタッフが話を聞いてみると「美味しくない」の一言。他の子どもたちはおかわりするほど人気のカレーライスをなぜ口にしないのかスタッフは不思議に思いました。また、それ以外の食事でも、特に手の込んだ料理は一切手をつけず、白米と野菜を取り除いたスープしか食べない状況が続きました。

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楽しく食卓を囲む子どもたちとスタッフ(Aくんとは別)

ある時、スタッフがAくんに家での食事について聞いてみることにしました。するとAくんは菓子パンやバター醤油ご飯など、偏ったものを自分の好きな時に、一人で食べていることが分かりました。小さいときから偏ったものしか食べてこなかったことから、味覚が育っておらず、カレーの味が分からずに「美味しくない」と感じたのでしょう。
そのほかにも、第三の居場所での調理の際などで目にする食材についても知らないものが多く、海苔を見て“黒い紙”と言ったり、ほうれん草やレタスを見て“緑の草”と言うなど、これまで料理をする光景や、あたたかい食事を口にしてこなかったこと、誰かと一緒に食事をする経験の欠如が、Aくんをそうしてしまったのでしょう。
また、Aくんのお母さんに話を伺ったところ、Aくんのお母さん自身も貧困家庭で育ち、あたたかい食事を食べて来なかったそうです。

初めは驚くばかりのスタッフでしたが、Aくんに様々な料理の美味しさ、みんなで食べることの楽しさを知ってもらいたく、食材や料理についてひとつひとつ丁寧に説明をしました。Aくんも少しずつではありますが、口にすることが増え、今ではみんなでテーブルを囲む食事の時間を楽しみにしています。

誰もが当たり前と思うことが、ここでは当たり前ではない現実があります。そして、それは決して親の自己責任だけで済まされる問題ではありません。一番弱い立場にある子どもたちが被害者となります。

第三の居場所では様々な環境に置かれる子ども、ひとりひとりに丁寧に向き合うことで信頼関係を築き、今、目の前にある子どもの貧困問題から社会全体の問題解決のために取り組んで参ります。

どうか皆さまにもこの現状を知っていただき、子どもたちへ支援の手を差し伸べていただけましたら幸いです。継続的なご支援をお願い申し上げます。

日本財団 ドネーション事業部 子どもの貧困対策担当 関 雄

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日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、
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一元的に取り組んでいます。