平成30年7月豪雨災害の現場から
みんなのいのち

簡易トイレの設置を通じた被災地支援


西日本を中心に甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨災害。被災した愛媛県宇和島市では、1週間経っても水道が復旧せず断水が続いています。飲料水だけでなく、生活のあらゆる場面で必要な水。災害時、特に大きな問題になるのがトイレです。

2018.07.18

生活の糧である「水」を奪った豪雨災害

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支援本部の周囲では土砂崩れによって押しつぶされた家屋が何軒も見られた

「浄水場が壊れてしまったので、この地区では半分近くの家がまだ断水しています」
愛媛県南部に位置する、宇和島市玉津地区の支援本部を総括している鹿島さんは、災害発生から1週間が過ぎても水道が復旧していない状況を説明してくれました。
玉津地区は浄水場の裏山が豪雨により崩壊。浄水施設が完全に使えなくなってしまいました。浄水場の被害が壊滅的であることから、いつ復旧するか目処が立っておらず、被災者は2カ所ある給水所で水を受け取って生活しています。

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水なしでも使える簡易トイレを開発した、日本セイフティー株式会社の社員のみなさんが設置をサポート

飲料用だけでなく、炊事、洗濯、お風呂など、生活のあらゆる場面で必要になる水。加えて、災害時に大きな問題になるのがトイレです。
水不足によりトイレが流れなくなると、汚れや臭いがひどくなり、トイレ環境が悪化してしまいます。その結果、感染症の危険性が高まるだけでなく、不衛生なトイレを使いたくないという理由で、飲食を控える被災者の方も増え、健康の悪化につながる恐れがあります。
「トイレを流すためにプールの水を汲んだり、断水していない家のトイレを譲り合ったりして使う住民の方もいるようです」
鹿島さんは断水がもたらす被災者の苦労を教えてくれました。
こうした状況を受け、日本財団では7月15日、玉津地区に置かれた支援本部であり避難所としても機能している玉津公民館に、水なしで使える簡易トイレを設置しました。

高齢者にもやさしい節水型の簡易トイレ

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発災直後の様子を振り返る清家さん

「豪雨災害の時はみんなで二階に避難しました。足腰が弱い人もいるので移動が大変でした。電気も水道も止まってしまい、非常用電源も数時間で切れてしまいました」
宇和島市吉田町にあるグループホーム「よしの里」で、管理者として働く清家さんは、発災直後の様子を振り返ってくれました。
グループホーム「よしの里」には約10名の要介護者がいますが、いまだに水を使用できず、自衛隊からの給水支援で生活をしているのが現状です。そこで日本財団では、この介護施設にも簡易トイレを設置しました。

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グループホーム「よしの里」では入居者の部屋すべてに簡易トイレを設置

「今回ご支援いただいた簡易トイレは一般的な簡易トイレと違い、排泄物の入った容器を洗ったり、便座周りを何度も手洗いしたりする必要がないので、かなりの節水につながっています」
清家さんは簡易トイレの特長を説明してくれました。
使用できる水に限りがあるため、グループホーム「よしの里」では徹底した節水を余儀なくされています。使うのは必要最低限の水だけです。そうした中、日本財団が設置した簡易トイレは、水の使用量が少ないので施設側にも重宝されています。

「椅子の高さが調節可能で、立ち上がったり座ったりが楽にできるのも、高齢者の方々にはありがたいですね」
清家さんは簡易トイレの使い勝手の良さについても教えてくれました。
従来型の仮設トイレは和式の場合が多く、便器までに段差がある作りのため、介護施設や避難所で高齢者に使用してもらうには負担を要します。
しかし、高齢者でも使用しやすい設計になっていることで、災害時の要援護者でも安心して利用できます。

簡易トイレで被災地の問題を未然に防ぐ

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開発した簡易トイレの仕様について話す牧野さん(写真右)
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簡易トイレの中にある容器(水色部分)には、感染症を防ぐために特殊フィルムが使用されている

「便器の中にある受け入れ容器には特殊なフィルムを使っているので、感染症を未然に防ぐことができます」
簡易トイレの開発を担当した、日本セイフティー株式会社の牧野さんは、トイレの仕様について説明してくれました。災害時には衛生面の問題が発生しがちですが、今回のトイレはそうした面も配慮されています。

加えて、この簡易トイレは避難所における女性への配慮も考慮されています。
避難所では屋外に仮設トイレを設置する場合も多いのですが、夜間は安全面の理由によりトイレに行きたくてもいけない女性が少なくありません。一方、この簡易トイレであれば室内に設置できるので、夜間でも女性に安心して利用してもらえるのです。
防犯上の観点からも、日本財団が設置した簡易トイレは、トラブルを未然に防ぐことにつながっています。

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被災地に届いた簡易トイレは瞬く間に設置されていった

被災地のトイレ問題をいち早く解決することは、避難生活を送る被災者の快適性を高めるだけでなく、感染症などの二次被害を抑える意味でも重要になっています。
今回の西日本豪雨に対する支援の一つとして、日本財団では被災各地に衛生的な簡易トイレを最大1,000台設置する計画を立てています。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 写真:和田 剛